作品タイトル不明
69 神獣認定
~勇者田中貴子視点~
今日は念願の聖女様と面会する。同時にスレイとキラタンの神獣認定も行われる。
ちょっと緊張してきた。
スレイとキラタンはというと、呑気なものだった。
聖女様とは神殿で面会をするのだけど、ずっと待たされているスレイとキラタンが文句を言い始めた。
「いつまで待たせるのだ。我は忙しいのだ」
「特に何もないのにねえ・・・でも、ここにずっといるのは飽きたわ」
「そんなことを言わないでよ。もうちょっとだから我慢して。終わったらフルーツをあげるからね」
「我は別に神獣になどにならなくてもいいのだ」
「私も」
本当に我儘な奴らだ。
そんな話をしている時に聖女様がやってきた。もしかしたら、今の会話を聞かれたかもしれないと不安になる。
案内役のブルーさんが私を聖女様に紹介してくれる。聖女様は緑の髪をしている以外は、日本人のような顔立ちをされていた。年齢は私と同じくらいで30代に見える。
「聖女様、こちらがスレイプニルのスレイとキラータランチュラのキラタンです。そしてお世話をしてくれているのが、巫女のタンタカさんです」
「タンタカです、初めまして。巫女っていう設定ですが、下級のテイマーみたいなものです」
「私はミドリ・スズキです。一応、聖女ですが、そんなに畏まらなくて結構ですよ。植物スキルを持ってはいますが、すべてネフィス様にいただいたものですしね」
聖女様は謙虚な方だった。それに名前がミドリ・スズキって・・・多分、日本からの転生者だろう。
そんなことを思っていたら、スレイたちが騒ぎ始めた。
「早くしろ。我は忙しいのだ」
「別に神獣になんてならなくてもいいしね。もう帰っていい?」
「す、すみません!!スレイ、キラタン!!ちゃんとしてって言ったじゃない」
聖女様も困った表情を浮かべていたし、ブルーさんも顔が引きつっている。
ブルーさんも、スレイとキラタンが我儘だということは知っている。なので、とにかく黙って大人しくさせる作戦に出たのだが、それも失敗してしまった。
そんな時、ウリ坊たちが近寄ってきた。そのリーダー格のウリ坊の思いが伝わってきた。
(私に任せて!!)
そのウリ坊が「キュー!!」と鳴くと、近くにいた子犬サイズのヘビが急に巨大化し、大きな鳥が炎を纏った。そしてウリ坊の親たちであろう大きなグレートボアたちが集まってきた。
「ちょっと後輩に立場を分からせないとね」
「おい、お前たち。調子に乗っておると容赦はせんぞ」
多勢に無勢とはこのことだろう。
いつも横柄なスレイとキラタンがしゅんとして、涙目になっている。そこにウリ坊たちのリーダーがやってきた。
「キュー!!」
「すみませんでした。以後、気をつけます、ウリ先輩」
「ごめんなさい。反省します、ウリ先輩」
そしてウリ坊たちを残し、スレイとキラタンは神獣とウリ坊たちの親に連れていかれた。
私が心配していると、聖女様が声を掛けてくれた。
「神獣には神獣のルールがあるみたいですから、心配しないでくださいね。それで彼らが帰ってきたら、これをお渡しください。ウリ、ありがとうね」
「ありがとうございました。最近、スレイとキラタンは言うことを聞いてくれなくて、困っていたんです。ウリちゃんって言うのかしら、貴方もありがとうね」
(まあ、大したことはないわよ)
「お礼にウリちゃんのお世話をさせていただいても、よろしいでしょうか?」
聖女様に許可を取り、ウリちゃんのトリミングを行った。これでも元ペットショップの店員だからね。
それにウリちゃんは可愛い。どうしても触れ合いたくなってしまった。トリミングが終ると、聖女様もウリちゃんも喜んでくれた。
「よかったね、ウリ。更に可愛いくなったわね」
「キュー」
「タンタカさん、ありがとうございます」
「これでも元ペットショップ・・・」
言い掛けてやめた。
聖女様は日本からの転生者で、いい人そうだけど、ここで私が勇者だとカミングアウトすることはリスクが高すぎる。私は適当に話題を変えた。
「ところで、聖女様は実際にネフィス様やララーナ様にお会いしたことがあるとお聞きしたのですが・・・」
「気になりますよね?まあ、信じられない話ですが・・・」
聞いたところ、間違いなく聖女様は元日本人だった。
前世はブラック企業に勤務していて、過労死されたらしい。私もブラックなペットショップに勤務していたので、自然と話が合った。
「タンタカさんとは、お友達になれそうな気がします。これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ」
ブルーさんも安堵の表情を浮かべる。
「聖女様、それで神獣認定のほうは?」
「もちろん認定しますよ。そうしないとケンタウロスやアラクネたちに怒られそうですしね」
無事にスレイとキラタンは神獣に認定されたようだ。
返ってきたスレイとキラタンは、かなり不貞腐れていたけど、聖女様に貰った人参とサマスの塩漬けを渡すとすぐに機嫌が戻った。
「こんな旨い人参を献上するとは、聖女とやらは、案外いい奴かもしれんな」
「この塩漬けの魚も美味しいわ。まあ、神獣をやってあげてもいいわよ」
案外、この神獣たちはチョロいのかもしれない。
★★★
次の日、勇者対策訓練を聖女様たちに見てもらい、その後は宴会となった。
宴会の席でも聖女様と話す機会があり、そこでも仲良くなった。でも・・・
「私は勇者が許せません。魔族たちを傷付け、神獣たちに酷いことをした勇者を・・・私だって戦いたくはありません。でもそれが使命ならば仕方ありません。タンタカさんも十分に気をつけてくださいね」
「も、もちろんです・・・」
この時私は、絶対に自分が勇者だと名乗り出ないことを固く誓った。