軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17 プロローグ

春が来た。

農作業を始める者も増え、他の集落から神殿にお参り来る者も増えてきた。

私はというと、ゴブリナとグリューンと一緒に集落内を周っている。もちろん、赤ドラと白ドラ、ウリも一緒だ。

例年、病気になったり、不幸にして亡くなったりする者が多くいることから、被害状況を把握するために行っているらしい。

幸い、今年は風邪に罹った者が数人いたくらいで、死者は出なかった。グリューンもゴブリナも明るい。

「次はダークの温室に向かおう」

「はい」

ダークエルフのダークが管理する温室に向かう。

私が思いつきで、前世の知識を話したことがきっかけで、温室を作ってしまった。前世は灯油やガスで温めていたけど、こちらの世界では魔石で行っているらしい。

温室に着くと、笑顔でダークエルフやハーフエルフたちが出迎えてくれた。

しばらくして、作業をしていたダークが、フリンと一緒に温室から出てきた。

「それじゃあ、できたら持って来るッス」

「そのハーブは自信作だから、大切に使ってくれ」

「分かっているッス。楽しみに待っているッス」

私たちに気づいたフリンが声を掛けてくる。

「聖女様に言われて、香り付けにハーブを使うことにしたッス。ここはいいハーブがいっぱいあるから、定期的に譲ってもらっているッス」

「それは楽しみね」

「この温室のお蔭で、わざわざ森に行かなくてもいいから、本当に助かっているッス」

去り際にフリンが言う。

「今日、新酒の試飲会をするんで、是非来てくださいッス」

「仕事が終わってから向かう。そうしないと、仕事にならないからな」

「じゃあ、待っているッス」

フリンを見送った後、ダークが温室内を案内してくれた。

いつもクールなダークだが、今日は饒舌だ。温室栽培が上手くいっていることが、余程嬉しいのだろう。

「このキノコは旨いぞ。バターで炒めたら絶品だ。それにこちらの薬草もいいぞ。エナジーナッツと併せれば、いいポーションが作れるぞ。それから・・・」

ダークの案内は続いた。すべての薬草やキノコを紹介する気らしい。

「こっちのキノコと先程見せた毒草を合わせれば凄い痺れ薬が作れるんだ。グレートボアでも、痺れて動けなくなるぞ」

「キュッ!!、キュー・・・」

驚いたウリが私に飛び込んでくる。ウリは人語を理解できるので、怯えきっている。

流石にグリューンが注意する。

「ダーク、ウリが怖がっているぞ」

「すまん・・・」

「それにしても、ダークは楽しそうだな。この集落に来た時とは別人みたいだ」

「そうか?グリューンがそう言うなら、そうかもしれんな。それもこれも、聖女殿や集落の皆のお蔭だ。感謝している。それとウリよ、悪かったな。スイカがあるから、持って行け。甘くて、旨いぞ」

「キュー!!」

嬉しくなったウリは、ダークに鼻をすりつけている。

温室の視察は、予定よりも大幅に時間がオーバーして終了した。

帰り際、ゴブリナが言う。

「フリンもダークさんも楽しそうで、何よりです」

「そうだな。集落に来た当初は、エルフとドワーフの仲が悪かったしな」

「そうですね。ネフィス様と聖女様に感謝ですね」

私だって同じ気持ちだ。

「私も感謝しているよ。この集落に来て本当によかったと思っているよ。人間の私を受け入れてくれたしね」

「そう言ってもらえると、こちらも嬉しい。思いのほか、時間が掛かってしまったから、今日はこの辺にしておこう。ではフリンの蒸留所に向かうか?」

「はい!!」

その後、フリンの蒸留所に向かった私たちだが、当然、二日酔いになったとことは、言うまでもない。

★★★

集落内の視察を終えた私たちは、周辺の他の集落に視察に向かうことになる。

例年、お互いの無事を確認し合うことが目的だが、毎年、辛い気持ちになるらしい。親しい者の訃報を伝えられたり、酷い場合は集落が全滅していたり・・・

でも今年はそうはならないだろう。

困っている集落は積極的に支援したから、そんなことはないと思う。視察に同行するメンバーの顔も明るい。視察にはいつものメンバーに加えて、ダーク、フリン、オークの御一家も同行する。こちらも同じ目的だ。

オークの奥さんのオークナさんが言う。

「こんなに安心して、各集落を周れるのは初めてだよ。去年はお土産も用意できなかったしね」

これにフリンが続く。

「今年は火酒が造れたので、みんな大喜びするッス」

ダークも。

「我はキノコと薬草を用意したぞ。何れも自信作だ。それにスイカもな」

「キュー!!」

スイカに反応し、ウリが喜びの声を上げる。ウリはスイカが、大のお気に入りだからね。

最初に訪問したのはリザードマンとフロッグ族の集落だ。

この集落も活気に溢れていた。ソマリの商会の系列店も営業していた。かなり忙しそうだ。支店長の猫人族の男が声を張り上げている。

「頑張るニャ!!書き入れ時ニャ!!積み込みを急ぐニャ!!」

すぐに長であるザードが出迎えに来る。

「グリューン、息災で何よりだ」

「そっちもな。困ったことはないか?」

「そうだな・・・これを言っては罰が当たるかもしれんが、人手不足でな。漁に米作り、最近は魔物被害も多いからな」

「そうか。だったら移住者をそちらに融通しよう」

「助かる」

実は、我が集落は爆発的に人口が増えている。

周辺の集落からだけでなく、遠方のゴブリンたちが多く移住してきたからだ。彼らにとっても働ける場所があるのは、いい事だろうしね。

その後、細かい話をした後は宴が開かれた。かなり豪華なご馳走が用意されていた。

「サマスだけじゃなく、他の魚も大量だ。こっちのアユメも旨いぞ」

鮎に似た味の魚で、これも美味しい。

「聖女殿も、しっかり食べてくれ」

「は、はい・・・」

今日は、いっぱい歩いたから多少食べてもいいよね?

私は自分に言い訳をして、魚にかぶりつくのであった。