軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「なんですって!」

「なにを、ばかな」

「なにゆえ、そのような冒瀆的なことを!」

「冒険者レカン、あなたは何の権利があって、神の恵みにして神聖なる〈回復〉のわざを禁じたのですか」

「なぜなら、エダの使う〈回復〉の魔法は、オレが教えたものであり、まだまだ未熟であるからだ」

「えっ」

「な」

場が一気に静かになった。

「冒険者レカン。あなたは、神のみわざである〈回復〉を、冒険者エダに教えたのがあなたである、とそう言ったのですか」

「そうだ」

カシス神官は憎々しげな顔をしてレカンをにらみつけ、パジール神官はあいかわらず目を閉じ無言だ。他の三人は、ざわざわと協議を始めた。

カシス神官の顔の皺は段々深くなり、ついに爆発した。

「このような茶番は、もうたくさんだ! エダという小娘は、かたじけなくもケレス大神の祝福によって〈回復〉のわざを、その身に宿したという光栄極まる可能性を指摘されておるのだ。今すぐ、そのわざを証明させよ! 話はそれだけのことなのだ!」

レカンが静かな声で応じた。

「カシス神官」

「なんだ!」

「エダが〈回復〉を使えることは証明してやってもいい。だが、その〈回復〉がケレス神の祝福だと、お前は証明できるのか?」

「な、なにい!」

「エダ」

「はい」

「お前はケレス神殿に参拝したことがあるか?」

「ないよ」

「ケレス神を拝んだことがあるか?」

「ないよ」

「お前は〈回復〉を身につけたとき、ケレス神の祝福を感じたか?」

「いいや。べつに」

「お前は〈回復〉を発動するとき、ケレス神の名を呼ぶか?」

「呼ばないよ」

これはここに来る道中で確認していたことを繰り返したにすぎない。

「聞いたか、カシス神官。エダが〈回復〉を身につけたのも、使うのも、ケレス神とは無関係だ」

「ふ、ふふ、ふふふふふっ。何を言うかと思えば。神の恩寵は広大なのだ。お前たち下賤の者が気づこうと気づくまいと、ケレス大神の大みかげは、あまねく万物をうるおし給うのだ。エダ本人が知らずとも、〈回復〉のわざが舞い降りているならば、それはケレス大神のおぼしめすところであるのだ」

「何を言っているのかよくわからんから、端的に訊く。この世のすべての〈回復〉は、ケレス大神の祝福によるものだと、お前は言っているのか」

「なっ」

「あらゆる術者が使う〈回復〉は、ケレス神が与える祝福であり、他の神々の祝福による〈回復〉などはこの地上に存在しないというのが、ヴォーカの町のケレス神殿の見解なのか」

「ば、ばかなっ。そのようなことは言っておらん!」

「神々の祝福と関係なく魔法使いが習得する〈回復〉は、この世に存在しないと、カシス神官は言うのだな」

「そのことについては話したくない」

「では、ケレス神の祝福以外による〈回復〉が存在することを認めるのだな」

ぎりぎりと、歯をかみ合わせる音が聞こえる。

「認める」

「では、エダが〈回復〉を使えるかどうかという問題に移ろう。これは結局、実際に術を行使してみるしかない」

「おお、それだ」

「とにかく、みてみなければ」

「本当にあの男が言ったような重傷が一瞬で治るとは信じられん」

「じゃが、服にべたべたついておった血と傷痕がまるでそぐわなんだのだ」

「あれは詐欺くさいと、わしは思うたがのう」

「だいたい準備詠唱がなかったなどと。それでは深手が癒えるわけがない」

「静まれ!」

急ににぎやかになった三人の神官を、カシス神官が制した。

「冒険者エダ。今から〈回復〉を実演してみせるのだな?」

「レカンが答えます」

「実演するとも、ただしオレがな」

「なにっ。ふざけるな!」

「カシス神官。オレの話を聞いていなかったのか?」

「な、なに?」

「エダの〈回復〉は、オレが教えた。そしてまだ未熟だ。だから他人の前で使うことは禁じている。禁じているものをこの場で実演させられるわけがない」

「なにっ。なんだと!」

ここではじめてパジール神官が質問を発した。

「冒険者レカン。教えてくれ。どうして〈回復〉で人の傷を癒すという善なるわざを、未熟だからという理由で禁じたのだ」

「それは怪我人のためであり、エダのためだ。わざはじゅうぶんに身についていないし、心も育っていない。だから血をみれば動転し、術が失敗するかもしれない。そうなれば怪我人は気落ちするだろうし、治療時間のむだは怪我を悪化させる。そしてエダは臆病になり、〈回復〉の習得に支障が出る。だから禁じているのだ」

「ふむ」

納得したのかしていないのかわからない反応を示して、パジール神官は再び目を閉じた。

「屁理屈を言うな! とにかくエダに〈回復〉を行使させてみればいいのだ!」

「失敗したら、どうするのだ、カシス神官!」

「なにいっ」

「こんな場でやれといわれても、緊張のあまり失敗するかもしれない。そして二度と発動できなくなるかもしれない。〈回復〉の使い手をこの世から一人消したいのか、カシス神官」

「なっ、なっ」

「逆に聞こう。もし、わざと失敗させたら、どうなるのだ?」

これにはカシス神官のみならず、他の神官も言葉を失った。

しばらくして発せられたカシス神官の声は、異様に低かった。

「それはどういう意味だ、レカン」

「各神殿が、勢力競争のため、一人でも多くの中級以上の〈回復〉持ちを取り込みたがっているのは、周知の事実だ。オレが弟子を束縛されるのをきらって、失敗しろ、と命じればエダは失敗する。そうしたら結局、神の祝福とやらはなかったことになる」

レカンのこの言葉は、神官たちを怒らせた。誰もが親のかたきをみるような目でレカンをみている。

「レカン、きさまどこまで大神を愚弄するつもりだ」

「逆だ、カシス神官。ケレス大神に敬意をはらえばこそ、ここに来たのだ。ケレス大神に不敬をしたくないからこそ、未熟な弟子ではなく、師のオレが〈回復〉を実演してみせると言っているのだ」

カシス神官は、きつい目でレカンをにらんでいる。

「カシス神官」

「なんだ」

若い神官が話しかけたが、カシス神官はレカンのほうをにらんだまま、不機嫌そのものの声で答えた。

「まずは冒険者レカンのわざをみてみましょう。そのあとのことは、それからでよいではありませんか」

カシス神官は黙り込んだ。ずいぶん長い時間のあと、低くざらついた声を絞り出した。

「やってみろ」

(やっとここまでこぎつけた)