軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10_11_12

10

「というわけだ」

「なるほどねえ。言いわけのしようがない何かねえ」

「おい、〈回復〉教えろよ。〈回復〉」

「ところで、こんなものがある」

レカンは〈収納〉から、奇妙な形の魔道具を取り出した。炎の魔法を撃ち出す武器だ。

「どこで手に入れたんだい」

「話、まだ終わんねえのかよ。早く練習しようぜ」

「最初にチェイニーの護衛をしたとき、襲撃してきたやつから奪った」

「なるほど。こいつは使えるねえ」

「〈回復〉かあ。まさか使えるようになる日が来るとは、夢にも思わなかったぜ」

「ミドスコは、これが壊れたと言ってるのか」

「そうさ。不良品だから試験したら粉々になったと言い張ってる。そのくせ、破片を持って来いと言ってやったら、そんな物は捨ててしまったとくるからね」

「冒険者で〈回復〉が使えるなんてったら、そりゃもう引っ張りだこだろうなあ」

「これがその品だと証明できるのか?」

「一個一個ちがう番号が刻印してあるのさ。ほら、ここさ。あたしが領主に渡したうちの一つにまちがいないよ。これがミドスコの屋敷で発見されたら、どうなるかねえ」

「か、い、ふ、く。か、い、ふ、く」

「領主が大枚はたいて買ったこの上なく強力な武器を、無理言って預かったのに壊した、というだけでも重罪だろうな」

「そうさね。そのうえ、壊したというのが嘘で、ほんとは隠し持っていたとなると」

「そういえば、あたい魔法つかうとき杖使ってないけど、いいのかなあ」

「謀反の罪を問われるな」

「エダちゃん。杖は便利なものさ。魔法の構築もらくになるし、大きな力を引き出してくれる。でも杖を常用してると魔法の技術は成長しにくいし、魔力も増えにくい。成長してる最中の魔法使いはね、杖なしで魔法が使えるなら、そのほうがいいのさ。いずれいい杖をみつくろってあげるよ」

「ありがとうっす」

「レカン。あたしはちょっと用事があるから、エダちゃんに〈回復〉を教えてあげるんだよ」

「やたっ」

「いや。その前に冒険者協会に行く。ついて来い」

「なんでだよ」

「お前、ほんとに人の話を聞かないな」

11

「依頼達成おめでとうございます。報酬は依頼者から直接お受け取りください。なお、今回の功績で、レカンさんは銀級に昇格されます。明日冒険者章を受け取りに来てください」

「えっ。あたいは? あたいは昇格できないの?」

「できません」

「そんなあ。アイラちゃん。そりゃないよう。あたい、レカンなんか比較にならないぐらい、たくさん依頼達成してるじゃん」

「初期の連続失敗が響いてるんです。レカンさんは依頼達成率百パーセントで、しかもすべて高評価ですから」

「ううっ。なんとかしてよう」

「なんともなりません。ところでレカンさん、孤児院から指名奉仕依頼がはいっています。またこどもたちを遊ばせてほしいそうです」

「ことわる」

12

「お帰り」

「ただ今帰ったっす」

「あの件はどうなった?」

「手配はしておいたよ。あとどうするかは領主次第だね」

「そうか」

「じゃあ、レカン。エダちゃんに〈回復〉伝授の一回目といこうかね」

「レカン師匠! お願いしまっす」

レカンは考えた。

自分が受けたと同じような説明をしても、絶対にエダには理解できない。

もっと直感的で、もっと実践的なやり方がいい。

ニケは、祈りの深さが発動の鍵だと言っていた。

とすると。

「エダ」

「何だい」

「お前の大事な人が、ここにいるとする」

「だ、大事な人って、何だよ。そんなのいねえよ」

「母親とか、父親とか、兄弟とか、仲のいい友達とかだ。今は生きてない人でもいい」

「ああ? あ、なんだ、そういう意味か。じゃあ、とうちゃん、かな」

「その父親が怪我をしてる」

「ええっ」

「怪我をして痛がってる。苦しんでる。だけど誰も助けられない」

「ど、どうしてだよっ。どうして誰も助けてやらねえんだよっ」

「誰にも助けられないんだ。そういうことはある」

「な、何とかならねえのかよ」

「方法はある」

「教えてくれっ」

「両手を出せ」

「こ、こうか?」

「両手を合わせて、少し丸めろ。落ちてくる泡雪を捕まえるように」

「何を捕まえるって?」

「水をすくうように」

「お、おう。こんな感じか」

「その手のひらのなかに、温かい光を生み出せ」

「ひ、ひかり?」

「お前の思いを光に変えるんだ」

「わ、わけがわかんねえ」

「わからなくていい。感じるんだ」

「感じる?」

「お前が父親を救いたいという思いが本当なら、光が生まれる」

「ほ、ほんとだな?」

「やわらかで、何もかもが満たされて、幸せになる光だ」

「幸せの……光」

「父親の怪我を治したいと心から思うなら、その思いが光になる」

「思いが……光に」

「そして、唱えるんだ。〈 癒やしを(キリーム) 〉」

「き、キリーム」

ぽわっ、と音がしたような気がした。

エダの丸めた手のなかに、一つの温かい光が生まれていた。

それは、みる者の心に懐かしさと安らぎを与える、癒やしの光だ。

「で、できたっ」

心からうれしそうに、エダが叫んだ。

「で、できたよ、レカン」

涙を流して喜んでいる。

これには、レカンが仰天した。

レカン自身、三日のあいだ、ニケのつきっきりの指導を受けながら、何度も何度も繰り返して挑戦し、やっと小さな光をともすことができたのだ。

それをエダはたったの一回で、しかもレカンのいいかげんな指導で、成功させた。その光の大きさは、レカンが最初に成功したときより、ずっと大きい。

ふた呼吸ほどのあいだに驚きから立ち直ったレカンは、少し誇らしげな気持でニケをみた。

ニケはひどく恐ろしい顔をしていた。