軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ボウドは右手と左手を〈収納〉に差し入れながら首をそらした。〈アゴストの剣〉はボウドの頭を捉え損ね、左肩をしたたかに打ち据えた。

今までとはちがい、確かにダメージが入ったことを、レカンは感じ取った。

ボウドが〈収納〉から引き抜いた右手には、奇妙な形の短い杖のようなものが握られている。そして左手には魔石が握られている。大型迷宮の主が落とすような強力な魔石だ。

レカンは〈アゴストの剣〉を振り上げ、追撃を放とうとした。

ボウドが持つ短い杖の上にくぼみがあり、魔石をそこにはめ込んだ。

杖の先の不気味な膨らみが、ぱかりと割れた。

それは開いた目玉のようにみえた。

その目玉から、魔力の塊が射出された。

かわす間もなく魔力の塊はレカンを直撃し、爆発し、レカンを吹き飛ばした。

それはレカンの最大出力の〈炎槍〉を何本か合わせたほどの強力な魔法攻撃だった。

レカンは大きく吹き飛ばされた。

意識が一瞬飛びかけたが、レカンはすぐに意識を取り戻した。

幸いにも、魔法攻撃が爆発する瞬間、左腕で顔を守ったので、頭部は重篤な損傷を受けずにすんだ。

骨が何本か折れたかもしれない。それでも白炎狼の外套の魔法防御力は絶大で、その下側に着込んだ大炎竜の鎧の物理防御力も極めて高い。

レカンは吹き飛ばされながら空中で態勢を整え、くるりと回転して地に降りた。

ボウドが次の魔石を取り出して短杖に装着している。

レカンはボウド目指して突進した。

「〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉!」

ボウドが二発目の攻撃を放った。

レカンは左にかわした。

だが魔弾は空中で爆発し、その爆発がレカンを吹き飛ばした。

レカンはごろごろと草むらを転がり、すばやく起き上がった。

ボウドが三発目の魔石を装着しようとしている。何かを飲み込んだ。たぶん赤大ポーションだ。

(大魔石を使い捨てにして時間稼ぎをするつもりか!)

(くそっ)

(こいつとの戦いは)

(いつもこうだ)

レカンとボウドが戦うと、最後は消耗戦になってしまい、どちらが勝ったのか負けたのかわからないような結末を迎える。

異世界で新たな能力を身に着けた今回こそ決着をつけられると思ったのだが、そうはいかないようだ。

もうこれ以上ボウドとの戦いを続けるつもりはなかった。

どんな手を使っても、戦いを終わらせる。

レカンは大剣を振り上げつつ突進した。

ボウドが短杖を発動させようとしたその瞬間、レカンは跳躍した。

「〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉!」

高く高く空を舞い、レカンは空からボウドに襲いかかろうとする。

ボウドが短杖を上空に向けたとき、レカンは〈アゴストの剣〉をボウドに投げつけた。

大剣と交差するように魔法攻撃が射出され、レカンを襲う。

魔弾が爆発し、レカンはさらに上空に吹き飛ばされた。

「〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉!」

魔弾を受けたダメージで頭がくらくらする。それでも何とか意識を保ちながら、呪文を連発した。

魔弾の爆発力と爆風を利用し、さらに〈突風〉の力を借りて、レカンはさらに高空に舞った。

レカンは右手を〈収納〉に差し入れ、爆裂弾を取り出すと、真下に投げつけた。

「〈ティーリ・ワルダ・ロア〉!」

〈不死王の指輪〉の恩寵が発動し、レカンはしばらくのあいだ、いかなる攻撃からもダメージを受けない状態となった。

「〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉!」

レカンは必死で〈突風〉を連発した。

何があっても恩寵無効の範囲内に落ちるわけにはいかない。魔力のありったけを使い果たしてでも、空に浮かび続ける必要があった。

レカンが投げた〈アゴストの剣〉は、ボウドの体目指して落ちてゆき、ボウドはそれをかわすために後ろに逃げた。しかし逃げ切ることができず、左足に当たり、ボウドは態勢を崩して転倒した。

起き上がったところに爆裂弾が落ちてきた。

まばゆい光がはじけ、そこにいる誰もがみたことのないような爆発が起きた。地は吹き飛び、観戦していた人間も獣人もなぎ倒された。

レカンが落下してきた。体を丸めて防御態勢を取る以外何もできなかった。地に叩きつけられた。まだ〈無敵〉状態が維持されていたので、レカンは無事だ。

それでもしばらくは動けなかった。

ようやく起き上がると、ボウドを探した。

いた。

爆心地は大きくえぐれていて、その東側にボウドが倒れている。吹き飛ばされたのだろう。

体を引きずるようにしてボウドに近づいていった。

右手で〈収納〉から〈ラスクの剣〉を引き抜いた。

うつ伏せのボウドが、ごろりと反転し、仰向けになった。

兜は吹き飛んでいて跡形もない。

鎧もずたずたに引きちぎれ、残骸が体にへばりついている。

顔は血だらけだ。

レカンは剣の切っ先をボウドの喉元に突きつけた。

ボウドは大地に横たわったまま、レカンの顔をにらんだ。

『おいおい。一対一の決闘に爆裂弾を使うとは。レカン、お前、正気か?』

『やかましい』

二人はしばらくにらみ合った。

やがてボウドが、ふう、と息をついて、表情から力を抜いた。

『もう〈硬質化〉も〈剛力〉も〈衝撃貫通〉も使えん。〈爆裂弾〉から身を守るのに、最後の精神力を使い果たしてしもうたわい。お前の勝ちだ、レカン』

レカンはボウドの首筋の右横の大地に〈ラスクの剣〉を突き立てた。

そして剣を手放し、天を振り仰ぎ、大きく胸を開いて両のこぶしを突き上げ、雄たけびをあげた。

長い長い雄たけびだった。

腹の底から湧き上がる熱い喜びを、声に乗せて、大空に解き放った。

おのれの勝利を天地に焼き付けるこの雄たけびに、獣人たちも唱和した。

すさまじい吠え声を轟かせ、超絶の戦いを確かにみとどけたことを証した。

人間たちも歓声を放った。

獣人たちのなかに〈遠吠え〉技能の持ち主が何人か生き残っていたようで、ばたばたと倒れる者が出た。

皆が一つになって、勝利者レカンを祝福した。