軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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竜獣人は立ち止まり、目を閉じて、じっとしている。

力をためているようにもみえる。

(どうみても隙だらけだが)

(誘っているのか?)

レカンは〈彗星斬り〉を〈収納〉にしまい、〈ラスクの剣〉を取り出すと、竜獣人の後ろ側に回り込んで右の脇腹に一撃を加えた。

大きな音がしたが、剣が食い込まない。

何度も〈ラスクの剣〉を振り、足を腰を、そして肩を攻撃した。

多少の傷はつく。

だが、ほとんどダメージを与えたようにはみえない。

(大炎竜なみの硬さだな)

盾にも斬り付けてみた。傷がついたようにはみえない。恐ろしい硬さだ。

レカンは、〈ラスクの剣〉の代わりに〈アゴストの剣〉を取り出すことにした。〈アゴストの剣〉なら硬い表皮のその下の肉体に衝撃を与えることができる。

それを実行に移そうとしたとき、竜獣人の青黒い体が明るい色に変色してきた。

体の内部から光が差しているかのようだ。

やがて竜の獣人の全身が、金色の光で包まれた。

振り返り、目を見開いた。

素早く盾を振り回してきた。

今までとは比較にならない猛烈な速度だ。

さすがのレカンもかわしきれず、後ろに吹き飛ばされた。

だが、大炎竜の鎧のおかげで、大きなダメージはない。

飛ばされたレカンを追って竜獣人が走る。

レカンは空中で身を丸めてくるりと回転し、足から着地した。目の前に竜獣人が迫っており、盾を振り上げている。

素早く左に身をかわす。

竜獣人の盾が恐ろしい速度で振り下ろされ、尖った先が地をうがつ。

竜獣人の盾は、巨大で細長いカイトシールドのような形をしている。下部先端は鋭い。

竜獣人は、盾を両手で持ち、尖った下部先端を前に向けたような態勢から下方に振り下ろして攻撃してくる。

持ち上げては振り下ろし、持ち上げては振り下ろす。

それをとてつもない速度で繰り返すのだ。

レカンはかわし続ける。

(魔力を放出しながら攻撃しているな)

(魔力によって身体能力を上げているのか?)

(エダやオレの魔法攻撃を吸って)

(その魔力でこの状態になってるんだろうな)

(こいつに魔法攻撃は厳禁だな)

レカンは右に跳び出して、素早く〈ラスクの剣〉を振って竜獣人の肩口に斬り付けた。

竜獣人は恐るべき速度で反応し、盾でレカンの斬撃を受けた。

盾は信じがたいほど硬い。この盾に打ち込めば、こちらの剣のほうが傷んでしまう。

ちらりとエダたちの様子をみた。

騎士ウォルトと騎士ヨーグが盾を駆使して黒犀獣人の攻撃を防ぎ、エダは二人に〈浄化〉をかけながら、時々〈イェルビッツの弓〉で黒犀獣人を攻撃する。〈睡眠〉の魔法も飛ばしている。

黒犀獣人は、ぼろぼろになりながらも、エダに一撃を入れようと追いかける。騎士ウォルトと騎士ヨーグがそれを阻む、エダは身軽に逃げているので負傷はしていないようだが、騎士ウォルトと騎士ヨーグの鎧も盾もひどく損傷している。

こうした様子を視界に収めながらも、レカンは油断なく竜獣人の攻撃をかわしていた。ところが、先の尖った盾を下方に叩きつけるだけだった竜獣人の攻撃が、突然変化した。地をうがった盾の先をそのまま前方に押し出すように突き出してきたのだ。

この攻撃をレカンはかわしきれなかった。

竜獣人の盾の鋭い先端が、大炎竜の革鎧に食い込み、レカンの下腹部を傷つけた。

するとレカンの全身を激しい電撃が包んだ。

「ぐうううっ。〈風よ〉!」

〈突風〉の力を借りて、レカンは後ろに大きく跳んだ。一瞬視界が真っ赤にそまり、身体が痺れたが、わずかな時間で回復した。

敵は盾の攻撃に魔法攻撃を交ぜることができるのだ。魔法が飛んでくるのなら〈インテュアドロの首飾り〉が障壁を張ってくれるが、レカンの肉体に接触したとき魔法攻撃が発動するのなら、対魔法障壁では防げない。

体をひねって着地したレカンは、そのままわずかに膝を曲げ、上方に高く跳躍した。

「〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉!」

〈突風〉を連発して力任せに上昇する。

「〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉!」

竜獣人の攻撃のとどかない上空で前方に移動して、竜獣人の後方十五歩ぐらいの地点に着地した。

もとの地点から三十歩ほど後方に追い込まれていたが、これでかなりもとの地点に近づいたことになる。

ジンガーたちは善戦しているようだ。練度の高い騎士たちが集団で防御に撤しているのだ。まだ時間はかせいでくれるだろう。

「〈回復〉」

着地するなりレカンは自分に〈回復〉を当てた。大炎竜の革鎧に傷がついている。あの盾の先端には、恐るべき威力があるのだ。たぶん本来の攻撃力が、魔力によって底上げされている。しかも魔法攻撃も発動できる。実に厄介な盾だ。

金色の竜獣人が身を翻し、こちらに突進してくる。

レカンは〈ラスクの剣〉をしまって〈魔空斬り〉を取り出し、魔法を流し込んで、魔法刃をまとわせた。この剣は魔法剣の一種なのだが、相手の硬さを無視して体の一部を削り取るという恩寵が付いている。ただ剣の長さが短めで、身は薄く、重量も軽い。大型の相手と戦うには、少し物足りない。

盾をレカンの左肩から右下に振り下ろすようにして竜獣人が攻撃してくる。レカンは後ろに跳んでかわすのではなく、身を低くして左前方に飛び込んだ。頭の上すれすれを巨大な盾が轟音を立てて通過する。しっかりと大地を踏みしめている竜獣人の右足に、レカンは〈魔空斬り〉で斬り付けた。

だが〈魔空斬り〉の魔法刃は竜獣人の盾に吸われてしまい、魔法刃のない剣身を打ち当てるにとどまった。

考えてみれば〈彗星斬り〉が通用しないのだから、〈魔空斬り〉が使えるわけがなかった。

レカンはごろごろと転がってから立ち上がり、前に飛んで距離を取った。

「〈風よ〉! 〈風よ〉!」

〈突風〉の力を借りて、さらに距離を取る。

竜獣人は、すぐに反転して追撃してきた。

(待機戦術に出れば)

(勝つのはむずかしくないんだがな)

竜獣人はかなりの量の魔力を使い続けている。しばらく逃げていれば、そのうち魔力が切れる。そうすれば速度も攻撃力も防御力も落ちる。

だが、ジンガーたちもいつまでもつかわからない。

エダたちもだ。

待機戦術を取るわけにはいかなかった。

〈闇鬼の呪符〉で動きを止め、〈アゴストの剣〉で連続攻撃を行えば倒せるだろう。しかし、〈闇鬼の呪符〉は、総指揮官との戦いに残しておきたい。

レカンは〈魔空斬り〉をしまった。一瞬、何を取り出すか迷った。そこに竜獣人が肉薄してきた。