軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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レカンはそのほかに、いくつかの品を、説明しながら取り出していった。

何の付加もない長剣と短剣を一本ずつ。

大小の魔石を二十個。

魔獣除けの宝玉。

シャツを一枚。

魔獣の革のベルトを一本。

そして、〈火炎剣〉。

「以上だ。いらない物があれば取り下げるが」

人形少女はぶんぶん首を振った。

「ううん! とんでもない。どれも、すっごーく貴重。わくわくする。いらない物なんてない。むしろ、もっとよこせ」

「黙れ。さて、〈貴王熊の外套〉を直してもらうのは、この前お前がオレを脅迫し、さらに拉致しようとしたことのつぐないだ」

「誠心誠意、つぐなわせていただきます」

「大げさに頭を下げるな。さて、今回二度と手に入らないもとの世界の品をこれだけ、お前とシーラにやる」

「えっ? 貸してくれるんじゃなくて、くれるの?」

「ああ。もう返す必要はない。好きなようにしろ。ただし、これを調べてわかったことは、シーラにも伝えるんだ」

「それはもちろんだよー」

「その代わりにお前に約束してもらいたい」

「まさかっ。狙いはあたしの体?」

「二度とオレの前に現れず、オレを呼ばないと約束しろ」

「えっ?」

「お前もお前が操る人形も、オレの前に姿をみせるな。オレに話しかけるな。オレの姿を探知したら、近づかずに遠ざかれ。かといって、オレを呼びつけたり、オレがお前のところに近づいたりするように仕向けることも許さん。そのほか、一切干渉するな。わかったか」

「それは、乙女心に切なすぎるよー」

「やかましい。約束できないなら、お前には何もやらん。みせん。話さん」

「手紙も出しちゃだめ?」

「手紙もだめだ。何か用があるときは、シーラを通して口頭で伝えるんだ」

かたかたかた、と音を立て、少女人形の首が右側に回転した。首の皮が引き伸ばされてゆがむ。そしてぐるりと一周して、もとの位置で止まった。すると首のしわも、すっと消えた。

「レカン兄ちゃん」

「何だ」

「お薬か毒はないかなあ。もとの世界の」

「ない」

本当はある。もとの世界の上級回復薬が三つ残っている。だが、これは、非常に貴重なものであり、ヤックルベンドにはその存在も教えたくない。

シーラはレカンがこれを持っていることを知っているが、ないと言ったレカンの言葉を否定はせず、じっとヤックルベンドとの会話をみまもってくれている。

「あのときお屋敷を爆破したあの爆弾は、もうないの?」

「あるかないかは答えられない。あったとしても、お前には預けない」

ヤックルベンドと爆裂弾。

考え得るかぎり最悪の組み合わせだ。

絶対にこいつに爆裂弾を渡してはならない。それははっきりしている。

「うーん。しかたないか。わかったよ、レカン兄ちゃん。あたしヤックルベンドは、冒険者レカンに近づきません。何かの偶然で近付きそうになったら、すぐ離れます。冒険者レカンを引き寄せるような画策もしません。一切干渉しません。すべての神々の名において誓います。イェール」

「シーラ。この誓いは信じられるのか」

「あたしシーラが、その約束の保証人となる。ヤックルベンド・トマトがその誓いを破ったとき、あたしはヤックルベンドを滅ぼす。それでいいかい」

少女人形が、うんうんとうなずく。

「シーラが保証してくれるなら、オレはそれでいい」

「よし。じゃあ、レカンとヤックルベンドの話は終わりだね。レカン。あたしはしばらく王都にいるよ。いくつか用事もあるし、レカンからもらった品をヤックルベンドが解析するのにも、ちょっと立ち会ってみたいし」

「ほう」

「結婚式の招待状だけどね、ヤックルベンドの屋敷に届けてもらおうかね。あたしがどこに行ってても、ヤックルベンドとは連絡がつくから」

「ほう。わかった」

「あ、結婚式! レカン兄ちゃんと、ノーマ姉ちゃんと、エダ姉ちゃんのだよね。いいなー。うらやましいなー。ねえねえ、あたしもご招待して」

「お前、誓約により王都を出られないとか言ってなかったか?」

「その誓約の相手が目の前にいるし。ねーねー。いいでしょう?」

ということは、その誓約はシーラとのものだったのだ。

「お前は呼ばん。絶対にだ」

「あたしも誓約を解く気はないよ。一度解くと、二度と同じ誓約が結べないかもしれないしね」

「ちぇー。つまんないの」

シーラに別れを告げ、シーラの隠れ家をレカンは出た。

すると、強い疲労を感じた。

ヤックルベンドとの会談は、レカンにひどい緊張を強いていたのだ。

(だがその価値はあった)

(もう二度とあれに会わずにすむ)

(話もせず手紙のやり取りもなしだ)

(おかしなちょっかいをかけられることもない)

(それでもたぶん何かしかけてくるだろうが)

(そのときはシーラが責任をもって対処してくれる)

(最上の結果が得られた)

昨夜レカンは、シーラとヤックルベンドの関係をじっくり考えてみた。

たぶんこの二人は、長い時を生きる者の孤独を共有している。敵であるとか味方であるとかを超えた、いわく言いがたい関係がある。

そしてまた二人はお互いに、その恐ろしく高度な研究の意味や中身を理解できる唯一の存在なのだ。

レカン自身や持ち物について、シーラは自分で分析しきれない部分をヤックルベンドに相談する。その結果得られる知識を、シーラは強く欲している。だから、ヤックルベンドとレカンの和解を取り持とうとしているのだ。

その考えに立って、レカンはヤックルベンドにもとの世界の品を与えた。それがシーラの望むことであるにちがいないからだ。

二人と別れ、以前エザクに案内された店に行き、レカンはゆっくり食事し、酒を飲んだ。

飲んでいるうちに遅くなったので、ワズロフ家の屋敷に行くのはやめて宿に泊まり、翌朝マシャジャインに向かった。