軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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いずれ白炎狼と三度目の戦いをすることはわかっていた。

だからレカンは考えた。どう戦えばいいのかを。

その結果、逃げ続けて相手を消耗させるという作戦にたどりついた。

白炎狼の魔法攻撃には、恐るべき魔力が込められている。

それだけに、魔力消費は激しいはずだ。

そしてレカンには魔力回復薬がある。

こちらは魔力を極力節約しつつ、相手の魔力消費をあおりつづけたら、どうなるか。

そこを狙ってみることにしたのだ。

まともに白炎狼の魔法攻撃を受け続けたら、首飾りの魔力などあっというまに枯渇してしまう。ジグザグに移動し、大木や岩の陰に身を隠し、直撃を避けることで、首飾りの効果を長引かせ、白炎狼に少しでも多くの魔力を消費させるのだ。

普通に走ればレカンより白炎狼のほうが速い。しかも瞬時に方向転換するのは、人間より狼のほうがずっとうまい。

だが、不規則な動きというのは、存外捕捉しにくいものだ。そしてレカンはもとの世界で、まだあまり強くなかったころ、とにかく逃げて逃げて相手の油断を誘い勝利する、という戦法を多く使ったことがある。〈立体知覚〉の技能を獲得してからは、森を駆け抜ける能力が飛躍的に向上したし、命がけの逃走でつかんだ技術は今も健在であるはずだ。

この作戦が成り立つには、森のなかであることが必要だ。だからレカンは、ユフに行くときには人通りの多い街道を通り、街に宿泊した。そして、ユフを出てマシャジャインに向かうときには、森のなかを進んだ。それも、小さな森ではなく、延々と森が続く場所を選んで通った。

そうしたところ、狙い通り白炎狼が襲ってきたというわけだった。

レカンは逃げた。逃げ続けた。勝機をつかむために。

起伏の多い山のほうにレカンは逃げた。

木々や、山の起伏が遮蔽物となって、白炎狼の攻撃からレカンを守ってくれる。

完全にはかわせないときも多いが、できるだけ直撃は避ける。〈インテュアドロの首飾り〉の魔力消費を抑えるためだ。

いっそ、〈インテュアドロの首飾り〉に魔力補給ができればいいのだが、そのためには静止して心を静めて集中しなければならず、少し時間もかかる。さすがにそれは無理だ。それでも、時折隙をみては自分に〈回復〉をかけ、体力回復薬を飲み、水を飲んだ。

白炎狼が強力な魔法攻撃を放つときには、立ち止まって魔力を練る。この巨大な魔法攻撃はかわしきれないので、〈トロンの剣〉で迎え打つ。〈トロンの剣〉で散らしきれなかった攻撃は、〈インテュアドロの首飾り〉の障壁に任せるしかない。

今、レカンは、女王蜘蛛の鎧を着ている。この鎧も高い魔力防御を誇るが、さすがに白炎狼の攻撃に対しては、あまり防御効率は期待できない。貴王熊の外套は、やはり自動修復の限界を超えているのか、修復する気配がないので、今は〈収納〉にしまってある。

森林を破壊しながらレカンと白炎狼は移動し続けた。

「ウオン!」

白炎狼がひと声吠えた。するとその頭上に魔力の塊が現れ、複雑な渦を巻いた。

背中をみせて逃げているレカンには、その魔力の渦を視認する暇はないが、たぶんこれは魔法陣だ。

突如、前方から暴風が吹き荒れた。

とっさにレカンは、〈突風〉で上空に逃れようとした。

だが、発動の瞬間、発動のぐあいを変更した。

「〈風よ〉!」

前方から吹く暴風に強い〈突風〉をぶつけ、そうしてできた風の隙間を走り抜けた。

後方で落雷のような魔法攻撃が炸裂した。

上空に飛び上がっていたら、たぶんまともにくらっただろう。

すでに逃走開始から一日以上が過ぎている。

レカンの逃げる速度も、白炎狼が追う速度も、まったく衰えていない。

(それにしてもこいつ)

(魔法攻撃ばっかりだな)

たぶんそうなのではないかという予感があった。

どうも白炎狼は、物理攻撃より魔法攻撃のほうが得意なのではないかとレカンは感じていた。

もちろん、その牙や爪が恐るべき威力を持っていることは、体験して知っている。動作の機敏さも、思い知らされている。

それでも、白炎狼は魔法のほうが得意であるような気がしてならなかった。強力な魔法と、それを支える膨大な魔力こそが、白炎狼の強さの秘密であるように思えてならなかった。

だからこそレカンは、白炎狼の魔力を枯渇させる戦法を採ったのだ。

その予想が当たっていたのかどうかわからないが、白炎狼は魔法主体の攻撃を続けた。時折、レカンの前方や上空に転移して、爪や牙で襲いかかることもあったが、まるで意地になったように、白炎狼は魔法攻撃を繰り返した。

二日目も終わりかけたころ、レカンが足を滑らせて転倒した。

白炎狼は立ち止まり、魔力を練った。

この魔力集束はただごとではない。すさまじい量の魔力が渦を巻いている。

今までにない強力な攻撃を、白炎狼は放とうとしているのだ。

レカンは立ち上がりながら左手を突き出し、呪文を唱えた。

「〈 展開(パシュート) 〉! 〈 反射(ワルドナ) 〉!」

みたこともない強大な魔法攻撃が放たれ、レカンを飲み込んだ。

その次の瞬間、〈ウォルカンの盾〉に装着した〈リィンの魔鏡〉が発動し、魔法攻撃をそのまま反射した。

その破壊の力は驚異的なものだった。

山が大きくえぐられて蒸発し、周辺の木々をなぎ倒し、燃え上がらせた。

あまりの威力に、レカンは目をみはった。

土煙が治まると、巨大なくぼみの中央に白炎狼がいた。

目を閉じ、四肢に力を込めて、魔法攻撃のダメージに耐えている。

あらゆる魔法攻撃をはねのけてしまう白炎狼だが、自分自身が放った魔法攻撃を浴びると、大きなダメージを受けるのだ。

ぶすぶすと全身から煙を上げている。美しい毛皮が、薄汚れた茶色にくすんでいる。

それでも、毛皮に破れたような部分はみあたらない。恐ろしく高い魔法抵抗のある毛皮だ。ただし毛皮の下にある肉は、相当なダメージを受けているようで、ぶくぶくとむくみをみせている。

これだけ距離があるのに、肉が焼ける匂いがする。毛皮の下の肉が焼けているのだ。

レカンは、くぼみのなかに下りていった。

白炎狼は、目をみひらいた。怒りに満ちた眼光で、レカンを射抜く。

レカンは、油断なく白炎狼に近づいていく。

白炎狼がぶるぶると身を震わせ、体内の魔力を練り、その魔力を自分自身にまとわせた。

すると毛皮が薄汚れた色から白色に変わり、さらに輝くばかりの艶を帯びた。毛皮の下の肉体もすっきりして、もとの美しさを取り戻した。

(おっ?)

(何だ今のは?)

今白炎狼が何をしたのかはよくわからない。わかるのは、白炎狼がかなりの魔力を使ってしまったということだ。

今こそ切り札を切るときだ。

充分に近づいてから、レカンは呪文を唱えた。

「〈ガスパーリオ・ラーフ〉」