軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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レカンは、ゆっくり立ち上がった。

白炎狼は、闇のなかに目を光らせながら、じっとレカンをみつめている。

ぽっちゃりは、すっと気配を消して、闇の中に溶け込むように、その場から逃げた。

白炎狼は、ぽっちゃりには目もくれず、じっとレカンをみつめている。

レカンは、〈ラスクの剣〉を〈収納〉に入れ、〈ウォルカンの盾〉を取りだして左腕に装着した。それから、〈トロンの剣〉を出した。そして、大きく息を吸い、吐いた。

串に刺した肉が、たき火に焼かれて、音を立てながらよい匂いをただよわせている。

いきなりレカンは振り向いて逃げた。

すかさず白炎狼が口から魔法攻撃を放ってきた。青白い巨大な火の玉だ。

それを予想していたレカンは、身をかわした。だが、完全にはよけきることができず、〈インテュアドロの首飾り〉が障壁を張って、魔法攻撃を食い止めた。

さらにレカンは逃げた。

白炎狼は、レカンを追って走りながら、またも口から魔法攻撃を放った。

その魔法攻撃は、レカンの後ろにあった木を吹き飛ばしてレカンに襲いかかり、またも〈インテュアドロの首飾り〉の障壁に阻まれた。

逃げる。

逃げる。

夜の森をレカンが逃げる。

走って逃げる。

ただしその走り方は、単に遠くに逃げようとする走り方ではない。

ジグザグに走りつつ、白炎狼に魔法攻撃の狙いを絞らせないための走り方だ。

と、レカンは背後で、それまでとちがう魔法が発動する気配を感じた。

(転移だ!)

それは白炎狼が転移するときの、独特な魔法発動の気配だ。

案の定、レカンの前方に白炎狼が出現した。

レカンは反転することも、急停止することもせず、逆に前進速度を速め、わずかに右方向に進路を変えた。そして、白炎狼の横をすりぬけて走った。

白炎狼が口を開いて魔法攻撃を放つ。だがそれは、レカンが一瞬前にいた空間をむなしく斬り裂いて、後方の樹木を直撃して、吹き飛ばした。

そのときすでにレカンは白炎狼の斜め後方にいる。

白炎狼は、人間には不可能な素早さと器用さで身体の向きを変え、レカンの背中に魔法攻撃を放った。

レカンが進路を左前方に変えていたため、魔法攻撃は直撃せず、レカンの右横に届き、やはり、〈インテュアドロの首飾り〉の障壁に阻まれた。

森の中をジグザグに走るレカンの後方で、魔力が膨れ上がる気配がした。

(来る!)

白炎狼が口から放つ青白い火の玉には二種類ある。

口を開く以外ノーモーションで放つ火の玉は、走りながらでも撃てる。

いったん立ち止まって魔力を練りながら撃つ火の玉は、巨大な魔力を持っており、着弾したあと魔力爆発を起こして敵に深いダメージを与える。

後者の火球が持つ威力は、レカンが渾身の力を込めて放つ〈驟火〉を凝縮したと同等の、あるいはそれ以上の威力を持つ。こんなものをまともに受けたら、〈インテュアドロの首飾り〉の魔力はあっという間に枯渇するだろう。

レカンは反転して白炎狼に突進しつつ、〈トロンの剣〉を前方に突き出して、大声で呪文を唱えた。

「〈ゾルアス・クルト・ヴェンダ〉!」

白炎狼の口から、恐るべき威力の巨大な魔法攻撃が発せられた。

魔法攻撃は、木々をなぎ倒し、吹き飛ばし、焼き払ったが、そこにはレカンはいない。

その巨大な青白い光球が着弾する寸前、レカンの体は消え、白炎狼の後方に出現していたのである。

レカンは、またも、木々のあいだをジグザグに駆けていく。

白炎狼は、反転してレカンを追い、次々に魔法攻撃を放ってきた。

めったに直撃しない。直撃しても、〈インテュアドロの首飾り〉に防がれる。

かすめたときにも〈インテュアドロの首飾り〉がレカンを守る。

はずれたときには、〈インテュアドロの首飾り〉の魔力は消費しない。

(むっ)

またも膨大な魔力を練る気配がする。白炎狼は巨大な魔法攻撃を放とうとしているのだ。

レカンは立ち止まって振り返り、〈トロンの剣〉を前方に突き出しながら、大声で間違った呪文を唱えた。

「〈ゾルアス・トルク・ヴェンダ〉!」

白炎狼は、魔力をためたまま、くるりと振り返った。レカンが後方に転移すると思ったのだ。

だが、間違った呪文では、〈白魔の足環〉の恩寵は発動しない。白炎狼は、みすみすレカンに背中をみせたことになる。

「〈炎槍〉!」

レカンの左手から魔法攻撃が発せられ、白炎狼の後ろ足の下側の地面に着弾して爆発した。

爆発して跳ね飛ぶ土と一緒に白炎狼も吹き飛ばされる。白炎狼は空中で器用に体勢を立て直して着地するが、そのときには練り上げた魔力は散ってしまっている。

この攻防で貴重な時間を稼いだレカンは、大樹の陰に身を隠すと、〈収納〉から体力回復薬と魔力回復薬をつかみとって口に入れた。

白炎狼の魔法攻撃が飛んでくる。

レカンは前方に駆け出した。魔法攻撃は大樹に着弾して吹き飛ばしたが、レカンには届かない。

木々の密度が高いほうに向かってレカンは走る。

そのレカンの前方に白炎狼が転移して、魔力を練り、口を開いた。

レカンは走りながら、〈トロンの剣〉を前方に突き出し、恩寵を発動させないダミーの呪文を唱えた。

「〈ゾルアス・トルク・ヴェンダ〉!」

白炎狼は振り向かなかった。

かといって、巨大な魔法攻撃を放つこともしなかった。

魔力をためたまま、一瞬間を置き、レカンが転移しないことを確認してから、魔法攻撃を放った。

視界が光の玉で埋め尽くされるほどの攻撃がレカンを襲う。

だが、その魔法攻撃は、〈トロンの剣〉にほとんど散らされてしまい、散らしきれなかった攻撃が〈インテュアドロの首飾り〉の障壁を顕現させ、まばゆい光を放ちつつ爆発する。

その爆発の中を突っ切りながら、レカンは〈立体知覚〉の情報を頼りに左手で魔法を放った。

「〈火矢〉!」

指呼の間で放たれた五本の〈火矢〉が、白炎狼の顔面を襲う。

レカンは白炎狼の脇を走り抜けた。

ただちに白炎狼が放った魔法攻撃がレカンを直撃した。〈インテュアドロの首飾り〉が、強い光を放って魔法攻撃を防ぐ。

(ちっ)

(やっぱり白炎狼も強力な探知技能を持ってやがったか)

白炎狼が、視覚だけを頼りにレカンを追っているのなら、今の攻撃で一瞬はレカンをみうしなうはずだ。ところが、五本の〈火矢〉を顔面にくらった直後に、正確無比な攻撃を放ってきた。ということは、視覚以外にレカンを捕捉する技能を持っている、と考えなければならない。

たぶんそれは、レカンの〈立体知覚〉に匹敵する、あるいはそれ以上の技能だ。

前回遭遇したときには、白炎狼はレカンを二千歩だか三千歩だか離れた位置から転移して追ってきた。つまり、〈生命感知〉に匹敵するか、あるいはそれ以上の技能も持ち合わせている。

やっかいな敵だ。

だが、今のところ、作戦はうまくいっている。