軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2 (ユフ地図あり)

2

迷宮都市ワードを出て三日目早くにソプデモアに着いた。

ソプデモアは、王国南部最大の商業都市である。ギドやスマークからの物産は、いったんソプデモアに運ばれて、王都はじめ各都市に運ばれていく。

「レカン。知ってる?」

「何をだ」

「ソプデモアの宝石加工技術は、王国一なんだって。この町には、王国でも最高の宝石店がいくつもあるらしいよ」

「ほう」

レカンは衛兵をみつけると、ディラン銀鋼でできたワズロフ家の紋章をみせて、この町で一番いい宿はどこだ、と聞いた。

そしてその宿に着くと、やはりワズロフ家の紋章をみせて部屋を取り、この町で一番の宝石店を紹介してくれ、と言った。

そのまま宝石店に行こうとしたが、エダが拒否した。湯浴みして着替えなければ、絶対に宝石店には行かないというのだ。

翌日の朝、宿に馬車を出してもらい、町一番の宝石商に送ってもらった。エダは貴族女性のような外出着を身にまとった。聞けばヘレスからもらったものだという。

宝石店では、やはりワズロフ家の紋章を支配人にみせたあと、白金貨を一枚渡して言った。

「これでこの 女(ひと) に似合う宝石をあつらえてくれ」

「かしこまりました」

支配人が最初に持ってきたのは、みるからに豪奢なサークレットと、圧倒的な存在感を放つ指輪だった。

「とても美しいものですね。でも支配人。わたくしは、この人からの贈り物を、いつも身に着けていたいのです。簡素な服でも違和感がなく、あまりかさばらず、動きを妨げないような指輪をみせていただけますか」

「かしこまりました」

「ちょっと待ってくれ。指輪は指輪でいいが、普段身に着けるものと、着飾ったときに身に着けるものを両方頼みたい」

「かしこまりました」

「レカン……」

かなりの時間をかけて、正装用と常用の二つの指輪が決まった。常用の指輪は恩寵品で、装着者の肌にうるおいを与え、肌荒れを癒やす恩寵があるのだという。エダには〈浄化〉があるのだから、そんな恩寵品は不要ではないかと思ったが、口には出さなかった。

さらにエダは、ノーマにも指輪を買うべきだと言い張った。白金貨をもう一枚出し、エダのみたてで、正装用と常用の指輪を買った。

エダの常用の指輪は自動的に指に収まるのでサイズ調整は必要ないが、あとの三つはサイズ調整が必要だ。また、エダの常用の指輪には文字を刻むことができないが、あとの三つの指輪には、レカンからの贈り物であることと、贈呈の年号を刻むことになった。

エダの指のサイズはその場で調べることができたが、ノーマはそうはいかない。マシャジャインにこの店と関係のある宝石店があるというので、そちらの店で調整することになった。

「では、エダの普段用の指輪はこの場でもらってゆく。あとの三つは、そのマシャジャインの店に送って、ワズロフ家に連絡してくれ」

「かしこまりました」

馬車に乗って宿に帰り、遅めの昼食を取った。その後エダは、レカンを連れて食料品を買いに出た。

「いや。ワズロフ家で充分に準備してもらったろう」

「新鮮なお野菜なんかはあまりないから、買っといたほうがいいよ。これから山のなかに入るし、ユフに着いたら迷宮に行くかもしれないでしょう」

「それはそうだが」

エダはパルシモでの冒険で、大導師ジザ・モルフェスから、特製の〈自在箱〉を得た。小さい袋なのに大きなものがたくさん入り、しかも、ほかの〈箱〉をなかに入れることができる逸品だ。そのうえ、なかに入れた食品が腐りにくい機能がある。

この日は旅館で豪華な食事を楽しみ、二人は幸せな夢をみた。

翌朝、ソプデモアの西門を出てユフに向かった。

ユフは四つの山脈に囲まれている。北のシェラト山脈と、東のナパ山脈と、南のホウル山脈と、西のランプラ山脈である。この四つの山脈を合わせてユフ山系と呼び、シェラト山脈とナパ山脈のあいだにだけ、細い街道が通っている。

この細い街道はユフ街道と呼ばれていて、一応、迷宮街道の一つとされているのだが、とても馬車の通れるような道ではない。ぐねぐねと曲がる狭い坂道は、ひどく歩きにくく、外界との交流を拒んでいるかのようだ。

一つの山を越えて野営したその翌朝、ぽっちゃりが顔を出した。

「旦那。やっぱり山越えは無理です。 霊泉関(れいせんかん) を通らないと」

霊泉関というのは、ソプデモアとユフのあいだにある関所だ。難攻不落とされている。

ユフに入るには、どうしてもここを通らねばならない。

だからユフは他の領主や国から攻め入られたことがない。

「それから、旦那。あたしが一人で霊泉関を通ろうとしたら、許してもらえませんでした」

「ほう」

「なんでも、悪い病気がはやっているとかで、外からの商人や使者や旅人は、しばらく通行禁止なんだそうで」

「ほう?」

ユフの関所が閉じていて商人が入れなかったとエザクから聞いた。一方、王の勅使はユフ侯爵には会えなかったというが、ユフに入れなかったとは言っていなかった。

つまり、ある程度の立場や身分がある者なら、たぶん霊泉関は通れる。

(マンフリーからユフ侯爵宛の親書をみせれば確実に通れるが)

(それだと領主の城に案内されてしまい自由には動けんな)

「よし。ワズロフ家のメダルをみせてみよう。ぽっちゃりも一緒に来い。オレたちの従者ということにする。隠し玉にするという指示は取り消す」