軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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レカンは強引に手首をひねって剣の軌道を変え、サリエルの剣に打ち当てようとした。

ところが、剣と剣がぶつかると思った瞬間、サリエルはわずかに剣の角度を変えた。鋭い摩擦音を立てながら剣と剣がすれちがう。そしてすれちがったサリエルの剣はレカンの左脚に向かった。

(こちらが本当の狙いか!)

予想もできない連続攻撃だ。しかし予想などできなくても、数多くの戦いで積み上げたレカンの勘は、ごく自然に体に回避の動作を命じていた。

いつの間にか右足に重心を移していたレカンは、すっと左脚を後ろに引いた。

サリエルは体を伸ばしてレカンの左脚を追うが、ぎりぎり届かない。レカンはがら空きのサリエルの胴体に剣を振りおろした。

サリエルは前方に飛び出しつつ、体をひねり、革鎧の分厚い部分でレカンの剣を受けた。それでも普通なら勝負を決めるような一撃だったが、大炎竜の革の驚異的な防御力がサリエルを守った。

ただしレカンの攻撃の重さは尋常ではなく、足を送って体勢を立て直そうとしたサリエルは、体のバランスを崩してしまう。

容赦ないレカンの追撃がサリエルを襲った。

そのときサリエルは体を大きく沈めると、横薙ぎに剣を振るった。レカンの両足を刈りにきたのだ。

レカンは大きく後ろに跳んでこの攻撃をかわした。

サリエルは強く地を蹴り、レカンの落下地点に向かった。

レカンは〈突風〉を使おうとして、ここでは魔法が使えないことを思い出した。

着地したレカンの右足をサリエルの剣が襲う。

だがレカンは右足に自分の剣を添えており、サリエルの剣を防ぐ。

そのままレカンは剣をはね上げて、サリエルの剣を大きくはじき飛ばした。

大きく弧を描いて中空を舞うサリエルの剣。

サリエルは必死の移動をみせて、落下地点に走り込み、落ちてくる自分の剣をつかんだ。

これは反応速度もさることながら、よほど運がよくないと成功しない試みだ。

その運を引き寄せるだけのひたむきさを、サリエルは持っている。

観客席からはどよめきが上がっている。

両手で中段に剣を構えてレカンをにらみつけながら、サリエルは大きく肩で息をしている。

(困ったな)

(負けてやってもいいんだが)

(どうやって負けたらいいのかわからん)

(ゾルタンがわざと負けようとして失敗した話をしてくれたとき)

(そんなばかなと笑ったが)

(自分が同じ立場になるとは思わなかった)

まさか棒立ちになって相手の攻撃を受けるわけにもいかない。

相手が攻撃してくれば、防御するか、反撃するかしかない。

ところがサリエルの攻撃が存外鋭いので、しっかりした防御をせざるを得ず、反撃も威力の高いものになってしまう。

(負ける練習なんかしたことがないからなあ)

(取りあえず攻撃を受け続けるか)

(そのうち活路もみえるだろう)

呼吸を調え終えたサリエルが再び攻撃を開始した。

両手で剣を構え、息つく暇もなく連続攻撃を仕掛けてくる。

右上から。

左上から。

右横から。

左横から。

時に剣をひねり、時に反転させ、攻撃が続く。

レカンは立ち位置からほとんど移動せず、細かなステップを踏みつつ、その攻撃のことごとくを打ち落としていく。

大ぶりはしない。だから大きな隙はできない。ただ丁寧にサリエルの攻撃に応えていく。

サリエルからすれば、巨岩に打ち込み続けるようなものかもしれない。

やがて攻撃をやめ、サリエルは後ろに下がった。

大きく肩をゆらして息をしている。

その目に悲壮感のようなものが浮かんだように、レカンは思った。

(勝ち目があるとしたら最初の速攻だったな)

(手の内は読めた)

(もうこいつに勝ち目はない)

(こいつ自身もそれに気づいてるはずだ)

だが次の瞬間、サリエルの目に闘志の炎が燃え上がった。

大きく肩をゆらして息をする、その一息一息に、闘志が凝縮されてゆく。

(ほう)

(面白い)

(次はどんなわざをみせてくれるんだ)

もはやレカンは負けてやろうと思ったことなど忘れ去って、ただ純粋にこの戦いを楽しんでいた。

そして気力が最大限に充実したとき、サリエルは突進した。

(こいつは呼吸のしかたがうまいな)

(だがそれだけにわざを仕掛けるタイミングが読みやすい)

(しかし待てよ)

(この動き)

(こいつまさか)

そのまさかだった。突進したサリエルは、レカンに向かって跳躍したのだ。

走り込んだ勢いのまま全体重を乗せて攻撃するのだから、威力のある攻撃になる。しかし飛び上がってしまえば、空中で体勢を変えることはできない。満を持して待ち受けるレカンは、ほんの少し相手の攻撃の届かない位置に移動して、攻撃を加えればよい。それで勝負は終わりだ。

だがレカンは、捨て身のこの一撃を受けてみる気になった。両手にしっかりと剣を握り、体重を乗せてまっすぐサリエルの剣と交差するよう剣を突き出す。

レカンの剣はサリエルの剣を受け止めきってはね返すはずだった。

ところが鉄芯入りの木剣とはいえ、金属剣の硬さはない。

サリエルが必死の気迫を込めた剣はレカンの剣を削り、ずるりと滑った。

剣先がレカンの眉間をまともに打った。

痛みを感じる前にレカンは、反射的に剣を引き、思い切り横殴りにたたきつけた。

暴風のようなレカンの剣は、無防備なサリエルの腹に食い込み、吹き飛ばした。

地に落ちて転がったサリエルは、それでも気力を振り絞って起き上がろうとした。

だが体を起こすことができない。

(死んでないようでよかった)

(つい全力の攻撃をしてしまったので殺してしまったかと思った)

(しかしあの攻撃をくらって目にみえた損傷がなくあんなふうに動けるのか)

(大炎竜の防具というのはものすごいものだな)

(こうやって着ていても軽いし動きを妨げない)

(ユフ迷宮産と言ってたな)

審判が右手を上げて判定を宣告しようとしたそのとき、レカンが言った。

「審判。これが真剣なら、オレが先に死んでいた」

レカンの眉間からは血が流れている。

審判は少し物問いたげにレカンと目を合わせたあと、手を高く上げて宣告した。

「勝負あり! サリエル殿の勝ち!」