軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5

5

「強者の顔をしておる。それに静かではあるが、全身から達人の気配がただよっておる。レカンよ」

「は」

「そなたがツボルト迷宮最下層の主と戦ったとき、たった一人であったというが、まことか?」

それからしばらく問答が続き、二つの大迷宮を踏破したときのようすをレカンは語った。また、王の問いに答えて、ゴルブル迷宮、ニーナエ迷宮、コズイン迷宮、ラカシュ迷宮、ロトル迷宮、カパドア迷宮、そしていくつかの小迷宮を踏破したことも語った。

続いて王は、ノーマとエダにも話しかけ、それぞれの功績をたたえた。

「スカラベルとその師との対話につき、重要な骨子の部分はすでに各地の領主や神殿に伝えてあるが、近々全体の記録がまとめられると聞いておるぞ、宰相よ」

「は。ノーマ殿、いかに」

「宰相閣下。先ごろアーマミール神官様より連絡があり、原稿の校閲を依頼されておりましたが、こたび私は王都にてアーマミール様を訪ね、原稿を完成させたく思っております」

「なんと喜ばしいことか。宰相よ、余はその本を手に取る日が楽しみでならぬぞ」

王はノーマに対し、シーラの人となりや学識について若干の質問はしたが、シーラについてそれ以上のことは聞かなかった。また、ノーマの父サースフリー・ワズロフの業績に言及し、偉大な研究者であったと褒めた。この言葉を聞いたノーマは肩を震わせて深く礼をした。

こうした問答が行われているあいだ、貴族たちは立ったまま控えていた。レカンはちらりとスマーク侯爵の顔をみたが、血の気のない幽霊のような顔をして立ち尽くしていた。

やがて問答が終わり、王は結婚への祝辞を述べ、ノーマとエダに、色違いのブレスレットを下賜した。

「レカンよ」

「は」

「そなたには、今後自由にフィンケル迷宮の探索を許す。それがそなたへの結婚祝いである」

「は」

(探索の許可だと?)

(どこの迷宮でも自由に潜れるんじゃないのか?)

(それともフィンケル迷宮というのは特別なのか?)

よくわからなかったが、とにかく大迷宮に潜れるというのはうれしい話だ。

レカンは謹んでこの祝いに礼を述べた。

「ところでレカンよ」

「は」

「そなたの攻撃魔法には、パルシモのジザ・モルフェス導師も感嘆したと、パルシモ侯爵から聞いておる。いっぽう、ツボルト侯爵によれば、そなたは希代の剣士であるという。剣と魔法。いったいどちらがそなたの得意とするところなのだ」

「オレは剣士です」

「ほう。即答か。ではレカンよ、その剣のわざを余にみせてはくれぬか」

「お望みとあれば」

「うむ。サリエル」

「は」

「レカンの相手をせよ」

「かしこまりました」

「宰相」

「は。皆さま。これより練武場において、陛下ご臨席のもと、レカン殿とサリエル・ゴッセン子爵の試合が行われます。観戦をご希望されるかたは練武場にお移りください。観戦をご希望されないかたは、そのままご退出ください」

レカンは侍従に案内されて正殿を出て練武棟に移り、控室に移動した。防具と木剣と盾が用意してある。

防具は部分部分を装着するフリーサイズのものだ。部屋にいた係員が装着してくれた。

(これは竜革だな)

(オレが使っているロトル迷宮の竜の革より上等だ)

「この革鎧は竜だな」

「さようでございます」

「いい革だな。この竜はどこの竜かわかるか」

「ユフ迷宮産の 大炎竜(ウルバンザム) でございます」

「そうなのか。参考になった。ありがとう」

「いえ」

係員が革兜を着けようとしたので、それはいい、と断った。

木剣は十本用意してある。持ってみると、意外に重い。

(鉄の芯が入っているのか)

(これで本気で殴ったら相手は死ぬぞ)

ラスクの剣と同じほどの長さの長剣を選んだ。

数度素振りをくれた。

(いい造りだ)

(手になじむ)

盾は手に取ることさえしなかった。魔法の使えない一対一の戦いだ。素早い動きが物を言う。機動性を高めるためには盾は邪魔だ。

「よし。準備はいいぞ」

「では、こちらにお進みください」

練武場に案内された。

周囲は高く盛り上がった観客席になっており、王と側近が、貴族たちが、そして騎士たちがいる。

先ほどの謁見のときに立ち会った貴族たちはほとんど来ているようだが、スマーク侯爵はいない。マンフリーをはじめ、ワズロフ家の人々や騎士たちもいる。

そのほかに、大勢の騎士が観戦している。いずれも手練れだ。

騎士たちのなかで、小さく手を上げて挨拶してきた者がいる。

(誰だ?)

(どこかでみたような気もするが)

対戦相手の何とか子爵が入場してきた。意外なことに、子爵も盾を持っていない。持っている剣は、たぶんレカンと同じ長さで、剣身が少し薄いものだ。頭には防具を着けている。目鼻口が露出する型だ。

中央に立つ審判の前を通り過ぎて、レカンに近づいてくる。

若い。二十歳をいくらも過ぎていないだろう。かなり腕が立つ。

「レカン殿。貴殿と剣を交えられてうれしく思います」

「ああ」

「実はこの手合わせは、私が陛下に請願したものなのです」

「ほう?」

「私のことはご存じですか」

「いや、知らん。名前もさっきはじめて聞いた。もう忘れたが」

「サリエル・ゴッセンと申します。ソプデモア侯爵家の跡取りです。王家から養子に入りました。おそれながら今上陛下とは従兄弟になります」

「なに? こんな試合の相手に指名するには身分が高すぎるように思うが」

「だからこれは私が望んだことなのです。ヘレス・ラインザッツ姫に求婚するために」