軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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十八階層の穴を抜けて全員が集結したところで、レカンは言った。

「よし。昼食にしよう」

「あ、ああ。しかし、半日で十八階層をあっさり踏破するとは」

ウイーが驚きを顔に浮かべている。

レカンは〈収納〉から薪を取り出して積み上げた。

「何をしているのだ、レカン殿」

「たき火をするんだ。はじめてみたわけでもないだろう」

「そんな悠長なことをしている暇はない。携帯食を水で流し込んで、早く次に進もう」

「落ち着け。〈着火〉」

「おばばさまからも、この男に何か言ってやってください」

「ひょっ、ひょっ。レカンちゃんの言うとおりじゃよ。落ち着くんじゃ、ウイー。戦うときにはためらわず戦い、休むときには充分にくつろぐのじゃ。そうせんと、実力を発揮できん」

「しかし、半日で十八階層ですよ。このぶんだと、本当に一日で三十階層に到達できるかもしれません」

「うん? あんた、前に、実力のある人間なら、一日で三十階層まで潜れると言ってなかったか?」

「深層に到達した人間が必要な人数集まれば、そんなことをするのはたやすい。だが、いったん深層にまで進んだ者たちが、わざわざ浅い階層を踏破し直すわけはないだろう」

「なんだ。じゃあ、実際に一日で三十階層に進んだやつはいないのか」

「いるわけがない」

「といっても、俺もユリウスもエダも、すでに八十階層まで進んでるぞ」

「アリオス殿ははじめてなのだろう。すごい人だ」

きらきらと輝くような目で、ウイーがアリオスをみている。

レカンに対する態度と、ひどい違いだ。だが、もともとウイーはアリオスを参加させて一階層から踏破し直すことに難色を示していた。今はアリオスの参加を歓迎しているようだから、パーティーの空気は悪くない。それはよいことだ。

ジザのために小ぶりに切った肉が最初に焼けた。

「よし。肉が焼けたぞ。おばば、食うか」

「もらうとするよ。うん? この肉は、まさか」

ぱくり、と一切れを口に入れ、咀嚼するうちに顔に驚きが広がる。

「なんと、小火竜の肉じゃったか」

「竜! みなれない肉だと思ったが、これは竜の肉なのですか、おばばさま」

「確かに小火竜じゃな。しかもかなり階位の高い小火竜じゃよ。うむ。んまい。もしや、ロトル迷宮の主かの?」

「ああ」

「ロトル迷宮というと、八十階層あるという。そうですか」

「ほら、ウイー。焼けたぞ」

「ああ、ありがとう。頂戴する。うまい! なんといううまさだ。しかも素晴らしいかみ応えだ。力が体にしみ込んでくるような気がする」

レカンは小さく笑った。焼きたての肉ほどうまいものはない。今まさに、ウイーはたき火の魅力に屈したのだ。

「レカンて、ほんとにたき火が好きだよね」

「本当にそうですね、エダ姉さん」

「おや? ユリウスは、エダさんのことを姉さんと呼んでるのかい」

「はい、父上」

ユリウスがアリオスを父上と呼んだのを聞いて、ウイーが少し不審そうな顔をしたが、むしゃむしゃと竜肉をかみしめるばかりで、口に出しては何も言わなかった。

「たき火こそは、迷宮探索の切り札なんだ」

「なんか話が大きくなってない?」

「そんなことはない。体を温めるということには、馬鹿にならない効果がある。戦いをすれば、気づかないうちに筋が引きつったり、筋肉がこわばっていたりするものだが、たき火にあたれば驚くほど体の不調は回復する。たき火はいいものだ」

「〈浄化〉」

ひときわ大きな青い光球が出現し、レカンに吸い込まれた。

「どう? 体の調子は」

「ありがとう。うむ、いいな。やはりエダの〈浄化〉はいい」

「あたいの〈浄化〉があれば、たき火はいらないね」

「それとこれとは別だ。たき火は、心も温めてくれるんだ。たき火の前でくつろぐひとときは、冒険者に活力をくれる」

「急にレカン、雄弁になっちゃったね」

「雄弁、とはむずかしい言葉を使うな。それも王都での修業の成果か?」

「まあね」

「自分の呼び方が、あたい、に戻ってるぞ。話し方も昔のようだ」

「迷宮のなかだもん」

「ふふ」

「父上、レカン師匠とエダ姉さんは、ほんとに仲がいいですね。婚約なさってからはなおさらです」

「え? レカン殿はエダさんと婚約したのか?」

「はい! レカン師匠はノーマさんとも婚約したそうです」

「それはおめでとうございます」

「二人と婚約だと?」

「はい。ウイーお姉さん」

汚物をみるような目で、ウイーがレカンをみた。

複数の女性を妻にできるのは貴族だけだ。だが、それは正式の結婚はできないというだけのことであり、金や力のある者が複数の女性を事実上の妻にすることは、よくある。レカンもそういう手合いだと、ウイーは思ったのだろう。

ジザは意外な健啖さをみせて、にこにこしながら、ぱくぱくと竜肉を平らげていった。

「竜肉は、まだあるのかい、レカンちゃん」

「丸一頭分ある」

「ひょっひょ。それは助かる。わしもたっぷりの保存食を持ってはきたが、それだけじゃ味気ないからのう」

「野菜もありますよ」

「ほう! エダちゃんは気が利くのう。よいお嫁さんになれるぞい」

「レカンに任せてると、お肉ばっかりになっちゃいますから」