軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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翌朝、一度迷宮の受付に顔を出したが、まだ依頼を引き受けるパーティーはみつかっていなかった。

町に出て、昨日トルーダから紹介された装具屋に行った。エダとユリウスは別れて、それぞれ町を散策することになった。

この装具屋は、指輪と首飾りが主力商品だということだった。護符や腕輪や足輪なども置いてある。みせてもらった品は、ことごとく恩寵品だった。

魔法防御の指輪も売っていた。〈ランティの指輪〉という品で、装着者が魔法攻撃を受けると指輪が魔力を吸い取ってくれるため、多少のダメージは受けるが、相当に強力な魔法攻撃でも一撃で死ぬことはないという。ただし指輪は壊れてしまうため、使い捨てである。

一個金貨一枚半。

(これはいい)

(エダとユリウスに装着させよう)

「とりあえず十個くれ」

「え。お客さん。今この店には五個しかないんだ」

「なら五個くれ」

「あいよ。毎度」

面白そうな品がたくさんあったが、ぜひ欲しいというような品はあまりなかった。

昼食をすませたあと、トルーダの店に行った。

「あ、レカン。ようこそ」

「昨日はごちそうになった」

「こちらこそ、またいいものをもらって恐縮した」

稼がせてもらった礼にと、トルーダが料理店の料金を払ったので、レカンは竜肉の塊をもう一つ、トルーダに進呈したのだ。

「ちょっと聞きたいことがある」

「うん? ああ、いいとも、奥に来てもらえるか」

トルーダは察しのいい男で、レカンが人に聞かれたくない話をしたがっていると気がついて、レカンを奥まった小部屋に案内し、人払いをした。

「さて、聞きたいこととは何だろうかな」

「昨日、杖屋が使った魔法だ。たしか、ジラードという呪文だった。あれはどういう意味の言葉なんだ。それと、そのことを聞いてはいけないのはなぜなんだ」

「ああ、そのことか」

トルーダは椅子にもたれかかってしばらく目を閉じた。それから目を開いて言った。

「古代語魔法だよ。よく知らないが、たぶんジラードというのは、〈解除〉とか何とか、そういう意味じゃないかと思う」

「古代語魔法? それは何だ?」

「今となってはジザ導師だけが知っている古代の魔法だ。いや、私にしても、詳しいことは知らないんだが、そういうものがあるということは、この町の住人である程度耳のいい者なら誰でも知っている」

「ジザ導師とあの店主だけが使えるのか」

「あ、いや、そうじゃない。古代語を言語としてある程度習得していて、いくつもの古代語魔法を操るのはジザ導師だけだが、特定の呪文を伝授された者はそれなりにいるんだ」

トルーダは、専門外のことで、ほんの聞きかじりだがと言いながら、それなりに詳しく教えてくれた。

かつて魔法は古代語魔法しかなかった。これは強力な魔法で、ほとんどの場合、準備詠唱もなく、強い効果を現すことができた。ただし習得は非常にむずかしい。そもそもある程度以上の魔力を持っている者が珍しいし、そのなかでさらに古代語魔法を習得できる者はきわめて少数だった。伝承者は減少するばかりだったが、ある時期から現代語魔法と呼ばれるものが編み出された。その集大成を行ったといわれるのがマザーラ・ウェデパシャと呼ばれる大魔法使いであり、この人物は長命種であったといわれている。

現代語魔法は、古代語魔法に比べれば威力も低く、自由度も低いが、適性がある者ならほぼ確実に習得が可能であり、ここに魔法は息を吹き返した。

今日の魔法はすべてこの現代語魔法の流れを汲むものであり、準備詠唱も発動呪文も現代語だ。古代語魔法は絶えてしまい、そんなものがあったことさえ、この魔法都市以外ではほとんど忘れ去られている。

そのなかで、この国でただ一人古代語魔法を使える人物が、ジザ導師である。ジザ導師の母も祖母も古代語魔法の使い手であり、この祖母なる魔法使いエラ・モルフェスが、パルシモ魔法研究所の設立者にして初代導師なのである。

ジザも母も祖母も、現代語魔法は弟子たちに教えたが、古代語魔法は誰にも教えなかった。魔法研究所の理事会は、百年近くにわたって古代語魔法の伝授を要請しているが、彼女らはその要請を退け続けている。

もっともこれについては、別の噂もある。彼女らは古代語魔法を伝授すべく、その適性がある者を探し続けているが、今日に至るまでみつからないのだという噂だ。

事実、彼女らから断片的な古代語魔法の教授を受けた者は存在する。だがそれはごく断片的な伝授であり、教わった者は、たった一つか二つの毛色の変わった魔法が使えるだけだ。強力無比な攻撃呪文こそが古代語魔法の神髄であるのに、攻撃呪文の伝授を受けた者はいないのだ。

魔法研究所でも、あれこれ方途は講じている。古代語の再現はその一つだ。言語としての古代語を理解することが、古代語魔法復活の一助になることはまちがいない。だが失われて久しい古代語の復元は困難を極める。ジザ導師にしても、言語としての古代語を完全に習得しているわけではないともいわれるし、この点については協力的でないという噂がある。

「断片的な古代語魔法を使えるようになった者は、研究所の理事会にそれを報告して、少なくとも誰か一人の上級研究員に、その魔法を教える義務があるという話だ」

「それは教えられるのか」

「めったに覚えられんそうだ」

「現代語魔法でも適性がなければ習得できん」

「そういうことだ。だが古代語魔法の場合、適性持ちがほんとに少ないらしい」