軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13

それほど待つでもなく呼び出しがかかった。

「こちらのパーティーは〈 小心者(クワントロ) 〉といいます。普段は五十階層台の探索をしているんですが、〈 虹石(ウィラード) 〉からの依頼を聞いて、本人にあってみたいとのことです」

そこには五人の探索者がいた。

うち二人は男で、軽鎧を着けている。

全員魔法使いだ。魔力もそこそこある。

軽鎧を着けた二人は一見物理職にみえるが、そうではないことはレカンの目には一目瞭然だ。剣や槍の腕が立つ人間の気配ではない。

実のところ、この迷宮で会うパーティーのほとんどが、似たような編成なのだ。これでどう戦うのか、レカンは不思議でしかたがなかった。また、明らかに魔法使いとわかる姿をした女性たちは杖を持っているが、軽鎧の男二人は武器を持っていないのも不思議だった。

軽鎧を着けた男の一人が話しかけてきた。

「あなたがレカンか」

「ああ」

「私はトルーダという探索者だ。〈クワントロ〉というパーティーのリーダーをしている。今回は五日間探索をするつもりだったんだが、あなたの依頼を聞いて、引き受けてもいい気になった。ジザ導師の推薦状に驚いたものでね」

「そうか」

「さすがの面構えだな。そしてすごい装備だ。しかもあなたは魔法剣士なんだな?」

「ああ」

「ちょ、ちょっと、トルーダ」

「うん? どうしたのだ、フィーナ」

「このレカンて人、ものすごい魔力量だよ。それこそ導師様がたに匹敵するぐらい」

「なんだと? ほう、そこまでか」

「メンバーを紹介しておこう。これがエダ。魔法攻撃のできる弓を使う。〈回復〉も使える。魔力量は豊富だ」

「エダです。よろしくお願いします」

「これはなんて素敵な娘さんだ。エダさん。よろしく」

「こちらはユリウス。剣士だ」

「ユリウスです」

「よろしく。よし、レカン。とにかくまず一階層を一緒に探索してみようじゃないか。つまり一階層分だけ依頼を受ける。そのあとのことはそのあと考える。それでどうだ」

「それでいい」

「じゃあレカンと私が一緒の洞窟に入る。エダとユリウスが一緒に入ってくれ」

「わかった」

一行は迷宮に移動し、地上階層から一階層に転移し、洞窟に入った。

いきなりレカンは敵を〈炎槍〉で消し飛ばした。

洞窟の出口でメンバー全員が集合すると、トルーダが〈クワントロ〉のメンバーに話しかけた。

「レカンは、そりゃあまあすさまじかった。入り口に入るなりそこから準備詠唱もなく〈炎槍〉を放って魔獣を消滅させたんだがな。その〈炎槍〉の色は青白く、私の腕より太く、目にもとまらない速度だった」

「えっ? 入り口のところから撃ったのに、魔狼はかわさなかったの? というか、〈炎槍〉があの距離を届くものなの?」

「フィーナ。あれはかわせない。君もみればわかる」

「ふうーん」

次に二階層を探索した。トルーダは、エダと同じ洞窟に入った。

次に三階層を探索した。トルーダは、ユリウスと同じ洞窟に入った。

「三人とも実力は確かだ。〈クワントロ〉は〈ウィラード〉を三十階層まで運ぶ依頼を正式に引き受ける。それで組み合わせなんだが、レカンは一人で進んでもらい、エダとユリウスが一緒と、私たち五人で三つの洞窟を引き受けるということでいいか?」

「それでいい」

「私たちは五日しか迷宮探索ができない。五日間で進むことができた階層で、依頼は終わりということにしてくれ」

「わかった」

「じゃあ、五日間、よろしく」

13

五階層の探索が終了して全員が集合したとき、トルーダが言った。

「さて、それじゃいったん出ようか」

「出る? 出て何をするんだ」

「昼食だよ。休憩所に帰って食事をするんだ」

「ああ、なるほど。あんたたちはいつもそうしているんだな。だがどうだろう。今日は迷宮のなかで昼食を取らないか?」

「といっても食事を買ってきていないが」

「それは心配いらない。ここはオレたちに任せてみてくれないか」

「あ、ああ。みんなもそれでいいか?」

〈クワントロ〉のメンバーが、不思議そうな顔をしながらも一応同意した。

レカンは〈収納〉から薪を出して火を付けると、すばやく肉と野菜を焼き始めた。

エダも〈自在箱〉から鍋を取り出し、レカンには名前もわからないいくつもの野菜を取り出してあざやかな手並みでスープを作り始めた。今までレカンがみたことのない大きな鍋だ。いつの間にか買ってあったようだ。人数に足りるだけの椀も用意してあった。

(準備のいいことだな)

「さあ。食べてくれ」

「あ、ああ。これは恐れ入ったなあ。よその迷宮では、みんなこんなふうにしているのか?」

「ああ、そうだ」

「レカン、それ、嘘だよね。トルーダさん、だまされちゃだめですよ」

一同は食事にかかった。

「うまい!」

「おいしい!」

「素晴らしいな!」

「なんていいお味」

エダの作ったスープは本当においしかった。

「エダ」

「なあに、レカン」

「このスープの作り方、どこで覚えた」

「えへへ。王都で」

ということは、ラインザッツ家の料理人に教わったのだろう。たぶんこういう野営での料理を想定した手早くうまい料理の作り方を、エダは学んできたのだ。

(なるほどな)

(ヘレスはエダにそういうことを教えたかったのか)

(あと作法や言葉遣いも教わったようだな)

(作法や言葉遣いなんか何の役にも立たんが)

(料理を教わったのはいい)

串焼きをほおばりながら、トルーダがレカンに話しかけた。

「それにしても先ほど薪に火を着けたやり方は見事だった」

「うん?」

「私もあれはやったことがあるが、やたら強い〈着火〉を使うと外側が焦げすぎてしまう。ところがあなたは、たくさんの薪に同時に適度な火を着けた。絶妙な魔力のコントロールだった」

「そうか」

「ところで、私たちはあまり長期戦は戦えない。今日はせいぜい七階層か八階層までしか進めないだろう」

「ふむ。青ポーションがあればもう少し進めるか?」

「青ポーションも持っていないことはないが、緊急用だな。普段からそんなものを使っていたら稼ぎにならないよ」

「では、これを提供しよう」

レカンは五つの中青ポーションを差し出した。

「おい、本気か?」

「もちろんだ。受け取ってもらえるか」

「中ポーションではもったいない。小ポーションでいい」

「小ポーションは使わないから売り払ってしまった」

「……君がどういう冒険者なのか、やっとわかりかけてきた。この青ポーションは無料なんだな?」

「もちろんだ」

「これを受け取ったからといって、無理はしないぞ」

「当然だ。あんたが今日はここまでだといった階層で今日の探索は終わりだ。それが七階層であってもオレは文句を言わん。あんたの判断を信頼する」

「みんなもそれでいいか?」

全員がうなずくのを確認して、トルーダは中青ポーション五個を受け取り、魔法職のメンバーに渡した。メンバーはそれを飲まずにしまった。必要があれば手持ちの小青ポーションを飲むのだろう。