軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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迷宮を出ると、まだ夕方にもならない時刻だった。

「オレは寄っていくところがある。お前たちは先に帰れ」

「師匠。道がわかりません」

「あ、大丈夫だよ、ユリウス君。あたい、わかるから」

「エダ姉さん、すごいです」

「えへへ」

「風呂を沸かしてもらっておいてくれ。帰ったらすぐ風呂に入りたい」

「うん。わかったよ」

レカンは〈錦嶺館〉の受付に行った。

「これはレカン様。ようこそお越しくださいました」

「大青ポーションを買えるか」

「はい。お一人一日十個までとなっております」

一瞬けちくさいなと思ったが、普通の魔法使いはせいぜい一日に二個しか使わないだろう。普通で考えれば大青ポーションを十個も売ってくれるというのは破格だ。

「じゃあ十個もらおう。それから、明日から十日間、毎日十個買う。かまわないな」

「承知いたしました」

「ただし毎日は取りに来られないかもしれないから、取り置いてくれ」

「承知いたしました」

「では百十個分の料金を払っておく」

「ありがとうございます」

料金を払ったあと、ふと思い出した。

「そういえば、プジョーとかいう薬師の魔力回復薬が買えるんだったかな」

「はい。ピジョー師の魔力回復薬でございますね。お一人一日三個までとなっております」

「じゃあ三個もらう。それと、明日から十日間三個ずつだ」

「承知いたしました」

岩棚亭の風呂は素晴らしかった。実のところ、風呂だけは〈錦嶺館〉のほうがいい。だが風呂上がりには岩棚亭の料理を食いたい。結局全体としては岩棚亭のほうが居心地がいいのだ。

レカンが風呂から上がると、イライザが待っていた。

「レカン殿! いったい何がどうなっているのだ!」

「落ち着け、イライザ。ナーク、酒だ。それと何かつまむものを」

「あいよ」

レカンは燻し酒をちびちび飲みながら、イライザの質問に答えた。

何日間か迷宮で過ごしたあとの酒は格別だ。体の隅々にまでしみ込んでゆき、生きているという実感を深く味わわせてくれる。

イライザは、求婚決闘の顛末について聞いてきたので、知っているところを話した。ただし、〈白雪花の姫〉のことについては話さなかった。

「ちょっと待っていただきたい。ではレカン殿は、ラインザッツ家のヘレス姫とも何かご関係がおありなのか?」

「ああ。オレはここにいるエダと、アリオスとでニーナエ迷宮を攻略したが、そのときヘレスも一緒だった」

「うん。ヘレスさんは、あたいたち〈ウィラード〉の一員なんです」

「レカン殿と同じパーティーだと。そうか、そうだったのか。女性の身でニーナエを踏破などできるわけがないと思っていたが、そうか、レカン殿のお力を借りてのことだったのか」

「それで決闘はいつになったんだ?」

「今月の二十日だ」

「ほう。早いな」

「だからレカン殿には、すぐに領主邸にお移りいただきたい」

「断る」

「いったい、いつ移っていただけるのだ」

「そこらはノーマと相談してからだな」

「あなたの婚約者だという姫だな。その姫のことを詳しく聞かせていただきたい」

「どうしてそんなことを聞きたがる」

「迷宮事務統括官として知っておかねばならないからだ」

説明を面倒がるレカンに代わって、エダがレカンとノーマの関係を説明した。

すると今度はエダに興味を持ったようで、あれこれとエダのことを聞いてきた。

イライザは夕食を注文し、ワインを飲んだ。どういうわけかエダと意気投合して二人で話し込み始めたので、レカンは〈グリンダム〉の三人といろいろ話をした。

翌日、レカンはエダとユリウスを連れて、〈花爛街〉で昼食をとった。エダはユリウスを連れて買い物をしたいというので、レカンは一人街をぶらついた。

通りは多くの人であふれている。大きな荷物を背負った行商人が、すれちがった人にぶつかって、レカンの目の前で転倒した。倒れるとき送ってきた目線が気になったので、レカンは倒れた男の前でしゃがんだ。男は顔を起こすと、にこにこしながら小声でしゃべった。

「決闘は、二十日の針魚の三刻と決まりました。ノーマ様は十八日に到着されます。十八日の昼からは宿にいてください」

「わかった」

いくつかの店をのぞいて〈岩棚亭〉に帰った。

今日が八の月の八日だから、十八日までは十日間もある。

(どうしたものかな)

もともと今回の迷宮探索は、ユリウスの体力を底上げするのが主な目的だ。そうすれば本格的な修業ができると思ったからなのだが、その目的はすでに達成したといえる。

だが、時間がある。今のレカンとエダとユリウスなら、九十階層台は突破できる。そして百階層台の敵こそ、ユリウスの修業相手にふさわしい。

夕方になってエダとユリウスが帰ってきたとき、レカンは言った。

「明日と明後日は休養日だ。そのあと七日ほど迷宮に戻る」

「はいっ。師匠」

「うん。わかった」

その夜もイライザはやって来た。

「そういえばあんたは、パルシモの魔法騎士とやらに、ずいぶんこだわりがあるようだったな」

「パルシモは私の母の実家なのだ。幼いころから魔法騎士の素晴らしさを聞かされてきた。私は女で体格も男性には劣るし力は比べようもない。そんな私でも魔法が使えれば強くなれるのではないかとあこがれた」

「パルシモからツボルトに騎士派遣の依頼があったのか?」

「そんなことをお話ししたかな。うむ。ただしそれは魔力のある騎士に限るということだったのだ。だから派遣できなかった」

「魔力のある騎士?」

「パルシモ迷宮は、魔力を持つ者しか入れない」

「ほう」

レカンには魔力がある。エダにもある。そしてユリウスにも魔力がある。

「魔力があればいいんだな? 魔法は使えなくても」

「魔法は使えなくてもいいと聞いている」

(おもしろそうだな)

(決闘が終わったらパルシモに行くか)