軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「まずオレが部屋に入って敵の注意を引きつける。エダは一呼吸置いて入れ。〈赤肌〉は、左側の奥に五体いるから倒してくれ」

「うん」

「ただし、もし敵の攻撃を受けたら、すぐに部屋を出て自分に〈浄化〉をかけるんだ。ユリウスはエダのすぐあとに入れ。そしてもしエダが敵の攻撃を受けて怪我をしたら、エダをすぐに部屋から連れ出せ」

「はいっ、師匠」

「その場合にはオレも部屋を出る。怪我を治療して戦闘再開だ」

「うん、わかった」

レカンは軽く魔力を練って準備を整えた。

エダも〈浄化〉発動の準備をしている。

レカンは部屋に飛び込んだ。

「〈火矢〉!」

二十本ほどの〈火矢〉が魔獣たちに突き刺さる。もちろんこの階層の白幽鬼には、〈火矢〉などで深手は与えられない。だが〈火矢〉の発動速度は〈雷撃〉よりずっと速いのだ。確実に先手がとれる。

「〈浄化〉〈浄化〉〈浄化〉〈浄化〉〈浄化〉」

すさまじい〈浄化〉五連発だ。だがそのうち一発は〈黒肌〉の腕に当たって〈黒肌〉を消滅させた。

「あっ。〈浄化〉〈浄化〉〈浄化〉〈浄化〉〈浄化〉」

〈赤肌〉一体を討ち漏らしたエダは、あわててまたも〈浄化〉を五連発した。

レカンが首を飛ばした〈黒肌〉も、目の前で消えた。

ユリウスが足を斬って、倒れるところを狙って首を落とそうとした〈黒肌〉も、目の前で消えた。

結局、十体の白幽鬼は、すべてエダの〈浄化〉で消滅した。

レカンとユリウスは、呆然として立ち尽くした。

「あっ。ごめん。撃ちすぎちゃった」

一つわかったことがある。

〈浄化〉は白幽鬼の死体にも有効だということだ。

エダには魔力回復薬を渡し、大青ポーションも与えて魔力を回復させた。

九十階層で別の部屋に入った。またも通路で八人組のパーティーに遭遇した。そのパーティーの冒険者は、幽霊に出会ったような目でレカンたちをみおくった。

今度はエダが五体の〈赤肌〉を倒し、レカンが三体の〈黒肌〉を倒し、ユリウスが二体の〈黒肌〉を倒した。

別の部屋に入った。レカンが三体目の〈黒肌〉に攻撃したとき、首を飛ばしそこねたところをユリウスが倒した。

レカンが以前この階層に来たときは、たしか〈ラスクの剣〉ではうまく戦えず、〈オドの剣〉に持ち替えたはずだ。今は〈ラスクの剣〉で充分戦えるが、体勢によっては一撃で倒せないこともある。

ユリウスは、ずいぶん体格差のある敵であるのに、うまく首を落としている。これは剣の性能が素晴らしいことと、その剣の切れ味を充分に引き出すわざをユリウスが持っているからだ。切れ味という一点においては、ユリウスは突出した力を持っている。

別の部屋に入った。今度はレカンが三体の〈黒肌〉を倒し、ユリウスが二体の〈黒肌〉を倒した。

「ふむ。ユリウス。稽古をつけてやる」

「はいっ。ありがとうございます、師匠」

空き部屋に入ってユリウスと剣を交えた。

(ほう)

(戦い方に粘りが出てきたな)

速度はアリオスほどではないが、わざの美しさはユリウスが上かもしれない。わざとわざとのつなぎが断然よくなった。逆にいえばアリオスの剣は、わざとわざとの切れ目がみえないほど、よくこなれていたのだろう。

そして一撃一撃の重さがみちがえるほど向上した。

(こいつはこのまま伸びるのがいい)

(奇をてらった戦い方なんぞ教えないほうがいいな)

「よし。ここまで」

「はあっ。はあっ。はあっ。はあっ。あり、ありがとうござい、ましたっ」

「うん。迷宮を出るぞ。今日は宿でぐっすり眠れ」

「はいっ」

「やった。あの宿の料理おいしいもんね」

「野菜がうまいな」

「えっ? レカンがお野菜を?」

「いつも食べてるだろうが」

「でもお肉のほうが好きだよね」

「あの宿は別なんだ」

レカンが迷宮に入った日、迷宮事務統括官イライザ・ノーツは、そのことを知った。そこで夕刻、〈ラフィンの岩棚亭〉に護衛の騎士を連れて出かけた。やはり昨夜はここで泊まったのだ。そして長期宿泊の予約をしている。

ずいぶん遅くまで待ったが、レカンは帰ってこなかった。

翌日、入り口の衛兵たちに命令が伝えられた。

「ツボルト迷宮初踏破者レカンが迷宮から出てきたら、ただちに管理事務所に連絡すること」

そして密偵に命令が出た。〈ラフィンの岩棚亭〉を随時みはり、レカンが帰還したら報告するという仕事だ。

だが、翌日も、そのまた翌日も、レカン発見の報はなかった。

ツボルト迷宮を探索する冒険者は、日帰りすることが多い。他の迷宮ではそうでないことも知ってはいるが、やはりイライザの感覚としては、迷宮で寝るというのは異常な行為だ。

その異常さが、三日続いた。

レカンほどの冒険者に間違いが起きるはずはない。しかし迷宮とは常に予想外のことが起きる場所であり、どんな腕利き冒険者もある日突然命を落とすことはある。まして今回レカンは、年端も行かないこども二人を連れていたという。そもそもこども連れで迷宮に挑むということ自体が奇妙だ。

いったい何があったのか。

レカンはどうなっているのか。

焦燥に包まれていた四日目、伯父侯爵のもとにギド侯爵家とスマーク侯爵家から使いがあった。

スマーク侯爵家とギド侯爵家が、それぞれ求婚決闘なるものをするのだという。そしてスマーク侯爵家の代表者と戦う相手の婚約者で代理人が、ヴォーカの冒険者レカンという人物なのだという。

ツボルト侯爵には、決闘場所を提供し、かつその見届け人を務めてもらいたいという依頼だった。

イライザは、もはや訳がわからず、ひどく混乱した。訳もわからず、やたらと腹立たしかった。たまらず翌日夕刻〈ラフィンの岩棚亭〉に行って食事をした。レカンはやはり帰ってこなかったが、岩棚亭の食事を味わっているうちに心は少し落ち着いた。