軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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レカンが帰ったあと、フィンディンはノーマの執務室に呼ばれた。

「フィンディン。君には一足先に王都に向かってもらう」

「はい」

「ペンタロス殿に一刻も早く私の手紙を渡してもらう。できればペンタロス殿が王都に帰り着くより前に君が王都に着いて、待ち構えるのが望ましい。交渉開始は早ければ早いほどいい」

「はい」

それだけ言うなり、ノーマは机に向かって手紙を書き始めた。

フィンディンは、じっとノーマの姿をみた。

ノーマがレカンに語った内容には、ひと言の嘘もなかった。ただし、事実を全部伝えたわけでもない。

求婚決闘の話がまとまったあと、ジンガーが部屋に呼ばれ、ペンタロスとソルスギアとしばらく話を交わした。ペンタロスの側近ペンヴィク・フローダとソルスギアの側近パンコタ・マゾーも紹介され話に加わった。

しばらく話をしたあとで、ペンタロスはこう言った。

「いやあ、うちの切り込み隊長ヴィスカーとジンガー殿の戦いをみてみたかったんだが、残念だな」

ノーマは柔らかな顔でペンタロスをみたが、言葉は発しなかった。

「ノーマ姫の諸家系統譜は書き換えられていないんだろう。ならばワズロフ家の筆頭騎士であるジンガー殿は、ノーマ姫の家臣ではない。残念ながら代理人にはなれんな」

これを聞いてフィンディンは奇異に感じた。

諸家系統譜が書き換えられなくても、ノーマがワズロフ家のサースフリーの娘であるということは動かない。つまりジンガーにとって主筋にあたる。ノーマがワズロフ家の人間であるかどうかはワズロフ家当主が決めることだ。そういう筋からいえば、ジンガーがノーマの代理人になれないという理屈には無理がある。

だがノーマはペンタロスの言い分を否定しなかった。

「そうかもしれませんね。私としては、諸家系統譜の書き換えを急ぐよう、宰相閣下に要請するばかりです」

「うまくいくといいな」

そのとき、ペンヴィク・フローダが席を外した。

(宰相府に走るつもりだな)

(諸家系統譜の書き換えをしないよう圧力をかけるんだろう)

フィンディンでさえそれに気づいたのだから、明敏なノーマが気づかないわけはない。だが、不可解なことに、ノーマはフィンディンに何の指示もしようとせず、ペンタロスとだらだら世間話をしている。

フィンディンは焦りを覚えた。

(もしや指示を待っていたのではだめなのか?)

(自分で考えて動けということなのか?)

フィンディンは、さりげなくその場から立ち去りかけた。宰相府に走らなくてはならない。

「フィンディン。どこに行くのかな」

しかしそんなフィンディンをノーマは呼び止めた。

「この場で出る話を漏らさず聞いて覚えておくのが君の仕事だ。そしてしかるべきときにしかるべき助言を私に与えてくれなくては困る」

「は、はい」

結局このとき、ノーマは何の対処もしなかった。

そして七の月の三十日に、この〈雪花亭〉で再会し、婚約決闘の詳細を決定する約束が結ばれ、会食は終了した。

その後二日間ノーマはワズロフ家の王都屋敷に滞在したが、一度フジスルを宰相府に派遣した以外、これといった動きをみせなかった。

もちろんフジスルの要求を宰相はのらりくらりとかわし、諸家系統譜の書き換えは約束させたものの、それがいつのことになるかはまったくわからなかった。

それどころか、求婚決闘の内容に宰相府は直接に関わらないが、ゴンクール家の後継者となったノーマはゴンクール家に所属しているというフォートス家の主張は筋が通っているといわざるを得ないというのが宰相の言い分だった。

三十七日にノーマはマシャジャインに帰還した。

いきさつを知ったマンフリーは怒りをみせたが、ノーマは落ち着いていた。

「マンフリー様。相手は自分たちの思惑通りに事が進んでいると思っています。そのまま、そう思わせておきましょう」

「ノーマ。ゴンクール家には強い騎士がいるのか?」

「いません」

「ではわが家から騎士を出そう。剣の腕なら全盛期のジンガーに劣らない騎士が何人かいる」

「それは通らないでしょう」

「そんな馬鹿な話があるか。そもそもフォートス家がわが家に頭を下げて妻乞いをするなら、あなたの気持ち次第でそれに対処してやってもいいが、決闘に負けて姫を奪われるなどということがあってはならん。あなたはどうしてそんなに落ち着いていられるのだ」

「臣下でなくても身内でもよいのです」

「身内? あなたに身内など」

「実は私には婚約者がいるのです」

「なにっ。それは誰だ」

「レカンという冒険者です」

「ええっ?」

驚きの声を発したのはエダだ。皆がエダのほうをみた。

「れ、レカンがノーマさんの婚約者? い、いつのまに?」

「エダ。そういうことにしてもらうんだよ。そうすれば私の身内として決闘に出てもらうことができる」

「あ、そういうことか」

「待て待て。レカン? それはいったい誰だ? エダ殿の知り合いなのか?」

「知り合いどころか、ほら、あたい、ヘレスさんと一緒にニーナエ迷宮を踏破しましたよね」

「うむ。驚くべきことだ」

「あたいたちのパーティーは、〈ウィラード〉っていうんですけれど、そのリーダーがレカンなんです」

「なにっ。ニーナエの踏破者か。しかもパーティーリーダーが務まるほどの人物なのか。ふむ」

「実は、私の所属がゴンクール家であるかぎり、婚約者である冒険者レカンを代理人にするとペンタロス様には伝えてあり、了解を得ています」

「そうなのか。ずいぶん手回しがいいな。待てよ。レカンとは、もしや薬師レカンのことか」

「レカンは薬師でもあります」

マンフリーは薬師レカンの名を知っているようだ。薬聖訪問団は帰途にこの町で宿泊したのだから、アーマミール神官から、あるいはスカラベルその人から、レカンの名を聞いていたことは、充分にあり得る。

むずかしい顔をしているマンフリーに、ジンガーが話しかけた。

「マンフリー様」

「うん? どうかしたのかね、ジンガー」

「私はレカン殿と剣を交えたことがあります」

「なにっ」