軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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それまでソルスギアとヘレスは、黙ってペンタロスとノーマの会話をみまもっていたが、ここでソルスギアがペンタロスの言葉を引き取るように言葉を発した。

「ヘレス姫。あなたの叔父上を悪く言うようですまない。だが正直、私たち海の男からすると、ああいう人種は苦手なのです」

「ソルスギア殿。謝っていただくことは何もない。今のノーマの話を聞いて、私も怒りがこみ上げてきたところなのだ」

「ははは。あなたはまるで女海賊のようにきっぷがいい人だ。そういえば、あなたが王家の姫君の騎士となるについては、宰相殿といささかのいきさつがあったと聞いた」

「そうなのだ。叔父上ときたら、私にやたらと結婚を勧め、私が騎士の道を諦めないと知るや、しかるべき迷宮を踏破したら騎士に推挙すると言い出した。その裏で王都の冒険者協会に手を回して、私が有力な冒険者の協力を受けられないようにしてしまったのだ」

「それだ。聞いた話が信じられないのだが、あなたはニーナエ迷宮を踏破されたのだという。その証しの女王蜘蛛の頭部と足が、今や後宮の入り口に据えられて、悪心を持つ者ににらみを利かせているとか」

それからしばらく一同は、ヘレスの迷宮探索譚に耳を傾けた。その話のなかで、ヘレスは有力な冒険者三人と出会って共に迷宮を踏破したと語ったが、その三人の名は語らなかった。

(どうしてレカンやエダの名前を挙げないのだろう)

(アリオスという人の名も)

(いや、待てよ。そうか)

たぶんその人々の名は、軽々しく語りたくないのだ。それだけニーナエでの体験は、ヘレスにとって特別なものだったのだ。

「なんということだ。おい、ソルス。まるで〈紅刃姫ニコラ〉のような姫じゃないか」

「私もそう思ってたんだ、タロス。こんな女性は陸ではみたこともない」

〈紅刃姫ニコラ〉というのは、ザカ王国ができるずっと前に活躍した〈海賊王ダロス〉の妻だ。ダロスはニコラに恋をして何度も求婚したが、ニコラはそのたびにダロスをたたきのめした。それでもついにダロスの執念がみのり、奇跡的な勝利を得てニコラを妻とした。その後広大な海と海岸を支配し〈海賊王〉と呼ばれるようになったダロスだが、浮気癖がひどく、最後には怒ったニコラに首を斬り落とされる。

この〈紅刃姫ニコラ〉こそ、ギドやスマークにおける最高の女性なのだ。ちなみに、ギド侯爵もスマーク侯爵も、自家こそがダロスとニコラの末裔だと言い張っている。この話は、ギド侯爵家やスマーク侯爵家の気質を知る好個の例であるとフジスルがノーマに教えてくれた。

二人はあこがれの目でヘレスをみている。

「〈白雪花の姫〉も、このようにりりしい姫だったのかなあ」

「きっとそうだ。俺やお前なんかじゃ、あっというまに首を落とされてしまうぞ」

ペンタロスとソルスギアは、愉快そうに笑い声を上げた。

この二人の感覚は、ちょっとおかしい。

たぶんヘレスが鎧姿で現れたのは、自分が淑女などではないところをみせつけて、こんな女は妻にはできないと思わせるためだ。だがその計略は裏目に出たようだ。

あのたおやかなローレシア姫に恋い焦がれるような相手なら、鎧姿で見合いの席に現れるような女に興味を持つわけがないと、普通なら考える。だがこの男たちは、あの絵姿から、どういうわけか〈紅刃姫ニコラ〉の面影を嗅ぎ取ってしまったのだろうか。

(待てよ)

(ローレシア姫がたおやかな姫だなどと誰が言った)

(私は絵姿をみて勝手にそう思っているだけのことではないのか)

(〈白雪花の姫〉などという呼び名から勝手に想像しているだけではないのか)

(この男たちの想像のほうが正しいわけではないと何をもって言える?)

「そういえばノーマ姫」

「はい?」

「宰相狸のやつは、こともあろうにこの会食の席に部下を同席させたいなどとぬかしおったのだ」

「ああ。私もそう言われましたよ」

「なに? あのじじいは、あなたにどう言ったのだ?」

「話が終わって私が帰ろうとしたとき、扉の手前で呼び止めてこうおっしゃいました。『ああ、それから、明日の会食は王家の庭園で行われるのだから、宰相府の人間が目立たぬよう控えていることは了解しておいていただきたい。むろんこのことについては、ギド、スマーク両侯爵家にも使いを出してある』」

「くそじじいめ。それで? それであなたは何と答えたのだ」

「私はワズロフ家の家宰にこう言いました。『両侯爵家に使いを出し、明日の会食に宰相府の人間を立ち会わせたいと宰相殿が申し出ておられるが、これを受諾すべきかどうかを尋ねてもらえますか。ああ、それと、その件について両侯爵家に使いを出したと宰相殿がおっしゃっているが、その使いがちゃんと到着しているかどうか、到着しているとしてどう回答なさったかも確認していただきたい。私はここで待ちます』」

「なに? なるほど。こりゃ、まいった。はははははは。それで宰相狸はどうしたんだ?」

「『その使いは必要ない。私が悪かった。今の言葉は取り消す』とおっしゃいました」