軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「やめておきます。そんな相手と恩寵なしで戦えると考えるほどうぬぼれてはいません」

「ほう?」

アリオスの強さはすさまじい。しかもその強さは、鍛えあげた剣の技術と武人としての心と戦闘の勘によるものだ。おそらく一族の歴史で積み上げられた技術と知識の集積が、その土台になっている。アリオスならあの主とも戦えるような気もする。だが本人が戦わないというのなら、それまでの話だ。

「でも、そんな敵と戦って、しかも勝てたなんて、僥倖でしたね。またとない経験を積んだわけですね」

「だが得られたのが金ポーションというのが納得いかん。ツボルト迷宮の最下層の魔獣なんだぞ。〈剣の迷宮〉の主なんだぞ」

「はは。レカン殿」

「何だ」

「レカン殿にとっては、ゾルタンさんが迷宮の主だったんじゃないですかね」

「なに? いや、しかし。ふむ」

そうかもしれない、とレカンは思った。

少なくともレカンにとっては、ゾルタンこそがまさに迷宮の主だった。

その強さにおいて。存在感において。そして報酬において。

そうではないか。

ゾルタンがレカンに何を残してくれたか。

まずは、またとない戦闘経験を与えてくれた。

そしてゾルタンの強さを吸ってレカンは新たな領域に進んだ。

さらに〈不死王の指輪〉を譲ってくれた。

大迷宮の踏破にふさわしい報酬だといわねばならない。

アリオスがぽつりとつぶやいた。

「蝙蝠魔人に骸骨魔王か」

「その名でオレを呼ぶな」

心地よい疲労感と達成感がレカンを包んでいた。

二人はツボルト迷宮を踏破したのだ。

のんびりしたいところだったが、そうはいかなかった。

ドアが乱暴に開かれ、ブルスカが飛び込んできた。

「レカン! め、迷宮が。ツボルト迷宮が」

レカンは黙ったままでブルスカの言葉の続きを待った。

「あんた、まさか、もしかして」

「ああ」

「と、踏破したのか?」

「ああ」

ブルスカは、ぱくぱくと口を開け閉めして、両の腕を奇妙な動作でぐるぐる回した。何がしたいのか自分でもわからないのだろう。

「と、とにかく来てくれ」

「どこに」

「迷宮広場だよ!」

正直出かけるのは面倒だったが、ブルスカは強硬だった。

ブルスカに引っ張られてレカンは迷宮広場に向かった。そこには信じられないほどたくさんの冒険者がいた。広い空間が文字通り人で埋め尽くされている。

ザカ王国建国以来、ツボルト迷宮が踏破されたことはない。踏破された迷宮からは魔獣が消えうせてしまい、文字通り休眠に入る。ここの冒険者たちは、今まで起こったことがなく、これからも起こるはずがないと考えていた事態に直面し、驚きあわてているのだ。

ただし一部の冒険者たちは、蝙蝠魔人が第百二十一階層に達したことを知っている。彼らは、もしや迷宮が踏破されたのかもしれないと考えているだろう。

迷宮が踏破されたぞー、とブルスカが大声で叫ぶ。怒号が湧き起こる。レカンは疲労感と虚脱感でふらふらしながら、騒ぎに巻き込まれていった。幸いアリオスがそばにいてくれて、雨あられのように降ってくる質問に答えてくれたので、レカンはただなすがままになっていればよかった。

いつしか広場は巨大な宴会場になっていた。

酒と料理が持ち込まれ、至るところで冒険者たちが酒を酌み交わしている。

「レカン」

石畳の上に座って酒のコップを持ったまま顔を上げると、領主ギルエント・ノーツが立っていた。領主補佐ハイデント・ノーツと迷宮事務統括官イライザ・ノーツの姿もある。騎士バイアド・レングラーも控えている。全員徒歩だ。冒険者たちが密集しているこの広場に馬で入ることはさすがにできなかったのだろう。

「迷宮を踏破したのか」

「ああ」

「何階層あったのだ」

「百五十」

「百五十階層! では、お前たちは、たった二か月で、第百二十一階層から第百五十階層まで進んだというのか」

「ああ」

「たった二人で」

「ああ」

「何ということだ。お前たちのような冒険者は、みたことも聞いたこともない」

「領主様」

「アリオス殿、何か」

「最下層には主の部屋だけがあり、そこは制限人数が一人でした」

「な、に?」

「レカン殿は、たった一人で迷宮の主に打ち勝ったのです」

さすがのギルエントも絶句した。

イライザがレカンの前にひざまずいて、酒のコップを持った右手を両手でつかんだ。意外にやわらかな手だ。指はほっそりして美しい。

「レカン殿! レカン殿! あなたという人は、本当に、何という」

目に涙を浮かべている。もしかして先を越されて悲しいのかと思ったが、そんなはずはないと思い直した。

「イライザ。そこをどきなさい」

ハイデントの声が少し硬い。迷宮を踏破されて怒っているのかもしれないが、そんなことはレカンの知ったことではなかった。

「レカン……殿。いろいろと聞かせてもらいたいこともあるが、こんなにうるさい場所では話などできん。君の栄誉をたたえ、領主館で晩餐会を行いたい。来てもらえるだろうね」

「気が向いたらな」