軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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〈彗星斬り〉をみたいという声が上がり、レカンは皆の前で魔法刃を披露してみせた。大いに盛り上がった。

〈骸骨鬼ゾルタン〉が第百二十一階層に到達していたと知って、一同は喜んだ。まるで自分の父親を自慢するようにゾルタン自慢が始まった。

「いやいや。第百二十一階層までとはかぎらんぞ。ゾルタンのことだ。第百五十階層まで行ってたかもしれん。そうだろう、レカンさん」

「そうだな。ゾルタンがどこまで到達していたか、オレにもわからん」

「やっぱりゾルタンは偉大だ。なあ、みんな! そうじゃないか!」

そうだ、そうだと声が上がる。

「偉大なる冒険者〈骸骨鬼ゾルタン〉に乾杯だ!」

何度となく、乾杯がゾルタンに捧げられた。

レカンの知らないゾルタンのいろいろな武勇伝が語られた。

(ゾルタン)

(あんたこんなに慕われてたんだな)

レカンがゾルタンを殺したことを責める者はいなかった。責められてもしかたがないとレカンは思っていたのだが。

突然、ナークが立ち上がって叫んだ。

「みんな、聞いてくれ! このレカンはなあ、ゾルタンと同郷なんだ!」

「なんだって? 本当かっ?」

「本当だとも。なあ、レカン?」

「ああ」

「いったいどこなんだ、ゾルタンの故郷は」

「オレもゾルタンも〈落ち人〉だ。同じ世界から落ちてきたんだ」

「やっぱりそうか」

「その世界ってのは、ゾルタンやあんたみたいな冒険者ばっかりいるのか?」

「いや。ゾルタンは特別だ」

「すげえ、すげえぞ! やっぱりゾルタンは特別なんだ!」

「おい、待て! ゾルタンはじいさんの時代からこの町にいるんだぞ。時々はよそに行ってたけど。いったい、いつからこの世界にいるんだ?」

「五十年以上前だと言ってたな」

「五十年以上だって?」

「そんなに生まれ故郷から離れてたんだ」

「そして五十年目に同じ世界から来た冒険者に会ったわけか」

「なんてこった」

「うれしかったろうなあ。懐かしかったろうなあ」

「レカン、レカン。ゾルタンは、あんたとの戦いを楽しんだか?」

「ああ。こんな楽しい戦いははじめてだ、と言ってたな」

「みんな! ゾルタン最後の戦いに乾杯だ!」

レカンは、不思議と疲れを覚えることもなく、酒を飲み続けた。

アリオスは静かに人々の話に耳を傾けていた。

ナークやネルーはもちろん、宿に夕食を取りに来た客たちも、レカンがゾルタンと決闘し、騎士トログを斬ったことを、ずいぶんあっさりと受け入れた。そのことにレカンは驚いたが、よく考えてみれば迷宮都市に暮らす人々だ。ヴォーカの町の住人とは感覚がちがうのだろう。

いつ果てるともなく酒宴は続いた。

6

翌朝は、ゆっくりと起きた。

「アリオス」

「はい」

「今日は出かける予定があるか?」

「いえ。一日中ここにいることにします」

昨日レカンは迷宮事務統括所を襲撃した。領主に真っ向から喧嘩を売ったのも同然だ。相手が黙ってはいない。

それはいいのだ。どんな手で相手がこようと、こちらは堂々と応じるだけだ。

それはいいのだが、ナークとネルーが心配だ。しばらくは目が離せない。

「そうか。オレは一度修理屋に防具の修理が終わったかどうか聞きにいく」

「はい」

補修は終わっていなかった。

この日は〈グリンダム〉の三人も宿に残ってぶらぶらしていた。

三人もアリオスも、昨日レカンからいきさつは聞いている。だからナークとネルーを守るために宿で待機してくれたのだ。

「お前らまで迷宮行きを休むことはないぞ」

「そう言わないでくれよ、レカン。ぼくらにとってもナークとネルーは家族同然だ。それに、騎士バイアドが呼び出しをかけてきたら、あんた行くだろう」

「ああ、そうだな。お前はバイアドを知っているのか? どんなやつだ?」

「よく知っているわけじゃないけど、まともなやつだと思うよ。バイアドもハイデントもね」

「ハイデントとは誰だ」

「ツボルト侯爵ギルエント・ノーツ公の実弟で領主補佐官だ。イライザ嬢の父親さ」

「ハイデントという男は、どんなやつだ」

「いいね。身分は高いが、威張ってはいない。いい意味での誇りを持った男だと思う。物事の始末のしかたが公平だ。能力も高い」

「腕も立つぞい」

「いい男だしね」

「ふむ。侯爵はどんな男なんだ」

「侯爵のことなんか知らないよ。顔をみたのも三度だけだし」

「わしは見たことないのう」

「あたいも」

「侯爵とは会ったことがないのに、その弟はよく知っているのか」

「イライザ嬢は迷宮事務についての責任者だが、補佐官はその上役で、侯爵の命を受けて迷宮の運営方針を決定する。そりゃ、迷宮には来るさ。迷宮そのものに潜るわけじゃないけどね」

「いや。あの男はもう少し若いころ、わりと迷宮に潜っとったと聞いたぞ」

「第八十一階層まで行ったらしいよ」

「えっ? 深層組なのか! こりゃあ驚いたなあ」

「なぜ侯爵は迷宮に来ないのに、補佐官は来るんだ?」

「あのね、レカン。鉱山を経営する貴族が、鉱山に潜ったり坑夫に会ったりするわけがあるかい? 鉱石から加工品を作る工房には顔を出すかもしれないが、それも人任せにする貴族のほうが多いんじゃないかな。貴族がやるのは、もうけが出るように経営することと、もうけを使って何をするかを考えることさ。出来上がった製品をみて作り方に指示を出したり、出来上がったものを他の貴族に売りつけたりすることはあるかもしれないけどね」

「なるほど」

「補佐官殿がまともなやつだというのはね、そんな高位の貴族なのにちゃんと現場に顔を出すからだよ。冒険者と口も利くしね」

結局その日は何も起きなかった。

レカンは寝る前に〈不死王の指輪〉を使って効果時間を検証した。すると、レカンの心臓が十三回打つあいだ効果があった。

ということは、〈心の臓が十回打つ時間〉というのは、使用者のそのときの心の臓の動きをいうのではない。たぶん、使用者の心の臓がそのとき速く動いていようが遅く動いていようが関係なく、ある基準で〈心の臓が十回打つ時間〉なのだ。

となると、その時間を体感的にきちんとつかんでおかなくてはならない。