軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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力強く一歩を踏み出しながら、レカンは〈彗星斬り〉を抜いた。

ぴたりと呼吸を合わせたように、ゾルタンも剣を抜いた。長い剣だ。ちょうど一歩ほどもあるだろうか。

二歩目を踏み出しながら〈彗星斬り〉に魔力をそそぐ。たちまち魔法刃が形成された。

ゾルタンも剣に魔力をそそいでいる。そして白い剣身を魔法刃が包み込んだ。

(くそっ)

(あっちも魔法剣か!)

レカンは駆けた。

すさまじい勢いでゾルタンに跳びかかり、大上段から〈彗星斬り〉を振り下ろした。

ゾルタンが頭上に魔法剣を構え、〈彗星斬り〉と打ち合わせる。

まぶしく火花がはじけ飛び、レカンの剣とゾルタンの剣は虚空で拮抗した。

これにはレカンも驚いた。魔法剣と魔法剣を打ち合わせると、こうなるのだ。

ゾルタンが右足を蹴り上げてくる。

「〈風よ〉!」

呪文を唱え、〈突風〉の力を利用してレカンは後ろに跳びすさった。

ばさばさと、貴王熊の外套がはためく。

「〈風よ〉」

低い声で呪文が響く。ゾルタンの声だ。

ゾルタンが背に風の魔法を受けて突進してくる。

その速度はレカンよりはるかに速い。

(なにっ?)

逃げるレカンにたちまち追いついたゾルタンは、魔法剣を頭上からたたきつけた。

レカンは〈彗星斬り〉で防ごうとしたが、わずかにまにあわない。

(しまった!)

〈突風〉で後ろに自分の体を吹き飛ばしたことによって、動きを読まれてしまったのだ。

レカンの頭を断ち割るかと思った斬撃は、みえない壁に阻まれた。〈インテュアドロの首飾り〉による魔法防御だ。

ゾルタンが顔に驚きを浮かべた。レカンも驚いていた。首飾りは〈彗星斬り〉を防がなかった。だから魔法剣の攻撃は魔法攻撃とはみなされず、素通りするのだと思っていた。だが、そうではなかったようだ。ゾルタンの使っている魔法剣が特殊なのかもしれない。とにかく助かった。

「〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉! 〈風よ〉!」

〈突風〉を連発してレカンは後ろに逃げた。

ゾルタンは追ってこない。

(今ゾルタンが使ったのは〈突風〉じゃない)

(〈暴風〉だ!)

カルカシアン迷宮の主は赤翼仙鳥で、これを倒すと高い確率で〈突風〉のスキルを得ることができる。ところが、ごくまれに、赤翼仙鳥ではなく金翼仙鳥が出現することがあり、これを倒すと一定の確率で〈暴風〉のスキルを修得できる。レカンは〈暴風〉が欲しくて何日も粘ったが、結局〈突風〉しか得られなかった。

(くそっ)

(迷宮狂いめ!)

(いったい何日粘って金翼仙鳥を出しやがった!)

〈暴風〉は〈突風〉の上位スキルである。同じ呪文で発動するが、効果は〈暴風〉のほうが上だ。

わずかな時間でレカンは百二十階層からの入り口近くに到達した。左右への回廊がある場所に出たので、素早く右側に移動する。

そして左袖を口に押し当て、呪文を唱えた。

「〈隠蔽〉」

自分に隠蔽をかけたレカンは、すかさず次の呪文を唱える。

「〈浮遊〉〈移動〉」

ふわりと天井近くまで浮上したレカンは回廊を左に移動した。

この回廊は、壁の部分も天井の部分も平らになってはおらず、かなりの起伏がある。その起伏に隠れて左に移動したのだ。しかも〈隠蔽〉を自分にかけたのだから、ゾルタンといえど、レカンが左に移動したことはわからないはずだ。

気配を断ったまま、レカンは左側から回り込んだ。

ゾルタンは先ほどの位置から動いていない。すなわち、四つの部屋の中央を走る十字路の交差部分から少し手前に移動した位置だ。

(オレが右側から回り込むのを)

(やつは待ち構えている)

(だがオレは左側から攻撃する)

(そのときできるわずかな隙が)

(オレの勝機となる)

百二十一階層への入り口地点から階層の左端までは百二十歩ないし百三十歩ほどあり、そこから十字路の左端までも同じ距離だ。そしてその左端から十字路の中央までも、やはり百二十歩ないし百三十歩ほどある。合わせて三百六十歩から四百歩弱ほどある回廊を、レカンは〈隠蔽〉で身を包んだまま一気に走り抜けた。

十字路の交差部分に達したレカンは、迷いなく右に曲がり、剣を振り上げてゾルタンに襲いかかった。だが、意表を突いたはずのその攻撃は読まれていて、ゾルタンは体勢を整えて待ち構えている。

(くそっ)

(勘のいいやつだ)

だが別の手もある。

「〈閃光〉!」

まぶしい光がほとばしる。じっとレカンの剣の動きをみさだめていたゾルタンは、まともにその光の直撃を受けた。これでゾルタンの視覚はつぶした。

「〈風よ〉!」

レカンは体の左から自分に〈突風〉を当てつつ剣を振り下ろした。攻撃位置をずらしたのだ。

だが目を閉じたままのゾルタンは、ためらいなく正確な位置とタイミングで〈彗星斬り〉を自身の魔法剣で受け止めた。恐ろしいほどの勘のさえである。

(くそっ)

レカンは最大速度の連撃をはなった。

上から横から斜めから、息もつかせず〈彗星斬り〉をゾルタンの長身にたたきつける。

ゾルタンはそのことごとくを魔法剣で受け止めてみせた。

圧倒的なレカンの攻撃だったが、こんな無茶な攻撃はいつまでもは続かない。一瞬の間が空いた。そのときである。

「〈 刃よ(スパルツァー) 〉!」

ゾルタンの魔法攻撃が飛んできた。

(〈スパルツァー〉だと? 〈影刃〉か!)

どこからともなく飛び出した魔法の刃がレカンに襲いかかり、〈インテュアドロの首飾り〉の障壁に阻まれて淡い燐光を発した。

「〈ゴアル〉!」

レカンの知らない呪文をゾルタンは発した。そして呪文を放つと同時にゾルタンは魔法剣で斬りつけた。ちょうど〈影刃〉が障壁にはじかれた位置だ。

今度も障壁が防いでくれると思った。だが、そうはならなかった。

斬撃は障壁に阻まれることなく、レカンの左肩を深くえぐった。