軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5

5

第百十九階層に続く階段から下りてきた者たちがいる。

通路はまっすぐというわけではないし、ごつごつした岩壁なのでこの位置からはお互いを目視できない。

「一人、二人……ふむ。十六人だな。魔力持ちが五人。なかなかの魔力だ」

「十六人って、どこかで聞いた人数ですね」

「そうか?」

「四十日と少し前だったかなあ。たしか百十六階層で十六人で魔獣と戦っている人たちがいるってレカン殿が言ってましたよ」

「そういえば、そんなことがあったな」

百階層より下を攻略しているパーティーは十ほどあると聞いている。

しかしそのわりに、百階層から下で、ほとんど人をみかけない。

ここまでたった三回、みかけただけである。

その三回のうち一回が十六人という大所帯だったのだから、印象に残って当然だ。

十六人の冒険者は、まっすぐこの部屋に向かってくる。

出くわしたくなければ、右か左に移動して回廊を回り込めばいい。

(あまり迷宮の深層でほかの冒険者と出くわしたくはないが)

(わざわざよけるのもいやだな)

それではまるで逃げているようだ。

(探知系の技能を持っているやつがいれば)

(こそこそ逃げ隠れをしているのはなぜだと思われる)

そういうわけで、レカンはまっすぐ階段に向かった。

やがて通路の真ん中で、二つの集団は出会った。

先頭を歩いてくるのは燃えるような赤毛の剣士だ。〈グィンティル・エラ・スルピネル〉のメンバーだ。たぶんこの剣士がリーダーだ。

上半身はシャツも着けずに革鎧を着て、額には鉢金を巻いている。身長はレカンとちょうど同じぐらいだ。下半身は短いズボンに革鎧を着けている。ブーツはごく丈が短い。背には大剣を背負っている。相当の重さだと思われるが、まるでそれを感じさせない軽くてしなやかな足取りだ。

(露出の多い格好だな)

(戦闘狂には時々こういう格好の好きなやつがいる)

レカンたちと接近すると、赤毛の剣士は右に寄って道を開いた。あとに続く冒険者たちも一様に右端に詰めた。その様子から、赤毛の剣士が全体のリーダーであり、しかもかなり恐れられ敬われていると、レカンは推測した。

体の筋肉はきわめて実用的だ。ひとかけのぜい肉もついておらず、鼻筋の高さとあいまって、顔は鋭い印象をあたえる。とがった顎、野性的ではあるがよく刈り込んだ顎ひげと口ひげ。さぞ女にはもてるだろう。

すれちがおうとした瞬間、赤毛の剣士はレカンに声をかけた。

「あんた、前に会ったな」

「そうかな」

「ああ。会った。ドレイツォが死んだ日だ。迷宮の入り口で会った」

そういえば、あの日、ニコスの頭を割った大男がいない。あの大男が、死んだというドレイツォなのだろうか。

「パーティー名は?」

「〈ウィラード〉」

「ほう?」

「そっちは?」

「〈グィンティル・エラ・スルピネル〉」

「長いな」

赤毛の剣士は一瞬怒ったように眉をねじり、そして笑い出した。目はみひらいたままだ。

「くくくくく。確かに長え。俺もそう思ってたんだ。あんたとは気が合いそうだな」

「さあ。どうかな」

「俺はヴァンガード」

ヴァンガードは、ぎらぎらした目でじっとレカンの目をねめつけた。

「オレはレカン」

「レカン。レカンね。覚えた。仲間のことは気の毒だったな。まあ分け前が増えたと思えばいいさ。じゃあな」

じゃあなと言い捨てて歩き始めかけ、急に止まり、少しかがみ込んで目線を合わせ、みえにくいものをみるように目を細めてアリオスをみた。

「おめえの名は?」

「アリオスです」

「おめえもかなりのくせもんだな」

「はい」

笑いもせず、突き刺すような視線をアリオスに浴びせ、ヴァンガードは立ち去った。レカンたちも階段に向かった。

「仲間のことは気の毒だったというのは、何のことだろうかな」

「私たちにあと何人か仲間がいて、死んでしまったと思ったんじゃないですかね」

「ああ。そういうことか。だがそれだと、部屋に入ったら死体も遺品もないのに気づくだろうな」

「さあ、どうでしょう」

「遺品は俺たちが〈箱〉にしまったとしても、死体はすぐには消えんだろう」

「死体が迷宮に吸われるまで、私たちがその場でみまもっていたとしたらどうです?」

「ほう」

なるほど、そんなふうにヴァンガードは考えるかもしれない。

「待てよ。〈箱〉には死体は入らないのか?」

「死んで何日かたつと入るらしいですよ」

「ほう?」

「死んですぐには無理です」

「そうなのか」

「ええ。そう聞いています」

「迷宮に何日も死体が残るのか?」

「迷宮では死体は半日も残らないんじゃなかったですか?」

「ふうん」

〈収納〉にも死体は入らない。魔獣を解体して素材にすれば入る。これはどんな生き物についてもそうなのだ。つまり〈収納〉には、生きているものは入れることができない。植物はいったん〈収納〉に入れたものを取り出して植えても根が付くが、鳥や虫や魚は死んだ状態でないと入らないのだ。

死んで何日もたった死体を〈収納〉に入れるという実験はしたことがないし、もとの世界でもそんな話を聞いた覚えはない。実験してみたいとも思わなかった。

「買い取り所に行くぞ」

「え? 何を売るんですか?」

「売らん」