軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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敵は部屋の真ん中に突っ立ったまま動こうとしない。

威圧感のある、堂々たる魔獣だ。

百階層の敵はアリオスと同じほどの身長だったが、この階層の魔獣はレカンと同じほどの身長がある。たぶん体重はレカンより重い。

レカンとアリオスは、いったん入り口の前に並んで立ったあと、タイミングを合わせたかのように同時に左右に歩き始めた。

まだ敵は動かない。

だが右側の敵はレカンに、左側の敵はアリオスに注意を向けている。

目がないのだから視線という表現は当てはまらないが、視線に近いものを感じる。それも肌がちりちり焼けるような強い視線だ。

その視線の熱さにあおられるように、レカンの闘争心も高まってゆく。集中力がいやがうえにも高まってゆく。

二十歩ほど歩いた地点でレカンは突然突進した。

まるで打ち合わせがあったかのようにアリオスも突進した。

ロングソード持ちの魔獣がレカンに駆け寄ってくる。

短槍持ちの魔獣はアリオスに駆け寄って行く。

ロングソードの敵が剣を右から左に振る。レカンからみれば左から右への剣筋だ。その剣筋が下方に変化する。

(足か!)

レカンの足を狙った一撃を、〈ウォルカンの盾〉で防ぐ。相手のがら空きの喉に刺突を入れる。喉の前を覆う白い防壁を突き破り、剣先が喉に食い込む。

敵は剣をぐるりと回して、右上から左下に振り下ろす。レカンからみれば左上から襲ってくる攻撃だ。〈ウォルカンの盾〉を掲げて攻撃を防ぐ。すさまじい衝突音が響く。レカンは剣を引き、もう一度突く。先ほどよりも少し右側に、先ほどよりもずっと深々と、剣が敵の喉を貫く。

レカンの剣を持つ右手を敵の剣が襲う。レカンは素早く剣を引く。

刃をひるがえすこともなく、魔獣は振り下ろした剣をそのままはね上げてレカンを狙う。両刃の剣ならではの攻撃法だ。

レカンは〈ウォルカンの盾〉を伏せて敵の剣を押さえ込み、ぐっと身を乗り出して盾の上から剣を突き込んだ。

三撃目となる刺突は魔獣の喉のやや左部分に突き刺さる。レカンが剣を左に振ると、魔獣の首がちぎれ飛んだ。

アリオスのほうも、ほぼ同じタイミングで敵の首を落とした。

じっくり観察する余裕はなかったので、あまり戦闘の中身はよくわからないが、たぶん相手の攻撃はかわしきっている。

レカンは荒い息をつきながら、高ぶった気持ちを静めていった。

(あの素早い攻撃に)

(何とかついてゆけたな)

この階層までくると魔獣の攻撃速度は戦慄すべき領域にある。だが、人間とちがい、小技は使わない。一撃一撃の威力はすさまじいが、盾を合わせることは不可能ではない。

宝箱が二つ出た。

ロングソードのほうは、〈 枯死剣(カーヴィンシラー) 〉という名で、肉体にふれると生命力をごっそり削り取ってしまう恩寵がついている。〈呪印剣〉も、検証したところ、肉体にふれなければ効果がなかった。きちんと防具を着けて戦うかぎり、それほど神経質に恐れる剣でもない。アリオスもいらないと言った。

短槍のほうは、〈 連牙槍(ツェルエギウィトー) 〉という名で、敵にダメージを与えた直後、同じダメージが二度敵を襲うという恩寵だった。〈状態保持〉も付いている。攻撃力も高い。

レカンは一瞬、自分で使おうかと思った。この迷宮での中層から深層にかけては、戦闘空間の狭さに悩まされた。短槍は小さくて威力があり取り回しもよく、狭い空間で格別の威力を発揮する。これを使えば戦闘の幅が広がるだろう。

だが、その考えはすぐにすてた。今まで多少は短槍を使ったこともあるが、ツインガーのレベルまでわざを磨くのは容易ではない。剣技だけに集中してますますわざを磨いたほうがいい。そう判断した。

レカンは奥の壁際まで歩いた。

目の前に出口がある。先ほどまで灰色のもやで覆われていたが、いまはそうではない。

そして出口の手前右側には、これまでの階層なら階段があったのだが、ここにはない。

レカンは、今手に入れた短槍の石突きで、こつこつと岩の床をたたいた。

「そこに階段があるんですか?」

「ここらあたりなんだがな」

〈図化〉は、その階層の略図が脳内に映し出される技能だ。厳密な位置はわからないが、およそこのあたりに階段があるはずなのだ。だが、その辺りの壁をこずいてみても、そのような手応えはない。

〈立体知覚〉はその階層のなかしか感知できない。それでも出入り口があるかどうか、つまりそこに穴が開いているかどうかはわかるはずなのに、今ここに穴は感知できない。

「ふうむ。〈守護者〉を倒したが、階段は出てこないか。階段が現れる条件は何なんだ?」

〈図化〉に意識を集中した。頭に浮かぶこの略図に、何か手掛かりはないか。

(うん?)

(そういえば〈図化〉に映るこの階段)

(今までよりだいぶ狭くないか?)

「もしかすると」

「何か思いつきましたか?」

「思いついた。だが実験は明日にする」

「何を思いついたか教えてもらえませんか?」

「いや。もう少しよく考えてみる」

「そうですか」

「魔法防御の宝玉を出せ。魔力補填をしてやる」

アリオスが真っ白なすべすべした宝玉を出したので、魔力を込めてやった。

「よし。いっぱいになった」

アリオスは目をしばたたかせながら宝玉を受け取った。

「ずいぶん簡単なんですね。魔石から魔力を吸うときは、やっぱり呪文とか唱えるんですか」

「いや。今やったのと同じだ。呪文はいらん。すぐ吸える。お前、みたことなかったか?」

アリオスの前で魔石から魔力を吸ったことがあるような気もするし、なかったような気もする。

「みていたとしても、そうとは気づいていませんね」

レカンとアリオスは出口から回廊に出て、ぐるっと回って入り口の前まで来た。

ここからまっすぐ進めば、第百十九階層に続く階段がある。そこまで歩けば〈転移〉で地上階層に戻れる。

「む」

「どうしました?」

「誰か来る」