軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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こうして二の月の三日、レカンはアリオスと百階層に足を踏み入れた。

昨日はあれほど神秘的に感じた天井と壁と床の青い燐光だが、今日はそれほど違和感がない。

(人間が何かに慣れる力というのは)

(ものすごいものだな)

むしろ床が発光していると目でみた立体感に狂いが生じる。レカンは目では床をみずに、〈立体知覚〉に頼って歩いた。

「ふむ。今日もこの階層には誰もいないな」

「不人気階層なんでしょうか」

「しゃれた言葉を知ってるな。まあ、百階層以下に潜っているパーティーは十かそこらだというし、二日に一度休みをとるとしたら、五パーティーしか潜っていないことになる。二十の階層で五パーティーなら、四つの階層ごとに一パーティーという計算だ。よし、入るぞ」

レカンはさっさと侵入通路に入った。アリオスも入った。もちろん、階段のある部屋への侵入通路ではなく、普通個体のいる侵入通路だ。

「よし、湧いた。二体」

二体のうち一体は魔力が強い。

アリオスが、みるからにほっとした様子をみせた。

レカンもほっとした。

もしも五体出るようなら、アリオスには大盾を渡し、レカンは〈ウォルカンの盾〉で防御しながら〈爆裂弾〉を使うつもりだったが、これは本来迷宮で使うようなものではない。威力のけたがちがうのだ。迷宮などで使えば自爆兵器にひとしい。敵も全滅するが味方もただではすまない。

「待てよ。もし、アリオスが入ってくるのを遅らせて、先に一体が湧くようにしたらどうなるんだろう。あとでアリオスが入っても敵は一体のままなんだろうか。それともあとで一体追加されるんだろうか」

「あ、その場合は私は入れないと思います」

「どうしてだ」

「ナークさんが言ってました。昔、ゾルタン殿のパーティーが他のパーティーと合同探索をすることになって先に侵入通路にはいったけど、いつまでたっても相方のパーティーが入ってこないので、ゾルタン殿のパーティーだけで敵を討伐したそうです。あとで聞いたら、入ろうとしても入れない状態になっていたということです」

「そんな話は知らん」

「一昨日のことですよ? ああ、そうか。レカン殿はそのときお手洗いに行ってました」

「そうか。なるほど。一度の敵には一度だけ魔獣が湧くわけだな。追加はなしだ。理にかなっている」

「かなってますか?」

「行くぞ!」

「えっ」

レカンは部屋に飛び込んで、そのまま敵を目指して走った。

一足後れて部屋に入ったアリオスも、すぐに走り始めた。

二体の〈鉄甲〉のうち一体は鞭を、もう一体は巨大な鎌のような奇怪な武器を持っている。

鞭を持った〈鉄甲〉が、レカンに左手をかざした。するとレカンの体の至近距離で小さな爆発がいくつも起きた。〈インテュアドロの首飾り〉が発動しすべてを防ぐ。

レカンは大鎌を振り上げた〈鉄甲〉に接近し、まず鎌の柄を断ち斬り、〈鉄甲〉の首を刈り取った。

鞭を持った〈鉄甲〉はアリオスを攻撃するが、その変化に富んだ軌道を予測していたかのようにアリオスが綺麗な回避をみせて、敵の首を斬り飛ばす。

宝箱が出た。そのサイズが巨大だ。

レカンが蓋を持ち上げているうちにアリオスがなかに入り、武器を外に持ち出した。宝箱の内部には、レカンが三人ぐらい並んで寝られる空間があった。

レカンはさっそく鑑定をした。

「う」

「どうしたんです?」

「〈即死〉がついてる。それはいいんだが、〈即死〉が効かなかった場合、〈石化〉〈暗闇〉〈狂乱〉のどれかの呪いがかかる。しかも〈呪い耐性無効〉だと。とんでもなく凶悪な性能だな」

「斬られなければいいんですよね」

「まあそうだが。それにしても、この大きさだと〈収納〉に入らんな」

大鎌の柄はレカンの身長より長い。そして刃渡りが三歩ほどある。こんな巨大な品はレカンの〈収納〉には入らない。

ところが、柄の部分を〈収納〉に押し込んでみると、全体がかき消えるように〈収納〉に収まった。

「うん?」

取り出そうとしてみると、簡単に取り出せた。もう一度入れるのも簡単だった。

(〈収納〉に前より大きい物が入るようになったか?)

(物品を入れる機能も向上している?)

(そうか!)

(ニーナエのあと、〈生命感知〉も〈立体知覚〉も〈魔力感知〉も進化していた)

(〈収納〉も進化したんだ)

(たぶん容量もぐっと増えている)

(そういえば最近ずいぶん余裕があるように感じていた)

「今のは何です?」

「今の、とは?」

「大鎌が吸い込まれるように消えましたけど」

「そのことについては聞くなと言ったはずだ」

(どの程度の大きさの物が入るのか検証しなくてはならんな)

「〈収納〉というんですね」

「え?」

「その外套についた〈箱〉に似た機能のことですよ」

「あ、ああ。まあな」

「〈箱〉よりずっと高機能ですけどね」

「そうか?」

「ほんとは外套についてるんじゃありませんね」

「何のことだ」

「レカン殿についているんでしょう」

ごまかそうかとおもったが、ここで嘘をついてもしかたがない。

「そうだ」

「もしかして、レカン殿以外の人は、〈収納〉の中身を取り出せないんじゃないですか?」

「そうだ」

「レカン殿が死んだら、〈収納〉の中身はどうなるんですか」

「そのままどこかに消える。二度と取り出せない」

「うわあ」

「何か問題があるか?」

「いえ」