軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3

3

アリオスが部屋に入ったとき、レカンは〈立体知覚〉で注意深く魔獣たちを監視していた。

動かない。

アリオスに続いてブルスカとツインガーが部屋に踏み入っても、魔獣たちは動かない。

魔獣たちは、敵が攻撃態勢を整えるまで待つつもりなのだ。

魔獣は獣とはちがう。強い魔獣は、ときどきこういうふるまいをする。

次いでレカンが入り、ヨアナが入った。

立ちはだかっている魔獣の姿は奇怪である。今までの白幽鬼とはまるでちがう。

〈黒肌〉は、ごつごつした外皮を持っていたが、その外皮は鉄のように黒かった。

ところが、〈鉄甲〉の外皮は白い。それも、鎧のように全身を覆いつくしているのではなく、いたる所に穴が開いている。その穴からみえる地肌は真っ赤だ。要するに、真っ赤な色をした白幽鬼の全身を編み目のように白い骨が覆った姿だ。

陣形が整った瞬間、アリオスは前に一歩出た。

ブルスカとツインガーが、ほんのわずかに後れて前進を始める。

レカンも進む。

五体の敵も近づいてくる。

お互いが十歩ほど進み、あいだの距離が三十歩ほどになったとき、敵も味方も走り始めた。

あとわずかで接敵というとき、アリオスが止まる。

かすかに腰を落とし、バトルハンマーを振り上げて迫る〈鉄甲〉を、抜き打ちざまに逆袈裟に斬り裂いた。

レカンはその右側を駆け抜け、剣も折れよとばかりにショートソードの敵を唐竹割りにたたき斬る。

右側ではブルスカがハルバード持ちの攻撃を双斧を交差させて防ぎ、左側ではツインガーがロングソードの攻撃を短槍ではじいた。

中央左のシミター持ちがアリオスに攻撃を加えようとしたとき、その首元にヨアナの魔法が直撃した。後ろにのけぞるシミター持ちの首を、アリオスが刈り取る。

そのときレカンは右の敵に向かっている。ブルスカが放った斧の一撃をハルバードの柄で受けた、その〈鉄甲〉の頭を大上段から割り砕いた。そのとき〈オドの剣〉も根元から折れた。

左ではツインガーがロングソード持ちの胸に一撃を入れたところで、アリオスが首を刈り取った。

レカンは柄とわずかな剣身だけが残る〈オドの剣〉を目の前にかざしてしばらくみつめたあと、身をかがめて床に置いた。折れてしまった以上、〈切れ味付加〉〈威力付加〉〈重量付加〉の三つの付加は失われてしまった。たとえ打ち直しても三つの付加が戻ることはない。

「な、なんという破壊力なんだ。レカン、今までは本気じゃなかったのか?」

「アリオスもじゃ。震えのくるような技の冴えじゃった。あの初太刀は何かのスキルだったんじゃろう?」

そうだ。あれは何かのわざだった。たぶん修業を積んで身につけた何かの技能だ。

アリオスには引き出しが多いということはわかっていたが、今また新たな力をみせてもらった。

よほどここまで鬱屈がたまっていたのだろう。

何しろここまで、戦闘空間は狭いし敵は多いので、振りかぶったり、ためを作らねば放てないような技は使えなかった。しかも至近距離に常に複数の敵を抱えるような戦いだから、どうしても小技の組み合わせで戦うしかなかった。

レカンも少しばかり、いや、かなりいらいらしていた。

下に行けばゆくほど、敵の動きは速くなり、攻撃の密度は高くなる。

こちらはどうしても手数を増やし、小刻みに移動しなければならない。それはレカンの能力をもってすればやってできないことではないけれど、攻撃はどんどん小技になっていった。

こんなに伸び伸びと攻撃できたのは、実に久しぶりだ。思いっきり剣をたたき付けてしまった。そのため、相当に頑丈だった〈オドの剣〉も、ついに折れてしまったが。

「剣が折れちまったねえ」

「ヨアナ。先ほどの攻撃は見事だった」

「へへ。そうかい」

ヨアナはいつでも魔法を撃てたが、じっとタイミングを待った。そしてシミター持ちの〈鉄甲〉がアリオスに注意を向け、攻撃態勢に入ったまさにその瞬間に撃った。あれではかわせない。

「さて、宝箱は何でしょうね」

アリオスが宝箱を開けた。

ショートソードが入っていた。

「〈鑑定〉」

鑑定してみたところ、〈状態保持〉と〈即死〉という二つの恩寵がついていた。切れ味もいい。

〈状態保持〉は、〈消耗度〉の増加を低く抑える恩寵で、〈即死〉は相手の身体に切りつけたとき一定確率で即死させる恩寵だ。

いつものようにレカンが〈収納〉にしまった。レカンが鑑定した結果は一応伝えてあるが、迷宮を出たときには買い取り所に行って正式に鑑定をしてもらい、パーティーメンバーにそれを欲しいという者がなければ売却する。

「よし。部屋を出るぞ」

レカンとアリオスは最後に残り、すでに灰になった魔獣たちに一礼した。

「あんたたち、いつも最後に部屋を出てたけど、いつもそんなことしてたのかい?」

ヨアナが足を止めてその様子をみていた。

「ああ」

「いったい何のまねだい?」

「戦った相手に礼をしているだけだ」

「へえ?」

この階層には空き部屋というものがない。だからレカンたちは回廊の一角で休憩をとった。

「レカン殿。これからどうしますか?」

「皆がよければ、大型個体、ではなくて〈守護者〉か、〈守護者〉に挑戦したい」

〈グリンダム〉の三人は、レカンの言葉を聞いて、あれこれと言い合った。

「わしらは疲れてもおらんし、傷も負っておらん」

「うーん。俺も調子はいい。今日ならやれる気がする」

「でもさ、レカンの剣が折れちまったじゃないか」

三人がレカンのほうを振り向いたので、レカンは言った。

「大丈夫だ。あれよりいい剣がある」

「ほう。それならひとつ、やってみるかのう」

レカンは念のため自分を含め全員に〈回復〉をかけた。

百階層の魔獣と戦ったのだ。みな緊張もしたし、体には疲れもあるはずだ。〈守護者〉と戦うのは万全の状態でなくてはならない。

もっともこのときレカンはすでに、百階層を攻略し終えたそのあとのことを考えていた。

(百階層以下の仕組みがオレの考えている通りなら)

(面白いことになる)