軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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7

「さあ、ここに入るよ」

シーラはすたすたと洞窟に入っていった。

「〈 光明(テラパーム) 〉」

シーラが呪文を唱えると、薄暗かった洞窟の入口が一気に明るくなった。

それは不思議な光だ。

〈 灯光(パーム) 〉のように、どこか一か所が発光している光ではない。

シーラを中心にして十歩ほどの空間が、全体的に明るいのだ。影もできていない。

「〈光明〉は〈灯光〉の上位魔法さ。あんたもすぐに使えるようになるよ。光の範囲は調節が利く。奧に進むよ」

シーラは、迷うようすもなく、すたすたと奧に進んだ。

洞窟は少しずつ下降してゆく。分岐が何か所もあったが、シーラの足取りは乱れない。

「ここだよ」

そう言いながらシーラは荷物袋から小型の鶴嘴を取り出し、洞窟の壁面を掘り始めた。しばらく作業をしたあと、目的のものを探り当てたようだ。

「よし、これだ」

鶴嘴で壁の一部をえぐり取った。地面に落ちた岩の塊を拾い上げてレカンにみせた。

それは青緑色の美しい鉱石で、きらきらと金色の光が混じっている。

「これはとても用途の広い触媒になるんだ」

さらに少し奧に入って別の鉱石を掘り出し、さらに奧に入って別の鉱石を取り出した。そしてレカンに鉱石の名前とおもな用途などを説明した。

「あたしが必要な分は採掘が済んだ。あんたも自分用に掘っておきな。〈 箱(ルーフ) 〉に余裕があるんだから、遠慮せずたっぷり掘っておけばいい。また来るといっても大変だからね」

レカンの採掘も済み、二人は帰途についた。この二人であれば洞窟のなかを走り抜けることもできるのだが、なぜかシーラはそうしようとしない。たぶん何かの理由があるのだ。

もう少しで出口という場所で、一人の男と出会った。

むろん、あらかじめ探知はしていたが、魔力はない相手で、特段の武威も感じない。

でっぷり太った薄汚い男である。

上半身は裸で、その上に革の鎧をまとっている。

腰にはズボンをはき、足にはブーツを履いているが、両方ともよく破れている。

髪も髭も伸び放題だ。

手には巨大な鶴嘴を持っている。

「ぐえっへっへ。お二人さんよう。勝手に入ってもらっちゃ困るなあ。これは俺様の穴なんだ」

「ほう。領主がみはりを置いているでもない採掘場に持ち主がいるとはね。いつからここはあんたのものになったのかねえ」

「もう五年にもなるぜ」

「その百年以上前からあたしはここを使ってるけれどねえ」

「なんだと?」

「何でもないよ。それで、あたしたちをどうしようっていうのさ」

「へへへ。通行料を払ってもらわねえとな。道具と鉱石は全部俺様が頂く。この明かりはすげえなあ。ずいぶん値の張る魔道具なんだろうなあ。女は俺様についてこい」

「あたしを連れてって、どうしよっていうのさ」

「さあなあ。一旬ばかり楽しんだら、あとのことはあとで考えるさ」

「あたしを連れていくとして、男はどうするつもりだい?」

薄汚い男は、シーラの問いに行動で答えた。つまり鶴嘴を振り上げてレカンに振り下ろそうとしたのである。ただし、振り下ろす前にシーラの呪文が響いた。

「〈 硬直(ガスト) 〉」

たちまち薄汚い男は動きをとめた。

「ちょうどよかったねえ。これが精神系魔法の〈硬直〉だよ。初級のうちは、相手にふれていないとうまく発動しないけどね。そしてこれが特殊系魔法の〈脱水〉さね。〈 脱水(カシュート) 〉」

薄汚い男の体がぎゅるぎゅると引き絞られて古木のようになり、めきめきと音を立てながら引きちぎれたかと思うと、さらさらと砂になって地に落ちた。鶴嘴や革鎧は砂にはならず、もとの状態のままで地に落ちた。

「〈脱水〉でこんなふうに砂になっちまうのは、かなり上級者が使った場合だね。でも初級の〈脱水〉でも相手を殺すだけなら簡単にできる。魔法抵抗があっても特殊系は防げないからね。もし血が泡立つような感じがしたら、〈脱水〉をかけられてる可能性がある。そのときは、とにかくじっとしてないで動き回ることだね。この鶴嘴、もらっていくかい?」

「いや、いらん」

8

夕食が終わって、レカンはシーラにノートを差し出した。そこには、この二日間教わったことが書き記してある。

「まちがいがないか、みてもらえるか」

「いいともさね。けどこの紙、いいねえ。このノート、一冊もらえないかい?」

「その一冊しかないんだ」

「じゃあ紙を二枚切り取らせておくれ」

「かまわない」

「ありがたいねえ」

シーラがノートを添削しているあいだ、レカンは〈灯光〉の練習にいそしんだ。

もう百歩離れた場所にでも確実に明かりをともせる。

「はいよ、みといたよ。しかし、あんた。もう〈灯光〉は完璧だねえ。そんなに遠くできちんと〈灯光〉を発動できるやつはめったにいないよ。こりゃ、昨日の言葉は取り消さないといけないね。次の魔法を教えてあげるよ」

「ぜひ頼む」

「次の魔法は〈着火〉だね。この三日間で何度もみせてる。ゆっくりやるから、よくみてるんだよ。〈 着火(ウテル) 〉」

レカンは、魔法の発動を食い入るようにみつめている。

何もない所に火が付く。それはまさに魔法的な出来事である。

レカンは右手の人差し指を、まだ燃えていない枯れ葉に向け、呪文を唱えた。

「〈 着火(ウテル) 〉」

すると枯れ葉が燃えた。

「また一度で成功させたね。よしよし。それを繰り返すんだ。正しく呪文を発動し、燃やすべき対象をはっきりと認識し、そこにまっすぐ魔力を乗せる。その手順を体に覚えさせるんだ。この魔法は燃える何かを対象にしないと発動しない。そこをよく覚えておくことだね。まあ上級になればそうでもないんだけどね」

その夜、そして翌日の朝、飽きることもなくレカンは〈着火〉の練習を続けた。