軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「レカン殿」

「うん?」

「レカン殿はなかの様子がわかりますが、普通はわかりません。戦闘中に別のパーティーが入ってきたら、どうなるんでしょう」

「オレがもといた世界では、冒険者が魔獣と戦っている最中にその場に踏み込んできたやつは殺されても文句はいえない、という暗黙のルールがあった。まして戦闘に手を出そうものなら、〈横殴り野郎〉という烙印を押されたな」

「へえ。じゃあみんな、そういうことはしなかったんですね」

「するやつはする」

「だめじゃないですか」

「結局、自分の身は自分で守るしかない。人の戦いを盗みみるような冒険者は、いつ襲ってくるかわからん。それに対処できんようなやつは、迷宮では長生きできん」

「なるほど」

「獲物を横取りされて悔しかったら、横取りされないだけの力をつけるしかない。不意を突かれて殺されるようなら、実力か警戒心のどちらかが足りなかったんだ」

「やっぱり迷宮って、そういうものですよね」

「この世界の迷宮ではそこらあたりがどうなっているか知らんが、うっかり別のパーティーが戦ってるときに踏み込んだら、すぐにその場を去るべきだろうな」

「私たちが戦っているときに、誰かが踏み込んできたら?」

「相手の出方次第だ。だが油断はできんな。さて、前のパーティーが下におりて、次の魔獣が湧いた。入るぞ。〈赤肌〉は殺すな」

「はい」

レカンが先に入り、アリオスが続いた。

「〈雷撃〉!」

ばりばりと雷電が走り、六体の魔獣にまとわりつく。

レカンが先頭の〈黒肌〉の首を飛ばす。

アリオスが右奥に走り込んで〈黒肌〉の首を落とす。

これで残りは〈黒肌〉二体と〈赤肌〉二体だ。

「〈 展開(パシュート) 〉!」

レカンの左手に、〈ウォルカンの盾〉が現れる。

四体の魔獣が再び動き始めた。〈黒肌〉一体はレカンに向かってくる。振り下ろされた斧を〈ウォルカンの盾〉で防ぐ。

もう一体の〈黒肌〉がアリオスに向かう。ぶうんとうなりを立てて襲いかかる大きな両手剣を、アリオスは余裕をもってかわしている。

〈赤肌〉二体は、のそのそと後ろに下がっていく。

レカンが魔獣の斧を盾で防ぐ、防ぐ。

アリオスが両手剣の斬撃をかわす、かわす。

そのうちに、後方に下がった〈赤肌〉の一体が、口を大きく開けてうなり声を上げた。

ぼおおおおお。

そして口のなかに光が生じた。

白くくすんだ表皮の色が、薄赤色にそまる。

口のなかの光が爆発し、光の槍となってレカンを襲った。

「む」

レカンは〈ウォルカンの盾〉でその光の槍を受けた。

どごん、と音がして盾が揺らぐ。

一瞬遅れてもう一体の〈赤肌〉も口を開けたかと思うと光の槍をはき出した。光の槍はアリオスの腹に着弾してはじける。

すかさずレカンの前の〈黒肌〉が斧を振るう。

レカンは半歩さがって、その斧をかわし、大きく一歩踏み込んで剣を横に振り、魔獣の首を飛ばし、棒立ちになった首のない死体をかわして前に突進し、〈赤肌〉の首を飛ばす。

アリオスはといえば、すでに〈黒肌〉一体と〈赤肌〉一体を 屠(ほふ) っていた。

「大丈夫か?」

「ええ。この鎧はすごいですね」

アリオスはまったくダメージを受けていないようだ。

ニーナエの深層で手に入れた八目大蜘蛛上位種の甲殻と腹、それに女王種の甲殻をも使って作られた鎧である。魔法攻撃には強い耐性を持つことが実証された形だ。

「予備動作がなかったな」

「ええ。不思議なことです。先にレカン殿を攻撃した魔獣はうなり声を上げていたのに、私を攻撃した魔獣は、いきなり魔法を撃ってきました」

「よくわからんが、一体が準備すれば二体目は準備を省略できるのだろうかな」

「それとも、うなり声を上げなくても準備できるのかもしれません」

「うなり声以外に何か予兆があるかもしれん。次の戦闘で様子をみよう」

二体目の〈赤肌〉の魔法攻撃には意表を突かれた。

だがそれでもアリオスならかわすことはできたはずだ。おそらく、鎧の性能を確認するためあえて装甲の厚い部分で受けてみたのだ。

「はい。それにしても、なかなかの威力でしたね」

「ああ。衝撃も強かったし、貫通力もありそうだ。〈炎槍〉とよく似たタイプの攻撃のように感じたな」

宝箱が一つ出たので開けてみると、斧が入っていた。

鑑定したところ、〈軽量化〉と〈威力付加〉の恩寵がついていた。高く売れそうだ。

「迷宮の外に出る白幽鬼も、魔法を使うんだろうか」

「いやいや、そんなことはありません。使いません。この迷宮の白幽鬼が特別なんです」

「そうか」

「考えてみると、なかなか厄介な魔獣ですね」

「そうか?」

「レカン殿も私も剣に威力があるし速度もあります。狙いも精密です。だから簡単に首を飛ばしています。でも普通の冒険者では、そうはいかない。〈黒肌〉は防御力が高いですからね」

「それはそうだな」

「〈黒肌〉に手こずっているあいだに〈赤肌〉が後ろから魔法で攻撃しはじめる。そうなったら、かなりの脅威ですよ」

五十階層台の〈黒肌〉は、騎士の鎧なみの硬度を持っている。そして鎧の上部に張り出した部分があって、弱点である首を覆っている。レカンやアリオスはその張り出し部分をかわして攻撃しているが、この階層になると魔獣の動きも速く、並の使い手では同じことはできないだろう。

魔獣の死骸から魔石を抜くと、レカンとアリオスは五十三階層に下りた。