軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「だがどのみち、スカラベル導師がおいでになれば、シーラ様には迎賓館にお移りいただくことになる。少しばかり早く移っていただくことに、何の問題があるというのだ」

「なに? 何の話だ?」

「君はまさか、今のシーラ様のあばら屋に、スカラベル導師をご案内するつもりではあるまいな」

「あっちが来るんならとめはしない。歓迎はしないがな」

「人一人通るのもぎりぎりという場所だそうではないか。廃屋が立ち並ぶ区域の一番奥まった場所だ。治安上からも、あんな危険な場所に導師をお連れすることはできん。だいたい、あんなきたない場所をおみせできるわけがないだろう」

そのきたない場所にシーラは住んでいるのだが、そこはどう思っているんだろう、とレカンはおもしろがって聞いていた。

「当然、スカラベル導師がご滞在中は、シーラ様にも迎賓館にお泊まりいただく。その予定で間取りも決めたのだ」

「シーラの了解は得たか?」

「得るまでもない。当然のことだ」

「なら、オレに相談するまでもないだろう。あんたがシーラに言え。迎賓館に移るのが当然だとな」

「万一移っていただけないことでもあれば、すべてがむちゃくちゃになってしまう」

「オレは知らん」

レカンはもう一度立ち上がった。

「レカン」

「何だ」

「わかった。シーラ様の家に続く道を拡張しよう。邪魔な建物は取り壊す。馬車が入れるようにな。住民はどこかに移す。それならいいんだな」

「知らん」

「なぜそこで知らんと言える」

「そんなことをしたら、あの場所はあの場所でなくなってしまう。それをシーラがどう思うか、オレは知らん。ただし」

「ただし?」

「家の庭をおおう薬草畑に道を通すなどと言われたら、たぶんシーラは激怒するんじゃないかな」

「父上、あの薬草畑をどうにかしないと、右側の細い通路を木の枝に引っかかれ、壁に押し付けられながら進むしかありません。スカラベル導師をあそこにご案内することはできないと思います」

領主は両手で頭を抱えてうずくまった。

「〈回復〉」

別れのあいさつがわりに〈回復〉をかけてレカンは領主館を去った。

帰りの道々、レカンは考えた。

本当にシーラを暗殺する方法はないだろうか。

あるとすれば、〈浄化〉だ。

この町には〈浄化〉持ちはいない。エダを除いて。

だが、コグルスの町にはいるかも知れない。

コグルスからヴォーカまで、移動に五日はかかるが、使いつぶすつもりで馬を走らせれば、二日で着けるかもしれない。

それなら、〈浄化〉を魔法純水に溶かした魔法水を効果のあるうちに持ち込むことはできる。

その魔法水をどうやってシーラにかけるか。

いや、かけなくてもいい。飲み物に入れて飲ませてもいい。

しかし、シーラが人の作った飲み物を飲むのをみたことはない。

矢や槍に塗って射かければどうか。

それもだめだ。

目でみると老婆だが、若いニケのほうが実体なのだ。

あの素早い身のこなしから考えて、普通の矢や槍が通じるとは思えない。

しかもそれは、敵がシーラの弱点が〈浄化〉にあると知っていればという話であり、実際には知っているとは思えない。

シーラを暗殺する方法を、どうもレカンには思いつけない。

だが、レカンは暗殺の専門家ではない。

暗殺の専門家というのは、思わぬ手段を思いつくものだ。

こんなとき、ドボルやギドーなら、どんな手を使ったろうか。

わからない。

わからないが、レカンに思いつかないからといって、暗殺の専門家が思いつかないとはかぎらない。

(待てよ)

考えてみれば、暗殺が成功しなければいいとはいえないのではないか。

むしろ失敗したときが問題だ。

生きている人間ならどんな相手でも殺せるはずの手段がシーラには通じない、などということが知られてしまったら、どうなる。

それこそが本当の危機だ。

となると、暗殺が成立しないように守らなければ、本当にシーラを守ったことにはならない。

ところがレカンには、敵の攻め口が読めない。

(ならばオレはオレにできることをするまでだ)

これから先、スカラベルが来る日まで、レカンはできるだけ頻繁にシーラの家に行くことにした。

この日も領主館からの帰途、直接シーラの家に行った。

シーラは採取した薬草の処理をしていた。レカンはそれを見学した。

もしも本当にシーラを暗殺するとしたら、街道整備が完全に終わってからでは、あまり意味がない。

本当に暗殺者などというものが差し向けられるとしたら、もうヴォーカの町に潜入していると考えたほうがよい。

この日、家に帰ったあと、〈生命感知〉を最大範囲で実行し、シーラの周辺を観察しようとした。

これを実行してみて驚いた。

もともと〈生命感知〉は、半径千歩ほどの範囲の生き物を探知する能力で、ある程度は探索範囲を移動できた。しかし、自分から離れれば離れるほど像が不鮮明になる。

ところが今は、二千歩先の情報も鮮明にみえる。つまりシーラの家と周辺を鮮明に観察できる。

いつからこうだったのだろう。

あのときにちがいない。

ニーナエ迷宮での戦いで、能力が向上したのだ。

この能力を使ってシーラを守れというかのように。

レカンは〈生命感知〉に意識を集中した。

四人の人間を示す赤い点が、シーラの家の周りを取り囲むように存在する。

シーラの家の両隣は無人の廃屋であり、このような場所に人がいるはずはない。

シーラは、〈探知〉が使える。

だが、〈探知〉は、レカンの〈生命感知〉とはちがい、発動しなければ効力を発揮しない。シーラは、普通の生活のなかで〈探知〉を使うことは、あまりないだろう。あれほど強大な力を持っていれば、身の回りを常に気にする必要もない。

ということは、この四人の不審者たちに気づいていない可能性がある。

「ちょっと出てくる」

エダに言い置いて、レカンは家を飛び出した。

ところがレカンがシーラの家に着く前に、四つの赤い点は、シーラの家から離れていった。

レカンは、家に戻り、夕食を食べ、〈浄化〉を受けて寝た。