軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「シーラの命が狙われている、だと?」

「そうだ。今回、この町は、〈薬聖〉様のご来駕を得る。九日間もご滞在なさるのだ。そのため、勅命により、街道が整備される。しかもヴォーカ近辺の街道整備は、ヴォーカ領主に委ねられた」

「それは聞いた」

「これは王都が王国北東部に何らかの介入をしてくる予兆であり、その焦点となるのがヴォーカだ、と周りは思った」

「それも聞いた」

「だからヴォーカとつながりを強めたいと思った。今さまざまな贈り物が届き、協力依頼が舞い込んでいる。どういうわけかアギトの縁談も二つ三つ来ている」

「そうか」

「ヴォーカとつながりを持っておけば、これから何が起こるか察知しやすいと考えているのだ。利益の出る話なら乗りたいし、まずいことが起きるなら被害を少なくする算段をしたい」

「そうだろうな」

「だから今ワシのもとには、今までならとても集まらなかったような情報が、次々に飛び込んでいる」

「なるほど」

「そのなかに、コグルス領主がシーラ様の暗殺をたくらんでいる、という情報があった」

「ザック・ザイカーズが、ではないのか?」

「同じことだ」

「そうだな」

「もしもシーラ様が殺されたら、どうなる? ワシはスカラベル導師の師の命を守れなんだ無能領主ということになる。導師の旅行は取りやめになる。それは勅命を踏みにじり、勅命でなされた準備全部を無駄にすることだ。王都と周辺都市と、そしてスカラベル導師のワシへの怒りはすさまじいものになる」

「そうなるだろうな」

「当然、この町を核とした北東部の発展などという夢物語は、消えてなくなる」

「そんな話があったのか?」

「ありはしないよ。だが、そうなるかもしれんと皆が思えば、それに似たことは起きてくるかもしれん。まあ、新たな産業や資源が湧いて出るわけではないから、その発展はゆるやかなものでしかないだろうがな」

「ヴォーカ領主が失脚し、街道整備も未完に終わる。コグルスとしては願ったりかなったりだな」

「そうなのだ」

「だが、コグルス領主がシーラを殺したと知れば、スカラベル導師の怒りは、コグルスに向くんじゃないか?」

「そんな証拠を残すわけがない。だからこそ暗殺なのだ」

「しかし実際問題として、シーラを暗殺できるか?」

「いくらニケや君やエダがついているといっても、シーラ様ご自身はか弱い老人でしかない。短剣一つで簡単に命は奪えるのだぞ」

何言ってるんだこいつ、と思いながらレカンは領主の顔をにらんだ。

だが、ふざけているようすはない。

まじめだ。

大まじめだ。

か弱い老人。

短剣一つで簡単に命が奪える。

シーラはそういう存在だと、この男は本気で思っているのだ。

考えてみれば、シーラはこの町で長年ただの薬師として暮らしてきた。

大陸歴史上並ぶ者のない魔法使いなどという姿は人にみせなかった。

魔法剣を駆使して大型魔獣をあっさり屠る剣士としての姿も人にみせなかった。

いや、みせなかったことは知っていた。もちろん知っていた。

知ってはいたが、領主やチェイニーなどは、シーラの裏の顔を少しは知っているはずだ。ただの薬師などではあり得ない、知識や能力を持っていることを知っているはずだ。そう思っていた。

だがレカンが思う以上にシーラは擬態がうまかったようだ。

ため息を一つついて、レカンは立ち上がった。

「わかった。よく気をつけるように言っておく」

「わかっておらんではないか! 座れ! あ、いたた」

「〈回復〉」

レカンはもう一度座った。

「らくになった。すまん。だが、何のために君を呼んだと思っているのだ」

「シーラが狙われているから気をつけるよう注意するためだろう」

「ちがう! 注意してさけられる暗殺なら、心配はしない。これは秘密のことだが、コグルスは暗殺を専門にする者たちを養成しているという情報がある」

「父上。〈冷血〉マラーキスを倒してスシャーナを救ってくださったのは、レカン殿です」

「ああ、そうだったな。忘れていた。だが、マラーキスどころではない暗殺の名人が何人もいるようなのだ」

(知ってる)

(そのうちの二人とは戦った)

(確かに腕の立つ暗殺者たちだった)

「レカン殿。単刀直入に申します。今のシーラ様のお住まいでは、暗殺を防げません。防ぐための護衛を配することができません」

「暗殺者も近づきにくいぞ」

「暗殺者は、どんな手段で接近するかわかりません。一切の不審人物は近づけてはならないのです」

「ふむ。どうしたらいいと思うんだ」

「領主館にお移りいただきます」

「は?」

「そして常時守護隊兵士を貼り付けます。信用のおける使用人以外部屋に近づけません」

「その部屋からシーラは自由に出入りして森に行ったりできるのか」

「できるわけがないだろう! ふざけてるのか! あ、いたた」

今度は〈回復〉をかけてやらなかった。

領主は、ちょっと恨めしげな目でレカンをみた。

「それでは護衛態勢を敷く意味がない」

「そんな不自由な生活をすることを、シーラが承諾するとは思えんがな」

「だから君に説得してもらいたいのだ」

「ああ、そのためにオレを呼んだのか。やっとわかった」

「引き受けてくれるな」

「断る」

「なぜだ!」

「不可能だからだ」

「なに?」

「第一に、守ってくれるから領主の館に移れとシーラに言っても、移るわけがないとオレは思う。第二に、移っても、気が向けばどこにでも行く。それは誰にもとめられない」

「君なら説得できるんじゃないか?」

「みこみがあるとしたら」

「あるとしたら?」

「アギトが一対一でオレに勝つことより、少しむずかしいぐらいかな」

「だめではないか。それは、みこみがまったくないと言っているのと同じだ」

「…………」