軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

093 ターニングポイント

【テイム】についてシャロに明かし、本当の意味で彼女と向き合えた気がした。

そう、俺が強く感じていた次の瞬間だった。

――――ピシッ。

「……ん?」

不意に下から鈍い音が聞こえ、視線を落とす。

その直後、腰に携えていた木剣が根元からポキリと二つに折れ、カランカランと音を立て床に落下した。

すると、シャロがすぐに反応する。

「レスト様、そちらはもしかして……」

「ああ、エルナさんから貰った木剣だ。まさか突然折れるとは……」

とはいえ、エルナと初めて出会った日から、この木剣は散々使い尽くしてきた。

今日まで持っただけでも奇跡というべきだろう。

「残念だとは思いますが……これもきっと、レスト様の努力と成長の証なのでしょうね」

「……そうだったらいいな」

俺は木剣の破片を拾い上げながら、シャロにそう返す。

ショックがないわけではないが、確かにシャロの言う通りだ。必要以上に落ち込む必要はないだろう。

(それに今の俺には鉄槌剣や【遷移魔力】がある。戦いそのものには支障ないはずだ)

そんなことを考えていると、しばらく木剣を見ていたシャロが疑問の表情をこちらに向けてきた。

「ところで、先ほどの話に戻りますが……レスト様の秘密について、エルナ様も既に存じ上げているのでしょうか?」

「エルナさん?」

「はい! エルナ様はレスト様の師匠ですし、知る機会があってもおかしくないと思ったのですが……」

俺はこれまでエルナと交わしてきたやり取りを思い出しつつ、シャロに答える。

「いや……俺の本当の実力については指導の中で知られてるし、何か秘密があるってことは察せられてると思うけど、【テイム】について直接伝えたわけじゃないからエルナさんも知らないはずだ」

「そうなんですか? なら、レスト様から秘密を教えていただけたのは私が初めてなんですね!」

何がそこまで嬉しいのか、目をキラキラと輝かせるシャロ。

正確には、リーベも俺の秘密を知っているわけだが……まあ、アイツの場合は過程が色々と特殊だったため例外という扱いでいいだろう。

脳内に浮かび上がってきたリーベの輪郭をポイっと捨てている中(想像内のリーベが「何でよ!」と叫んでいたが)、シャロが再び何かを思い出したかのようにポンっと手を叩いた。

「そうです! エルナ様といえば、パーティー前に伝達魔法が届いたんですよ」

「確か今は、冒険者としての任務中だったよな?」

「はい、今回もそれに関する報告です! なんでもこれから、最大の異変が確認された魔王城跡地に向かわれるとのことで……」

「そうか、魔王城跡地に――――」

…………………………

「え?」

その刹那だった。

何か、言葉では言いようもない強烈な違和感が俺を襲った。

なぜそう感じたのかは分からない。

今のシャロの言葉におかしな点などなかったはず。

別れ際にエルナも言っていたはずだ。大陸中で魔族や魔物による被害が増えているため、冒険者としてその対処に当たると。

その過程で異変の原因を探りに行くのは、むしろ自然な流れだ。

それなのに、この違和感は一体なんだ?

胸の奥が、ざわざわと波立つような感覚。

何か、何か大切なことを忘れてしまっている気がする。

「レスト様? 突然、どうされたのですか……?」

俺の突然の無言にシャロが困惑したような声を上げるが、そちらに反応する余裕はなかった。

(何だ? 俺はいったい、何を見落として――)

違和感の正体を探るように、必死に記憶を遡っていく。

今のシャロの言葉でも、別れ際にエルナと交わした会話でもない。

俺が引っかかっているのはきっと、 そ(・) れ(・) よ(・) り(・) も(・) ず(・) っ(・) と(・) 前(・) の(・) 記(・) 憶(・) ――

「――――そうだ」

――追想の末、俺はようやく そ(・) の(・) 答(・) え(・) に辿り着いた。

それは俺が、レスト・アルビオンとして転生する前の記憶。

すなわち、前世で『剣と魔法のシンフォニア』をプレイしていた時のこと。

王立アカデミーに主人公やメインヒロインたちが揃う中、学長から 今(・) 日(・) 起(・) き(・) た(・) 全(・) て(・) の(・) 事(・) 件(・) について語られる機会があった。

第一王女の襲撃と、そして―――― 同(・) 日(・) 、 魔(・) 王(・) 城(・) 跡(・) 地(・) の(・) 攻(・) 略(・) に(・) 向(・) か(・) っ(・) た(・) あ(・) る(・) S(・) ラ(・) ン(・) ク(・) 冒(・) 険(・) 者(・) た(・) ち(・) が(・) 命(・) を(・) 落(・) と(・) し(・) た(・) と(・) い(・) う(・) 話(・) を(・) 。

それらの話が語られている間、シャロはずっと悲し気な表情を浮かべていた。

これまでずっと、それはセレスティアが彼女のせいで昏睡状態に陥ってしまったからだと考えていたが…… も(・) し(・) 、 そ(・) れ(・) だ(・) け(・) で(・) は(・) な(・) か(・) っ(・) た(・) と(・) し(・) た(・) ら(・) ?

そもそも、他にもおかしいことがある。

エルナは強い。

俺自身がSランクの領域に足を踏み入れた今だからこそ、よりハッキリと分かる。

彼女の実力はSランクの中でも間違いなく最上位であり、俺の遥か先にいる――それこそ、最終決戦に挑む主人公たちのパーティーにいても遜色ないほどだ。

さらに彼女は、メインヒロインであるシャロの師匠でもあるのだ。

そんな重要人物を、 な(・) ぜ(・) 俺(・) は(・) 知(・) ら(・) な(・) か(・) っ(・) た(・) ……?

……いや、違う。

本当は初めからヒントは幾つも転がっていた。

それなのに俺は、きっとその事実を認めたくなくて。

無意識に目を逸らそうとしていた。

だけど今、シャロの言葉が俺の中で散らばっていた全ての 断片(ピース) を繋ぎ合わせていき――やがて、一つの答えにたどり着く。

「そんな……けど、間違いない……」

「レスト、様……?」

もう、その事実から逃げることはできない。

俺は呆然としたまま、たどり着いた答えを口にする。

「その攻略戦で…… エ(・) ル(・) ナ(・) さ(・) ん(・) は(・) 死(・) ぬ(・) 」