軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

071 王都到着

アルビオン領を出発してから数日後。

俺とリーベはフィナーレ王国の王都『ルミナリア』に到着した。

まず初見の感想としては、とにかく壮大の一言に尽きた。

ちょっとした小国程度の規模を誇る都市は巨大な城壁に囲われ、その姿に思わず圧倒される。

城壁を超えると、次に広がるのは活気ある街並みの光景。

多くの国民が笑顔で街を行き交っており、規模・盛り上がり含めて、アルビオン領を遥かに凌いでいた。

その中でも、特に際立つ建物が二つ存在する。

一つは都市の北端――貴族街の最奥に君臨する王城。

そしてもう一つは東端に広がる巨大な学園地区――別名、ダンジョン区とも呼ばれる一帯の中心に立つ、巨大な塔型の建物。

あれこそ『剣と魔法のシンフォニア』の舞台、王立アカデミーだ。

「……本当に、俺はゲームの世界にいるんだな」

アルビオン領や各ダンジョンを含め、これまでもゲームに登場する場所は幾つも見てきた。

しかしやっぱり、王都にはそれらの場所とは一線を画す感動と興奮があった。

できることなら、このままゲームに登場した冒険者ギルドや鍛冶屋にいきたいところだが――

「レスト様、間もなく王城に到着いたします」

――今回の御者を務めてくれた男性が、俺に向かってそう告げる。

この馬車は直接貴族街に向かっているため、残念ながら探索できるのは少し後になりそうだ。

それから間もなく、俺とリーベは王城に到着した。

すると、

「お待ちしておりました、レスト様!」

「お久しぶりでございます」

「……シャルロット殿下、それにエステルさんも」

王城の前には二人の人物が立っていた。

一人は陽光を受けて輝く金色の長髪に、サファイヤのように深い蒼い瞳が特徴的な少女。

シャルロット・フォン・フィナーレ。ここフィナーレ王国の第二王女だ。

もう一人は青色の髪を肩まで伸ばす、凛とした印象を受ける女性。

名前はエステル、シャロの護衛兼メイドである。

二人と簡単に挨拶を交わした後、シャロの視線が俺の後ろに向けられる。

「ところでレスト様、そちらのお方は……?」

彼女の視線の先にいるのは、赤色の髪を結わえた使用人姿のリーベ。

シャロが彼女を見るのは初めてなため、疑問に思ったのだろう。

俺が軽くリーベに目配せすると、彼女は器用にスカートの裾を掴み上げ、優雅に一礼する。

「私はアルビオン家の使用人を務めさせていただいているラブと申します。以前シャルロット様がいらっしゃった際は、事情があって屋敷から離れていたため、今回がお初にお目にかかります」

「なるほど、そういうことでしたか。よろしくお願いいたしますね、ラブ様」

和やかに挨拶を交わす二人を見て、俺はホッと一息つく。

(とりあえず、リーベが魔族であることはシャロにバレていないみたいだな)

色々と対策はしてきたから大丈夫だとは思っていたが……神聖魔法の使い手は、魔物や魔族に対して勘が働くと言われている。

そのため少し心配していたが、とりあえず杞憂に済んでよかった。

(まあ、その意味で最も注意しなくちゃいけない人物は別にいるんだが……)

と、そんなことを考えていると……

「シャルロット様、そろそろ中に。レスト様たちを案内する必要もございますので」

「そうでしたね、エステル。しかしどうしましょう。まずは滞在されるお部屋を確認されますか? それとも先に王城全体を案内いたしましょうか?」

「……ふむ」

部屋を確認するとなると、少し時間がかかる可能性がある。

王女であるシャロ自ら案内を務めてくれているのに、放置してしまうのは失礼にあたるだろう。

本人は気にしないだろうが、ここは王都であり王城。

気を配りすぎて損をすることはない。

となると、ここはバランスを取って……

「そういうことなら部屋の確認はラブに任せ、私は王城を案内していただいてもよろしいでしょうか?」

「かしこまりました」

頷いた後、シャルロットは別の使用人を呼ぶ。

リーべはその使用人に案内され、俺が滞在する部屋を先に確認することとなった。

その際、俺は彼女に意図を込めた視線を送る。

「(念には念を入れて注意しておく。 彼(・) 女(・) と(・) だ(・) け(・) は(・) 会わないように気を付けろよ)」

「(ええ、分かっているわよ)」

「…………?」

そんな俺たちのやり取りを見てシャロは不思議そうに首を傾げるが、そこまで気にすることでもなかったのかすぐに笑みを浮かべる。

そして、そのまま城に向かって手を差し伸べた。

「それでは、ご案内いたしますね!」

その後、俺はシャロに案内され王城を見て回った。

ゲームで足を踏み入れた場所もあれば、初めて見る場所もあり、新鮮な気持ちで回ることができた。

そして一通りの案内が終わった後、客人用の部屋でお茶を飲むことに。

この場にいるのは俺とシャロ、そしてエステルだけ。

そのため、普段の口調も解禁となる。

「案内してくれて助かったよ、シャロ。まあ、王女様直々にってのは少し恐れ多かったけど……」

「そんな、お気になさらないでください。私が自分から申し出たことですから」

シャロは曇りのない目でそう告げる。

まあ確かに、友人相手にこんな遠慮をする方が間違ってるか。

「っと、そうだ。こっちの話がまだだった」

俺は胸元から、シャロの送ってくれた招待状を取り出す。

それを見たシャロは、「あっ」と声を零した。

「そちらは、私が送らせていただいた……」

「ああ、今回の招待状だ。正直、手紙を受け取った時は驚いたんだけどな。シャロならともかく、第一王女殿下の記念パーティーってことだったから、部外者の俺が呼ばれてもいいのかなって」

「た、確かに冷静に考えればその通りですね。レスト様を王都にご招待できる機会だからとつい舞い上がってしまいまして……ですがそちらの心配については問題ありません。私が父に頼んだ時も、『ちょうど良い。一度、彼とは直接顔を合わせてみたいと思っていた』と快く受け入れてくださいましたから」

「なるほど、それはよかっ……ん?」

少し引っかかる内容があったため、俺は首を傾げる。

「一度顔を合わせてみたいって、誰が?」

「私のお父様……国王陛下がです」

「……誰に?」

「もちろん、レスト様です!」

……ふむ。

突然のことに思考が止まる俺の前で、シャロは「そうでした」と呟き立ち上がる。

「そんなことを話している間に、もう時間ですね。参りましょう、レスト様!」

「………………」

どこに? と尋ねることはなかった。

今のやり取りの流れで、これからの展開は何となく察していたからだ。

そして――

◇◆◇

――それから数分後。

「ふむ、其方がレスト・アルビオンだな。娘とは随分、親しくしてくれているようだが……」

「…………」

応接間にて、俺の目の前には金髪に精悍な顔立ちが特徴的な男性――フィナーレ王国の国王陛下でありシャロの父親、ラルク・フォン・フィナーレが座っていた。

ちなみに、部屋にいるのは俺とラルクの二人きり。

(――おい、シャロ! さすがにこれは突然すぎるだろ!?)

俺は思わず心の中で、友人に向かって全力でそう突っ込むのだった。