軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

069 しばらくの別れ

リーベとともに深層を歩くこと数十分、俺たちは そ(・) の(・) 場(・) 所(・) に辿り着いた。

巨大な木々が聳え立つ森の中とは違い、何もない平野が広がっている空間。

中心には巨大な祠が立っており、ひと際強い存在感を放っている。

既に来たことのある俺はさておき、初めてこの空間に足を踏み入れたリーベは驚いた表情を浮かべていた。

「ねえアナタ。ここってまさか……」

「ああ。お前の想像通り――」

俺が言い切るよりも早く、強烈な風が空間内に吹き荒れた。

直後、ビュンッと力強い音を鳴らし、巨大な黒い影が祠の中から姿を現す。

影はそのまま空高く羽ばたくと、両翼を大きく広げてみせた。

艶やかに輝く漆黒の鱗を持ち、全長は25メートルを超えるだろうか。

それだけの巨躯と存在感を持つ魔物――黒竜はひとしきり上空を飛んだ後、俺たちの前にゆっくりと降りてきた。

『ルゥゥゥ!』

嬉しそうな声を出しつつ、ノワールは頭を下げる。

俺はその頭を撫でながら、優しく語りかけた。

「久しぶりだ、ノワール。少し見ないうちにまた大きくなったな」

『ルゥッ!』

前回ノワールと会ったのは、俺たちがここでリーベと戦ったタイミングだ。

その時の全長は確か15メートル程度だったはずだが……俺の実力が増したのと、リーベやアヴァルスをテイムしたことが影響したのかもしれない。

「……やっぱり、その竜の住処だったのね」

久々の再会を噛み締める俺たちの横では、リーベがノワールを見て苦々しい笑みを浮かべていた。

リーベとの戦闘時、勝敗を決定づけたのがノワールの救援だったため苦手意識を持っているのだろう。

しかし、こうして正式に使役仲間となった今、そんな態度のままだと困る。

「っと、そうだ。使役仲間といえば……ガレル、アヴァルス!」

「ガルゥ」

『ゥゥゥゥゥ』

俺は 異空間住居(いくうかんじゅうきょ) からガレルとアヴァルスを召喚した。

せっかくの機会だし、全員で顔を合わせた方が良いと考えたからだ。

俺はリーベとノワールに対し、改めてアヴァルスが仲間になったことを伝える。

ノワールはすぐに歓迎してくれたが、一方のリーベはというと、なぜか呆れたような表情を浮かべていた。

「はあ……アナタ、またおどろおどろしい奴をテイムしてきたのね。センスの無さに呆れるわ――」

『ァァァ!』

「――っ、何よ!?」

センスの無さの対象に自分も含まれているけどいいのか、とツッコミを入れようとした直後、アヴァルスが大声を上げてリーベに斬りかかった。

自分を馬鹿にされて怒ったのだろうか?

いや、そんな感じじゃない。恐らく単純に、リーベを強者と認識し勝負を挑んだだけだろう。戦闘狂だし。

俺としては別に、このまま二人の戦いを見届けてもいいんだが……

挨拶をしにきたこのタイミングで暴れられるのもアレだし、何よりノワールの住処が荒らされるのは勘弁だ。

「止まれ、アヴァルス」

『ッッッ!?』

経路(パス) を通し、俺はアヴァルスの動きを止める。

従順なガレルたちには使っていなかった【テイム】の命令機能だ。

使役対象の意志の強さ次第では打ち破られることもあるが、大抵の場合はこうして動きを制限することができる。

今回の場合、リーベと戦うのはアヴァルスにとってもそこまで優先事項ではなかったのだろう。

すると、リーベは額に流れる汗を拭いながら、俺に不満げな視線を向けてくる。

「……まったく、アナタの配下なんだから初めからきちんと躾けておきなさいよ。はあ、なぜこんな人族なんかに仕えると言ってしまったのかしら……今すぐ契約を解除したいくらいだわ」

……コイツ。

「一応、両者の合意があれば 経路(パス) を切ることもできるが、やってみるか? その場合、お前は敵になるわけだし、ここにいる全員で改めて倒しにかかるけど……」

「なーんて、冗談よ! まったくもう、ご主人様ったら。少しはユーモアを理解してもらわなくちゃ!」

態度を真逆に変え、冷や汗をダラダラ流しながら言い訳するリーベ。

本当に一回、 経路(パス) を切って分からせた方が良いかと思いつつ、さすがに大人げないのでやめておくことにした。

「それより、ちゃんと別れの挨拶を済ませておこう。次に会えるのはしばらく後になるんだからな」

「そんなに王都に滞在する予定なの?」

「ああ。せっかくの機会だし、招待されたパーティー以外に幾つか済ませておきたい用事があってな」

王都といえば、『剣と魔法のシンフォニア』の舞台である王立アカデミーが存在する都市。

主人公たちの基本的な拠点であり、そのため王都付近には様々な価値あるダンジョン、フィールド、アイテムが転がっている。

それを逃す手はないだろう。

そんなやり取りを交わしつつ、俺たちはしばらく交流することに。

途中、ガレル、ノワール、リーベ、アヴァルスの四人が並んでいるのを見て、ふとゲームにおける 俺(レスト) を思い出す。

(そういえば、ゲームのレストが使役していた魔物の数は全部で5体だっけ……)

あと1体テイムすれば、少なくともテイム数としては原作のレストに追いつくことになる。

そんなことを、俺はふと思うのだった――

◇◆◇

それから王都へ出発するまでの日々は、呆気なく過ぎ去っていった。

『アルストの森』での交流を終えた後、俺とリーベはアルビオン家に帰還し、森の異変を解決したと報告。

大方、事故でもあったのではないかと期待していたであろうガドからは、苦々しい顔で迎え入れられた。

「なぜだ、なぜ全て、うまく行かんのだ……」

執務室を出る際、部屋の中からそんな言葉が聞こえるのだった。

それからはしばらく平穏な日常が続き、主にレインと一緒に修行する日々を過ごすこと三日後。

今回はシャロ直々の招待ということもあり、わざわざ王家から護衛用の馬車がやってきたため、それを使って王都に行くことに。

乗るのは俺とリーベ。さすがにリーベを1人アルビオン家に残しておくのもあれだし、他にも色々と考慮した結果、専属使用人として連れて行くことになった。

「なんで愚弟だけが、王家から招待を……」

「クソッ、あの時ガレウルフを倒せていたら、俺たちが誘われていたはずなのに!」

家を出る際、ガドやエドワードたちから怨嗟と嫉妬の入り混じった視線を感じたが……さすがに王家の馬車となると、ガドも手を出そうとは思わないだろう。

道中で襲撃を警戒する必要がないのは気が楽だ。

「それじゃ、出発だな」

「ええ」

こうして俺は、物語の舞台であるフィナーレ王国の王都『ルミナリア』へ向かうのだった。