軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

058 招待状

テイム可能数が4へと上昇した翌日。

朝食を終え、いつもの修行に向かおうとした矢先、使用人が俺に一通の手紙を届けてきた。

「レスト様、シャルロット王女からお手紙が届いています」

「……シャルロット殿下から?」

それを聞き、俺は思わず眉を上げた。

いつもなら剣友修行の連絡はマジックアイテムを使用するため、こうして正式に手紙を届けてくるのは初めてだ。

俺は封筒を受け取ると、手の中で軽く重さを確かめる。高級な紙の感触が指先に伝わってきた。

「ありがとう」

使用人に軽く頷いて部屋に戻り、慎重に封を切る。

中から出てきたのは一枚の手紙と、豪奢な雰囲気を漂わせる招待状だった。

「これは……」

手紙に目を通していくと、その内容に思わず息を呑んでしまう。

何でも約二十日後、王宮にて第一王女――つまりシャロの姉である あ(・) の(・) キ(・) ャ(・) ラ(・) の、18歳の誕生日を祝うパーティーが開かれるという。

当然シャロもそのパーティーに参加するのだが、なんと驚くことに、手紙には俺もその場に同席してほしいと書かれていた。

「そういえば、シャロはこの前……」

『はい。恐らく次に会えるのは、一か月ほど先になるかと……』

『はい! 連(・) 絡(・) をお待ちください』

剣友修行の別れ際、彼女が言っていた内容が脳裏を過る。

「あの発言は、こういう意味だったのか……」

とはいえ、パーティーの主役はあくまで第一王女。

なぜ俺を誘う流れになったかは不明だが……まあ、シャロだからな。彼女の行動力なら、何でも現実にしてしまうということだろう。深く考えるだけ無駄だ。

とにかく今重要なのは、俺がこの招待状を受けるかどうか。

受けるなら王都に行く必要も出てくるし、正直、面倒ごとを避けるためなら断るという選択肢もあるだろう。

ただ――

「 今(・) の(・) 俺(・) の(・) 状(・) 況(・) な(・) ら(・) 、受けた方がいいだろうな」

『剣と魔法のシンフォニア』をプレイしていた時の記憶を思い出しながら、俺は確信とともにそう呟いた。

このパーティーに参加するかどうかで、今後の流れが大きく変わる可能性があるのだ。それを考えれば、是が非でも参加するべきだろう。

そもそもパーティー云々関係なく、 元(・) か(・) ら(・) 対(・) 応(・) す(・) る(・) つ(・) も(・) り(・) ではあったし……

しかしそうなると、新たに面倒な問題が出てくる。

王家からの誘いを受ける以上、事前にガドから許可をもらう必要があるのだが――

(父上としては、何としてでも反対したいところだろうな)

ガドは、俺と王家が親しくなるのを嫌がっている。

しかし立場上、王家の意向を自分から否定することはできない。

俺がシャロの誘いに応じると伝えれば、頷かざるをえないはずだ。

(今回の場合、【遷移魔力】で洗脳も難しいだろうし……やっぱり真正面から説得するのが一番の近道だな)

さらに、パーティーに参加すると決断したことで、俺の頭の中には既に当日までの計画が出来上がっていた。

それも利用してやれば、何とかいくはずだ。

「よし、さっそく行くか」

決意を固め、俺は父の執務室に向かう。

するとその途中、使用人として働いている最中のリーベと遭遇した。

「ちょうどいい、お前もついてきてくれ」

「えっ? ちょ、いきなり何……か、御用でしょうか、レスト様?」

視界の端に給仕長がちらりと映ったからだろう。

リーベは口調を丁寧なものに直し、俺の後をついてきた。

その後、執務室に辿り着いた俺はノックをし、ガドの返事があってから静かにドアを開ける。

「失礼します、父上」

ガドは書類仕事の手を止め、俺を見上げた。

その目には明らかに苛立ちが浮かんでいる。俺への招待状が届いていること自体は彼も既に知っているのだろう。

「……いったい何の用だ、レスト」

「父上も既にご存知かと思いますが、シャルロット殿下から招待状が届きました。第一王女殿下の誕生日パーティーへの出席を求められています」

「そうか、その件についてだな。私の方でも考えたのだが、まだパーティーに馴染みのないお前が行っても粗相をしでかし、迷惑をかけるのが関の山だろう。今回は参加を見送った方が――」

「いえ、参加させていただきます。実は以前シャルロット殿下がいらっしゃった時に先んじて話だけは聞いており、招待があれば参加すると返答してしまったのです。ご報告が遅れてしまい申し訳ありませんが、今から断るとなると、殿下に虚偽を伝えたことになってしまいますので……」

「――ッ!」

ガドは大きく目を見開く。

その様子からは、明らかに怒りがにじみ出ていた。

それを見た俺は、表情に出ないよう注意しながら小さく笑う。

(まあ、普通に説得してもよかったけど……念には念を入れてだ。ここまで言えばもう反対はできないだろう)

その予想は正しかったのか、ガドはプルプルと拳を震わせながら口を開く。

「……分かった。では、参加するように」

「はい。ありがとうございます」

許可を貰えたため、俺は軽く頭を下げ礼を返す。

その際、改めてガドの様子を窺った。

いつ怒りが爆発しきってもおかしくない様子だ。

(……そろそろ潮時かな)

それを見た俺は、以前から考えていた あ(・) る(・) 計(・) 画(・) を実行することを決意した。

俺は顔を上げると、後ろに控えていたリーベを見つつ、ガドに向かって告げる。

「それと、父上。別件ですが、昨日ラブと『アルストの森』を探索中、深層にて大きな異変を発見しました。その調査のため、本日から数日間だけ森に滞在したいのですが、許可を頂けないでしょうか?」

「……え?」

リーベが驚いたような声を上げる。

俺を見つめるその目には、『何を言ってるの? そんなこと聞いてないわよ。てかそもそも、しばらく森なんて行ってないじゃない!』と書かれていた。

俺はアイコンタクトで、話を合わせるようにだけ伝える。

すると、ガドはそんな俺たちのやり取りに気付かないまま、一瞬にして表情を明るくさせた。

その反応はまるで、「やっと願いが叶う」とでも言わんばかりだ。

「そ、そうか、長きにわたる調査の成果がやっと出たのだな。もちろんだ、十分に時間をかけて行ってくるがいい」

「かしこまりました。では、失礼します」

深々と一礼し、俺は部屋を後にする。

その時、

「……そうだ、一生でもかけるといい」

ガドの声が小さく、背後で響いたのだった。