軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

002 アルビオン家の食卓

決意を固めた翌朝。

俺は食卓につくなり、こっそりとため息をついていた。

そこにいたのは父のガド・アルビオンと、第一夫人のジーラ、そして双子の兄エドワード(次男)とシドワード(三男)だ。

「おはようございます」

俺は愛想笑いを浮かべながら、軽く会釈をする。

「……ふん、レストか」

ガドが低い声で俺の名を呟く。

一方のジーラは冷ややかな目線を向けてきた。

ここアルビオン家では、『神託の儀』を終えた者だけで食事を共にするのが慣例になっている。

ここにいないのは王立アカデミーの寮で暮らす長男と、まだ儀式を受けていない妹だけ。

数日前に儀式を終えた俺も、晴れてこの食卓の一員となったわけだが……正直、この重苦しい空気は耐え難い。

シェフが持ってきた食事を食べ始めてから、数分がたったタイミングだった。

「ところで、エドワード、シドワード。お前たちは今日、何をする予定だ?」

ガドがまず双子に問いかける。

「もちろん、剣の特訓です」

「僕は実戦さながらの模擬戦を行おうかと」

エドワードとシドワードが、胸を張って即答する。

それを聞いたガドは満足げに頷いた後、続けてこちらを見た。

「では……レスト、お前は?」

その問いに対して真っ先に反応したのは、俺ではなく兄二人だった。

「父上、ソイツに聞いたところで無駄ですよ」

「ええ。なにせ弟は剣の才能に恵まれなかったのですから」

ニヤニヤと嘲笑う双子。

その横で、ジーラまでが鼻で笑っている。

「二人の言う通りです。所詮は妾の子だったということなのでしょうね」

――わざとらしい煽りだ。

俺と妹は、今はもう亡くなってしまった第二夫人の子どもである。

そのため以前からジーラからの扱いは良くなかったが、レストが外れスキルである【テイム】に目覚めたことで、その傾向はより一層強くなっていた。

(改めて、レストのいた環境がどれだけひどかったか痛感するな……)

何はともあれ、こんな奴らに真面目に答えてやる義理はない。

「……散歩にでも行こうかと」

「散歩!? ははっ、そりゃいい! そこらにいる犬でもテイムして一緒に行ってくればいいんじゃないか!」

馬鹿にするように、声を張り上げて笑うエドワード

しかし、俺は既に彼らの反応などどうでもよく、頭の中は今後のことでいっぱいだった。

ゲームの知識を活かして、着実にスキルを強化していくための計画を立てているところだ。こんな会話に付き合っている余裕はない。

「それでは失礼します」

ろくに口にするものを味わうこともなく、さっさと食事を終える。

俺は真っ先に立ち上がると食卓を後にし、そのまま屋敷の一角にひっそりとある小さな修練場に向かうのだった。

◇◆◇

「……ふぅ」

誰もいない修練場に足を踏み入れ、俺は大きく息をついた。

ここなら誰にも邪魔されない。思う存分、自分のための時間を過ごせるだろう。

昨日心に決めたように、【テイム】の力を最大限に引き出すための特訓を始めるのだ。

「けどその前に……もう一度だけ、このスキルの特性を整理しておくか」

まず大前提として、テイムで使役できるのは俺自身が倒した魔物だけだ。

そのため強力な魔物を味方につけるには、それだけの力が俺にも必要になる。

「となると、やっぱりまずは鍛錬あるのみだな」

肝心なのは具体的な鍛錬内容。

ゲームの世界では、能力値はすべてステータスで管理されていた。

しかしここは現実。色々と調べてみたのだが、残念ながらゲームのようにステータスを参照することはできないようだった。

「とはいえ、やりようはいくらでもあるはずだ」

俺は『剣と魔法のシンフォニア』における能力の上げ方を思い出していた。

一つは魔物を倒し、経験値を獲得することでレベルアップするというもの。

一番ポピュラーな方法でありイメージもしやすいだろう。

「この世界にも魔物を倒すことで能力が上昇する概念はあるようだし、そのシステム自体は生きているんだろう。ただ……」

問題があるとすれば、そもそもどうやって魔物を倒すか……だ。

【テイム】は将来性こそ抜群だが、現時点では戦闘に利用することが困難な弱小スキル。

まずは自分一人で魔物を倒せるだけの力をつける必要がある。

そのための方法には既に心当たりがあった。

それがゲームにおけるもう一つのステータス上昇方法――通称『深夜トレ』だ。

『剣と魔法のシンフォニア』において、一日が終了するタイミングで必ず発生するイベント――深夜トレーニング。

内容としては、『筋トレ』『ランニング』『全力疾走』『魔力錬成』『お祈り』の中から一つを選ぶことで、それぞれに対応する『筋力』『スタミナ』『速度』『魔力』『幸運』のパラメータを伸ばしていくというシステムである。

塵も積もれば山となるとはよく言ったもので、これがなかなか効果のある強化方法だったのだ。

そして何より、『深夜トレ』には大きな利点も存在し――

「この方法なら、魔物を倒さなくても成長できる」

そう。

現時点での実力が劣っていようと、『深夜トレ』なら一切関係ない。

安定したステータス上昇が見込めるはずだ。

さらに、俺がこの方法を選んだのにはある大きな理由があった。

ゲームにおいて『深夜トレ』は一日につき一つまでという制限があったが、今はゲームじゃなく現実。そんなルールを守ってやる必要なんてない。

「毎日全部の特訓をこなせば、もの凄いスピードで強くなれるはずだ……!」

確信めいた予感に、俺は思わずガッツポーズをとっていた。

ゲームの知識を最大限に活用して、誰も追いつけないほどの力を手に入れる。

そのためには地道な積み重ねが欠かせない。

日々の鍛錬を怠らず、着実にこの体を強化していくんだ。

「よし、そうと決まれば……今日からさっそく特訓開始だ!」