軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31.初めての友達

宿に着いてから入浴を済ませると、あっという間に睡魔に襲われ、気が付けば朝になっていました。

いかにもお子様という感じが少し悲しいです。

「おはようございます、お嬢様」

「ナタリー、おはよう。あの後は何もなかった?」

夕食も食べずに寝てしまったのは失敗でした。

色々と揉めた後だったので、兄妹達がどう行動するのか確認するつもりだったのに。

「えーとですね、まずマイルズ様とパスカル様が少々言い合いをしてました。裏切ったとか何とか?でも、こちらはすぐに収束しました」

「では、収束しなかった話があるの?」

「はい。エルフェ様とミュリエル様です」

何でその二人が?接点が無いわよね。

「ミュリエル様がブランシュお嬢様を真似て『お兄様』と呼んでしまいまして」

「……え」

「あ!大丈夫ですよ!エルフェ様がニッコリと素敵な笑顔で『君にはその呼び方を許していないよ』と拒絶しましたから!」

「そう」

嫌だわ。私ったら凄く心が狭いみたい。

ミュリエルが兄様と呼んで甘えるのはとっても不快です。

「……私も双子達を兄と呼ぶのはやめた方がいいかしら」

この不快さはミュリエルも感じているのかもしれません。やられて嫌なことはやっては駄目よね。

「ブランシュお嬢様は真実兄妹なのですから、そこで気を遣うのもおかしな話だと思いますけど」

「それはそうなのだけど、ミュリエルにしてみたら兄を取られると感じてるのかもしれないじゃない?」

「ん~~、それは許していい感情なのかどうか難しいですねぇ。そこはブランシュお嬢様がお譲りするのではなく、愛は減らないという話になると思うんですけど」

愛は減らない?どういうことかしら。

「だってそれって兄弟あるあるですもん。

弟妹が生まれたら必ずと言っていいほど揉めるやつです。

今まで独り占めしていた愛情を分け与えなくてはいけないことへの不満ですよ」

なるほど。今回は後から現れたのが姉だから微妙なだけなのね。

「私の母は、愛は増えるから大丈夫!って説明してくれましたよ。それに、それでも足りないと思うなら、弟妹から不足分を搾取したらいいじゃない、と」

「え、下の子から奪うの?!」

「いえ、下の子達が兄様姉様と慕ってくれるからという意味です。多少目減りしたと感じる両親の愛。でも、弟妹からの愛も増えるから、結果増えてるから大丈夫だと言われて、なるほど!と納得しましたね」

その法則で言うと、私がミュリエルを愛さなくてはいけなくなるのが微妙だけど。

「ナタリーのお母様は素敵な方ね」

「ちょっと雑把なところはありますが、いつも笑顔で何とかなるから大丈夫!と言って笑ってる人です。

父は案外と細かくて小心なのですが、母のおおらかさに助けられているらしく、とっても仲がいいですよ」

「ナタリーはお母様似なのね」

「そう言ってもらえると嬉しいです」

そういえば、ナタリーから家族の話を聞くのは初めてかもしれません。今まで気を使わせていたみたいで申し訳なく思ってしまいます。

「どうしました?」

「…ううん。ミュリエルがどう考えてるかなと思って」

「こればっかりは仕方がないですよ。

だって、エルフェ様はブランシュお嬢様だから兄と呼ぶのを許したんです。妹だからその恩恵をだなんてやっぱりおかしいですよ」

「……そうね」

でも、シルヴァン兄様に甘やかされるのは本当に幸せで、ミュリエルが羨ましくなるのは当然だと思えてしまう。

「私も甘え過ぎないようにしなきゃ」

思わずそう呟いてしまいました。

だって、このままでは本当に駄目な子になりそうでこわいのです。

「えー、どうしてですか?エルフェ様はブランシュお嬢様をかまっている時、とっても幸せそうですよ?

それなら遠慮なく甘え倒せばいいじゃないですか」

……甘え倒すって正しい表現なの?

「でも、いつまでも側にはいてくださらないじゃない?」

「だからこそですよ!甘えられる時に甘える!せっかくの両思いなんですから、できるときにやるべきです!」

「……ナタリーは言葉のチョイスを間違えてると思うわよ?」

でも、やっぱりナタリーも大人だ。

私よりもたくさんのことを知っているもの。

先生に習うことはできない、でもきっと大切なこと。

「ナタリー、これからも色々と教えてほしいわ」

「私がですか?!」

「うん。だってどうやら私は世間知らずみたいなの。それに、シルヴァン兄様にも友達を作るようにすすめられたわ。

それなら私は一番の友達はナタリーがいい」

「…でも、私はただの使用人で」

「使用人で、でも私のお姉様みたいな存在で。それから一番のお友達なの。駄目かしら」

こんなお子様とは友達にはなれないかな。

「もう、もう、もう~~~!!

お嬢様はどこまで私をメロメロにさせるんですか?!

嬉しいです!でも、人がいる前では無理なので、内緒のお友達でお願いします!」

やっぱり使用人とお友達になるのは駄目なのね。

「うん。ちょっと残念だけど、それでも嬉しいわ。

お友達になってくれてありがとう」

「こちらこそです!」