軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27.決裂

エマ、あなたはどうして何処にもいないの?

本館に行けば会えると思った。

でも、あなたはいなかった。

エマの事情で辞めたのならそれでいい。

だけど、本当の事を知るのが怖くて今まで聞くことができなかった。

「ああ、思い出した。その乳母ならお母様がクビにしたはずだよ」

「そんな奴いたっけ?」

「3年くらいはミュリエルの乳母の一人だっただろ?でも、余計なことをするのが目に余るとお母様が」

「なんで?」

「え、何が?」

ミュリエル専任の乳母ですらなかったの?

そんな、いなくても困らないのなら私のもとに返してくれたらよかったのに!!

「気に入った使用人だったのか?だが、主の意向を汲み取れないような能力の足りない者を雇い続けるわけにはいかないだろ」

「……エマは優秀だったわ。ずっと…ずっと私を大切に育ててくれた、とても優しくて優秀な乳母だったわ」

「子供の目にはそう見えても、雇い主が不要だと言えばそれまで。その程度だったんだよ。

こちらはお金を払っているんだ。役に立たなければ切られる。当然だろう」

……何を 賢(さか) しらに語っているの。

何も知らないくせに。エマがどれだけ私に尽くしてくれたのか知りもしないくせにっ!!

「そう……。それがあなた達の考えなのね」

役に立たなければ切り捨てればいい。あなた達はそういうのね?

「……では、自分達の首の心配するといいわ」

「は?何を言って」

「あなた達は今回の件で、後継者としてペナルティが付いたのを忘れたの?」

「それはっ、だから魔法塔に行くんじゃないか」

「まさかそれですべてが元に戻るとお考えなのかしら。さっきご自分で言ったではありませんか。

役に立たなければ切られる。

……ええ、そうですわね。ご理解くださっているのなら、私は心置きなく戦えますわ」

だってあなた達に情は必要ないのでしょう?

エマがお母様の意向に従わなかった?それはきっと、私にしてくれていたようにミュリエルに対しても愛情をもって仕えていたのでしょう。

だってあの人は私にも言っていたもの。

使用人とは道具であり、そんなものを慕うような愚か者にはなるなと。

あなた達もそう育てられたのでしょう?

だから恨むべきではないのかもしれないわね。

でも、どうしても許せないの。人を人として扱わないことに違和感を感じないあなた達が心底気持ち悪い!

「まさか…、お前は後継者の座を狙っているのか?!」

「いけませんか?私だって権利はありますもの。

何なら、あの両親の教育を 受(・) け(・) て(・) い(・) な(・) い(・) という利点すらある。

そして何よりも、この年で独学で魔力回路のリンク治療を成功させた。

どうです?なかなか良いスタートを切れていると思いませんか?」

あなた達はどう?これからの矯正はどれくらいかかるのかしら。

「……だが、お前だって隔離されていて性格が歪んでるじゃないか」

「まあっ、実の妹に向かってそんなことを仰るのね?本当に情というものが存在しないみたい」

「やめて!兄様をいじめないで!姉様なんてどこか行っちゃえっ!」

幼いってすごいわ。世界は自分を中心に動いているとでも思っているの?望めば何でも叶う世界なんて存在しないのよ。

「なぜ?嫌ならばあなたがどこかに行けばいい。

私はこのせっかくのチャンスを逃す気はなくなったの。公爵家で教育が受けられるなんてこんなにも光栄なことはないものね?」

シルヴァン兄様がいなくてよかった。

こんなにも酷いことを平気で言える姿を見られたくない。

「これは何の騒ぎだ」

「お祖父様?!いえ、あの、ちょっとした兄弟喧嘩というか、その」

狼狽えちゃって馬鹿みたい。

「お祖父様、このような場で騒ぎを起こしてしまい誠に申し訳ございません。

私が生まれた時から側にいてくれて母のように慕っていた乳母が母上に無能だとクビにされていたと聞き、冷静ではいられませんでした」

「マイルズ、本当の事か」

「えっ?!あの、本当ですが、でも僕達はそんなこと知らなくて!」

「良いのです。あなた達が使用人を道具としか見ていないと分かりましたから。そう教えられてきたのですから仕方がないのでしょうね」

「僕はそんなこと言ってないっ!」

……これ以上追い詰めては駄目ね。

「騒ぎを起こした罰は受けます」

「……ブランシュを罰するつもりはないが」

そう言うと、お祖父様は私の頭をグシャグシャとかき回した。

…これは撫でているつもりなの…かな?

「お祖父様?」

「いや…、本当にお前達には申し訳ないことをしたと思ってなぁ」

それはお母様のこと?そうね。嫁がせず、修道院にでも放り込んでおいてくれたらこんなことにはならなかったと思うわ。

そうしたら私は生まれていないけど。

「マイルズ、パスカル。お前達は今、貴族としてやり直せるかどうかの瀬戸際にいるのだという自覚はあるか?」

「は、はい。だから魔法塔に」

「では、それまでは何も変えないでもいいと思っているのか。それは随分と甘いぞ。なぜなら、君達は残念ながら既に裁かれた身だからだ」

「そんな……それではまるで罪人……」

「そうだな。難しい魔法を使っている人間の邪魔をし、下手をしたら二人の人間を殺めてしまうところだった。

それは十分に罪なのではないのか?」

なぜいまさら蒼白になるの?もしかして、本当はまだ理解できていなかった?

「ちょっと肩を掴んだだけのつもりだったか?

だがな、人はそのちょっとしたことで死ぬこともある。

そうしてそれは、知らなかったでは済まされないんだ」

「あ……でも、でもブランシュは元気で」

「それはブランシュがたまたま優秀でミスを何とか防いだだけだ。

なあ、マイルズ、パスカル。君達は自分達がまだ一度も謝っていないことに気付いているかい?」