軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

女子会

それからまた一週間カナの訓練は続いた。

モンタナが使えるようになってしばらくすると、感性で纏いを使っているアルベルトとレジーナも発動できるようになった。とはいえ、発動率は五割程度なので、思うまま操れるようになるまで訓練は終わらない。

そんな訓練の毎日を送っている中でも、日が暮れた頃には皆それぞれ自由に過ごすようになる。

イーストンがアルベルトたちに捕まって訓練相手をさせられていたけれど、それもまた自由の一端である。夜間戦闘の訓練をするにはおあつらえ向きの相手なので仕方がない。

イーストンも理由をつけて強請られては断ることもできず、最近は頻繁に相手をしてやっていた。

いつもなら訓練に参加しているハルカだったが、今日はシャディヤに呼び出され、小ぶりな焚火を囲んで座っている。

「今日は時間を取ってくださってありがとうございます。私、その、いつかこうして女性で集まってお話をしてみたいなと思っていたんです。ずっと宿の仕事ばかりしていたので、中々そんな機会にも恵まれず……、えへへ」

そう、女子会だった。

はじめは断ったハルカだったけれど『訓練、お忙しいですものね……』とどこかユーリの面影がある顔で落ち込まれたら、参加しないわけにはいかなかった。ちなみにレジーナは『めんどくせぇ』の一言で断ったのだけれども。

円座の一角には、そわそわとしながらちょっと小さくなっているカナまで混じっているのが驚きだ。いくらカナが穏やかで話しやすい相手とはいえ、シャディヤのコミュニケーション能力の高さには脱帽である。

流石長いこと宿の看板娘をやっていただけある。

参加を表明してしまっては、ハルカもただ静かに時が過ぎるのを待つばかりだ。

つまらないとか言うことではなく、単に居心地の問題である。

参加メンバーは、レジーナ以外の女性全員だ。

珍しいところだと、サラの母親であるダリアも参加している。シャディヤと一緒に料理をしていることもあり、冒険者でない二人の仲は良好なようだ。

「それで、今日はどんな話がしたくて集めたの?」

シャディヤが腰を下ろし、適度に雑談をしながら場が温まり始めた頃、エリがシャディヤに尋ねた。いつも女性達に囲まれて過ごしてきたエリは、この場を回すには最も適当な人物だろう。

「それは、その、えへへ」

「なによ、そんなはにかんで」

「そのー……、皆さんお綺麗な方が多いじゃないですか、恋とか、されているのかな、って……」

「恋……?」

と、ハルカにしなだれかかったまま首をかしげる千年吸血鬼。

ふふっと笑うダリヤに、そーっと誰とも視線が合わないように目を伏せるハルカ。

「私はその、恥ずかしながら恋をした経験がないので……! 皆さんのお話を聞かせてもらいたいな、と」

当然そんな水のむけ方では誰も話し始めない。

シンとしてしまった場に、仕方なく言葉を差し入れたのはダリアだった。

「私は娘もいるし、恋とは違うけれど」

「き、聞かせてもらっても?」

「普通のお話よ。熱心に働く顔を知っている程度の相手がいて、真面目に告白されて、真面目にお付き合いをして、普通に結婚をしたわ」

思えばコート一家は、三人そろってちょっと不器用で、全員が相当に生真面目だ。

おかげで暴走してしまったり、すれ違いがあったりもするのだが、経緯を話されるとその恋愛模様が想像できる。

「ドキドキとか、この人だ、とかっていうのありましたか?」

「恥ずかしいわね。……そうね、この人となら幸せになれるんじゃないかしら、って思ったわ」

「お、おおー……」

どちらかと言えば照れているのはシャディヤの方だ。

頬を両手で挟んで声を漏らしている。実に楽しそうだ。

「……えっと、そしたらその、コリンさんはどうですか?」

「私かー……」

相手が確定しているコリンが話を振られるのは自然な話だ。

「アルベルトさんから告白とか……!」

「ないない、期待するようなものは何もないよー」

手を振って苦笑したコリンだったが、皆の視線を浴びて恥ずかしくなったのか、少しだけ俯いて、まるでいいわけでもするかのように続けた。

「でも、それでいいかなーって。アルもそうだと思うし……」

「そういう関係って素敵ですよね……。私は幼馴染いないからなぁ」

地元から離してしまったハルカとしては胸が少しだけキュッとする話だ。

恋愛の話をしているからには、きっと興味があるのだ。

何か考えてあげないといけないなと思いつつ、メインの話は自分に関係ないものとしてぼんやり聞いている。

「そうだ! カナさんはどうでしょう!? なにかその、やっぱり情熱的な恋とか……」

「え!? いやぁ……、私はもうおばあちゃんだからなぁ」

「そんなことないです、すごくお綺麗ですし……!」

「うん、ありがとう。ええと、孫がいるんだ、私」

「そうなんですね、お孫さんが……、ええ!?」

「孫というか、ひ孫が三歳ぐらいになるんだ。これがまたかわいいのだが、ひ孫ともなると構いすぎても邪魔になるからなぁ……、それが最近の悩みだ」

百数十歳にもなると、恋愛して結婚してを順調にやっていけば、確かにひ孫がいても何もおかしくない。とはいえ、この若々しい女性からひ孫がいると言われると絶句してしまう。

今のところ他の長命の人で子供がいるらしいと聞いているのはクダンくらいだったが、これはそれ以上の衝撃だった。特に特級なんてなると、自由人が多すぎて子供がいないイメージが強すぎる。

「ど、どんな方がお相手だったんですか?」

「うーん……、普通の人だったかな。普通に働いて、普通に生きて、普通に老いて亡くなった。いつも私を笑って迎えてくれた。……笑うと頬にえくぼができるのが好きだったな」

「素敵な方だったんですね……」

「うん、私にはもったいないくらいに」

しんみりとした空気。

これを変えるためにはそれなりの話題が必要だ。

特級冒険者のしんみり話に対抗できる話題。

冒険者達の視線がそろりとハルカの方へ向いた。

まだごまかしがきく状態だったが、カーミラがそれに反応してしまった。

「なにかしら、皆こっちを見て」

全員の視線がカーミラではなく、ハルカの下へ集中した。