軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

素直になれば

エニシが吹っ切れた翌日。

緊張した面持ちのエニシは、ハルカに話したのと同じように、仲間たちにも協力を申し出た。

「いいんじゃね。【神龍国朧】行ってみたかったし。リョーガみたいなのがいっぱいいるんだろ? いい訓練になりそうじゃんか」

アルベルトは迷うことなく賛成した。

国を救うだとか、運命だとか、そんなのはピンとこないけれど、国へ帰るのに協力してもらいたい、というならわかりやすい。

「私もいいよー。依頼って形にしてもらって、うまく転べばいい実績になるし、先にも色々繋がる話だしさ」

元から話をこっそり通していたコリンが同意すれば、あとはモンタナ次第になる。

イーストンは反対意見がない限り、方針にあれこれ言うことは滅多にないし、レジーナに至っては面白くなさそうなら行かないだけだ。

どちらかというとエニシを厳し目にみていたモンタナだったが、今回はわずかに穏やかな表情を見せた。

「いいです。【朧】の刀剣鍛冶技術、興味あるですよ」

エニシには、なぜモンタナが今までよりも柔らかい反応になったのかがわからない。わからないながらも、協力を取り付けられたことにホッとして、素直に頭を下げてみせた。

「ありがたい、恩に着る……」

モンタナは、尻尾の毛先を整えながら、上目遣いでエニシを見ながら言った。

「お礼はうまくいった時でいいです。……もし上手くいかなくても、その時はまたここに帰ってくればいいですよ」

「う……、い、いいのか? な、なんだ、そんな急に、急に……」

エニシが常に抱いていた、ほんの僅かな敵意のようなもの。おそらくそれは、最終手段の一つとして、ハルカ達を裏切る覚悟のようなものだった。

何を犠牲にしても、国へ戻り、使命を果たさんとする志だった。

今はその考えが改められた。

最悪運命を再び見れるようにならなくても構わない。

ただ、その理由を探りつつ、今のままの自分の姿で、ハルカ達に協力を仰ぎながら、何かできることがないかと模索することにしたのだ。

消えた敵意を、モンタナは敏感に察知して、態度を軟化させたのだ。

それさえなくなってしまえばエニシは、可愛らしい舞を披露してくれる、拠点の人気者だ。ちょっとドジで世間知らずなところもあるが、それもまた愛嬌である。

「でも、年齢はみんなにちゃんと言ったほうがいいと思うです」

「それは、その、今更……。言わなければならぬか?」

「長い付き合いになるかもしれないのに、嘘をつき続けると疲れるですよ?」

「そうだな、うむ、そうなのだがな……」

『エニシちゃん』と呼ばれて可愛がられるのを心地よく思っているエニシである。無条件で甘やかされる立場を捨てるのにはそれなりに勇気がいるらしい。

というか、今まで騙していた分軽蔑されたらどうしようという、非常に人間臭い葛藤であった。

まぁ、この拠点においては千年生きている吸血鬼も、特に年齢を告げずに過ごしているので、そのまま嘘を貫き通しても構わないのだけれど。

あとは本人次第である。

「んなことより訓練だ、訓練。今日はまた訓練していいんだろ? 俺、休んでる間にぼーっと昼寝してみたんだよな。目が覚めた時、めっちゃ眩しくてさ、今なら上手くやれる気がする。カナさんどこにいっかな?」

「あっちです」

「よし、いくか!」

やる気満々で跳ねるように立ち上がったアルベルトは、モンタナが指差した方を向いて、レジーナの背中を見つけて早足で歩き出した。

モンタナが指差した瞬間、立ったまま話を聞いていたレジーナが先行していたのだ。

足音に気付き、振り返りもせず足を速めるレジーナ。走り出すアルベルトと、それに呼応するレジーナ。

「先に着いたからって何もないと思うんだけど……」

眠たそうな目でそれを見送ってぼやくイーストン。そろそろ眠たくなる時間だ。

それから口を手で押さえながら小さく欠伸したイーストンは、エニシの方を見て一言告げた。

「僕も君を送るのは手伝うよ、あくまで【竜の庭】の冒険者の一人としてでよければね」

「良いのか……? 不都合が起こるやも……」

「【神龍国朧】が荒れ果てたら、結果は大して変わらないよ。それに、僕の顔を知っているのなんて、取次をしている巫女達か、たまたま神龍島で会った人ぐらいでしょ」

「ではうまくいった時は【夜光国】と……」

「いいよ、そういうの。うまくいった時は、依頼達成として【竜の庭】にちゃんと報酬を支払うってことで」

「そ、そうか……」

「うん、余計なこと考えなくていいから、その時が来るまでのんびり過ごしたらいい。人生たまには休息も必要だよ。……じゃ、おやすみ」

ひらっと一度だけ手を振ってイーストンは拠点の中へ引っ込んでいった。

それを見送りながらエニシが唸る。

「うーむ……」

「なに、どしたのー?」

コリンが尋ねると、エニシは難しい顔で答える。

「いやな、巫女のうちでもイーストンはもてもての、めちゃもてだったのだ。あれは罪な男だ」

「そうですよねぇ、イースさんはモテますよね」

ハルカをチラリと見たエニシは『ハルカも大概なのでは?』と疑問を抱いたが、不思議と拠点内にハルカに恋心を抱くものがいないことに気づき「うむ、そうなのだ」と同意だけしておくことにした。