軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

対抗策

話の真ん中にいなければいけないはずの二人が呆けていたわけだが、カナはハルカが注意をもらったタイミングで、いかにも自分はちゃんとしてましたよとでも言いたげに、キリッと表情を引き締めた。

「ええっと……そうですね……」

浸っていたからといって、話を聞いていなかったわけではない。

ハルカの認識としては〈混沌領〉に新たな勢力の存在が明らかになったわけだ。とはいえ〈混沌領〉は実は相当に広い。

どのくらい広いかというと【独立商業都市国家プレイヌ】が丸々一つ収まるくらいには広い。リザードマンたちが治めている地域というのは、そのほんの一部分にすぎないのだ。

近そうで遠い話である。

「……カナさんはどうしますか? すぐに残党の討伐に?」

「そうだな、準備をしたらすぐに、と言いたいところだが、一度偵察を入れておきたいな。奴らがどれだけの規模の拠点を築いているかがわからない」

「……イースさんは、行きますか?」

ハルカの問いかけに、イーストンは薄く笑った。

自分が何をしたいのか、どうするつもりなのか、言わずともわかっていることが少し嬉しかった。

「そうだね、カナさんが嫌でなければ同行させてもらいたいな」

「じゃ、俺達も参加だな」

当たり前のような顔をして言い放ったのはアルベルトだった。

「そですね。僕たちが一番近くに住んでるですから」

「イースさんが行くならそうなるよねー」

言葉にしないまでも、やる気に満ち溢れているのはレジーナだ。

目が爛々と輝いている。

「私達は留守番してますわ」

こちらもまた当たり前のように言い放ったのは、いつの間にかユーリを膝の上に抱き込んだカーミラだった。

誰もがそうするだろうと思っていたから、そうだねとみんなから頷いてもらえて安心のカーミラである。

「君たちも吸血鬼の不死性は見たよね? 結構危ないと思うけど」

「俺達冒険者だぞ」

アルベルトが胸を張って答えると、イーストンが苦笑した。

「答えになっているような、いないような」

「……色々と理屈はありますが、イースさんが行くなら行きます」

「ハルカさんは止める方にまわってくれてもいいんだけどな」

嬉しい気持ちと裏腹に、危険な場所に連れて行きたくないという思いもあるイーストンだ。いくら仲間だといっても、報酬もなく、間違いなく危険な存在が待っている場所に連れて行くのは気が引ける。

「イースさんさー、いつだか、〈混沌領〉の最東端に街を築いてくれたら、交易に便利だとか言ってなかったっけ?」

悪そうに見える顔で笑ったのはコリンだ。

確かに言った。

イーストンですら忘れていたようなことだが、冗談でそんな話をした記憶が確かにあった。

「その吸血鬼の拠点手に入ったら、お金になるんじゃない?」

「……なるね。【神龍国朧】と【夜光国】の中継地点にすることができる。港町として手を入れられるのなら、だけどね。いや、お金の話はいいんだけどさ、君たち南方大陸の村で吸血鬼と戦ったときのこと覚えてるかな? あれより強いのがうじゃうじゃいるかもしれないんだよ?」

一人ずつに手間取っていたらかなり危ない。

イーストンはアルベルトたちの実力を侮っているつもりはないけれど、吸血鬼の不死性のことも熟知している。

「敵がいっぱい出て危ないのはイースも同じだろ」

「そうかもしれないけど……」

眉間にしわを寄せたアルベルトに、イーストンは歯切れの悪い返事をした。

心配なのだ。

イーストンは自分を兄のように慕ってくれる、アルベルトたちのことがただ心配だった。アルベルトからすればそれが侮っているということなのだが、それに気づいていない。

お互いに見つめ合っていると、カナがおずおずと手を上げてみせた。

「あの、イーストンさんは手を貸してくれる、ってことだろうか?」

「邪魔にならなければ」

「いや、もちろん歓迎するのだけど……、それで、アルベルト君たちも手を貸してくれようとしているけれど、吸血鬼と戦う際に、その不死性に対して不安がある?」

「……率直に言えばそうだね」

「……ええと……、もし協力をしてくれるのであれば、私がその、武器に吸血鬼の再生を阻害するような魔素を宿らせるやり方を……、もちろん嫌でなければなんだが、教えてもいいのだけれど……」

話を聞きながら、では自分には何ができるだろうと考えての提案だったのだろう。

ただ、控えめな性格をしているので、アルベルトたちにとって相当に良い提案をしているというのに、えらく自信なさげな、周りの顔色を窺うような提案の仕方だ。

「いいのか!?」

座っている姿勢から、手をついてバタバタとカナの方へ寄るアルベルト。

「あ、ああ、嫌じゃなければだが……。時間も少しかかるかもしれないが、あちらとしてもすぐに次の行動を起こすとは思えないし……」

英雄の直接指導だ。

しかも表には出ていない技術であり、機会を逃したらこの先学べるかもわからない。

「手を貸してもらえるなら一人当たりに礼金を出すこともできるんだが……、秘密裏に済ませたいから、申し訳ないけれど冒険者ギルドを通すのはちょっとな。その代わりとなるとも思えないんだが」

あれこれと言葉を付けたすカナの近くには、いつの間にかモンタナとレジーナも寄ってきている。

「頼む」

「よろしくです」

カナは他の面々の顔を見て、反対する者がいないらしいことを確認すると、ようやく納得したように大きく頷いた。

「うん。それじゃあ、しばらくよろしく頼むよ。……一人だけで向かっていくのは、少しばかり心細くはあったんだ」

話がどんどん進んでいく中ハルカは、ポロリと本音を吐露したカナを見ながら、かわいらしい人だなと、ふんわりとした感想を抱いていたのであった。