軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

双子とおしゃべり

じっくりと時間をかけてコーディと話をした翌日の昼前。

ハルカ達はオラクル総合学園へやってきていた。

「お、久しぶりじゃんか」

学生がたくさん集まっているカフェテリアで待っていると、相変わらず動き全般が雑な双子の妹の方、テオことテオドラが片手をあげた。

あらかじめ連絡を入れて待ち合わせしていたのだが、テオドラが姿を現すと、ハルカ達に集まっていた学生たちの視線がいくらかそちらへシフトしたので、すぐにそのことに気づくことができた。

背中側で編み込んでいる伸ばした髪を揺らし、意気揚々と歩いてくる。

「一年ぶりぐらいか。相変わらず無駄にでけぇなアルベルトは」

「無駄じゃねぇよ」

ばしっとアルベルトの肩を叩いてから、勝手に近くの椅子を引っ張ってきて、すぐ近くに腰を下ろす。嚙みつくような喋り方と態度で、普段のアルベルトだったらもっと噛みついていくところだが、テオドラとは知った仲だ。

鼻を鳴らして反論する程度にとどめる。

「んで、そっちにいったサラは元気にやってんの?」

テオドラが座るやいなや尋ねてきたのはサラのことだった。

仲が特別良かったわけではないようだが、同じ飛び級組としてその存在は認知していたようだ。

「元気ですよ。最近冒険者として活動を始めたところです」

「は? 一年間何してたんだよ」

椅子に斜めに座って足を組んだテオドラは、背もたれに腕をひっかけて眉を顰めてみせる。

スカートの下に長いパンツをはいているので恥じらいも何もあったものではない。

ハルカはなんとなく女子高生が制服の下にジャージを履いていた姿を思い出しながら答える。

「魔法の訓練を」

「ハルカに教えられんの?」

「いえ、私の師匠に」

「師匠? 誰だよ、レオじゃねぇの? そのうちハルカに魔法を教えるって張り切ってたから、がっかりするぜ?」

「ほとんど実践的なことしか教わっていないので、基礎的なことや学術的なことは後からレオ君に教わろうかなと」

「ふーん。ま、もう少しだけ待ってろよ、総合学園もさっさと卒業してやるからさ」

自信たっぷりに笑うテオドラは、きっと宣言通りにさっさとオラクル総合学園を卒業するつもりなのだろう。座学はレオンの方が得意だったはずだが、この表情だとかなり頑張っているのかもしれない。

テオドラは続いてニヤつきながらハルカの方へ身を乗り出した。

「で、師匠ってどんな奴?」

「ええっと……、獣人ですね」

「へぇ、じゃあアルみてぇにでかい奴?」

「いえ、モンタナよりも少し背が低いです。こう、ぐるっとした角と、長い竜のような尻尾が生えています。桃色のくせっ毛で、見た目は子供ですね。私よりもずっと年上ですが」

「なんだそれ? 変な奴だな」

説明しながらハルカもそう思っていたので、テオドラの反応にも文句は言えない。

そこへ女性たちの注目を集めながら、レオンが歩いてやってくる。

ハルカがこれまで会っただれよりも、物語に出てくる王子様らしい見た目をしている。

昨年あった時よりもさらに少し背が伸び、すらっとした姿になっていた。

イーストンと並んだら、光と影の王子様対決ができそうだ。

「すみません、遅れました。お久しぶりです、ハルカさん、モンタナ」

「あのさー、去年も最初そっちだけに挨拶しなかったっけー?」

「そうでしたか? お久しぶりですコリンさん、アルベルトさん、それにイーストンさん。…………あの、まさかそっちの子は、ユーリ君……じゃないですよね?」

ちょこんと椅子に座るユーリを見ていぶかし気に尋ねるレオン。

「んなわけねぇじゃん。……いや、でもじゃあ何で一緒にいるんだ? ハルカの子供?」

「テオ、それ面白くない」

テオドラの軽口に、レオンが目いっぱい顔をしかめた。

赤ん坊の時の姿を知っているだけに、それから経過した時間に対しての成長を信じられなかったのだろう。しかし見た目の特徴は一致しているし、情報としてハルカ達と共にいることも知っている。

「ユーリです。大きくなったですよ」

「えぇ……。でも、モンタナが冗談言うとも思えないし……」

「子供の成長って早いですよね」

「ハルカさん、それ使い方間違ってますからね。でも、本当にユーリなんですよね?」

しみじみと言ったハルカに、レオンが冷静に反論する。

「だからそうだって言ってんだろ。ずっと一緒にいたんだから別のやつなんかじゃねぇよ」

テオドラとレオンは同じタイミングでユーリへと歩み寄り、その場にしゃがんで少し低い視点から見上げながら話す。

「憶えてないかもしれないけれど、僕たちと君は昔会ってるんだよ。ずいぶん大きくなったね」

「ホント、元気そうじゃん。俺昔、お前のこと抱っこしちゃいけないって止められたんだぜ。今なら持ち上げてもよさそうだな。お、おっも、中身詰まってんなぁ」

テオドラは突然立ち上がってユーリのわきの下に手を入れ持ち上げる。

「テオ! やめなよ、怖がるでしょ」

「怖がってねぇじゃん。俺のこと覚えてるもんな? 寝っ転がってるときずっとにらめっこしてたし。前見たときは、あんなに小さかったのになぁ、すげぇや」

「はぁ、覚えてるわけないでしょ。ごめんね、ユーリ君」

ユーリはプランと持ち上げられたまま、テオドラとレオンの顔を交互に見て笑う。

「憶えてる。二人とも、よく見に来てくれてた」

「ぷっ、この年で冗談言うんだな」

ユーリが真面目に答えたことに対してテオドラが笑う。

するとユーリは何度か瞬きをして口を開いた。

「テオは、僕のほっぺたつつきながら、俺も冒険者になろうかなって言ってた」

「……誰か見てて教えたのか?」

テオドラがハルカ達を振り返るが全員が首を横に振る。

「レオは……」

「ちょっと待って、ユーリ君待ってね。本当に覚えてるみたいだね」

ユーリはハルカとレオを順番に見る。

「何の話してんだよ、気になるから最後まで話せ」

「アルベルトは黙っててもらえる?」

「は? なんだお前急に」

「繊細な話なの、入ってこないで」

きっと美形のレオに睨みつけられてアルベルトがたじろぐと、テオドラが笑いながら肩を叩く。

「お前が悪い」

「相変わらずわけわかんねぇな、お前ら」

アルベルトには繊細な少年の心なんかわからない。

レオンにとって、『ユーリ君はハルカさんにいっぱい構ってもらえていいよね』なんて言葉は、年を取るほど人に知られたくない言葉だった。