軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リザルト

さて今日はどうしようと、ハルカたちが火を囲んで話し合っているところへ、ゴンザブローが手を上げてやってきた。

「おー、早い帰りじゃな。足手まとい共連れてたから儂のが早いと思っとった」

「あ、師匠、商人見つかったの?」

「死んどったわ。金目のもんだけ奪って帰ってきたが、大したもん持っとらんかったな」

プラプラと指先で革袋をつまんで揺らすと、ちゃりちゃりと音がする。

「最初から払う気なんぞなかったのかもしれんな。今となっちゃよくわからんが」

「殺して奪ってきたんじゃねぇだろうな」

「嘘つくようなやつはそうなっても仕方ないじゃろ」

「え、ホントにそんなことしたの?」

「どうじゃろな。ま、お前らには関係ないじゃろ。とんだ無駄働きじゃったなぁ。適当に酒でも買ってまた旅に出るかのう」

見かけたから立ち寄ってみただけで、用事があったわけではないようだ。指に引っ掛けた袋を揺らして音をだしながら、ゴンザブローは門へ歩いていく。コリンとは久々の再会だったろうに、戻ってきたから少しのんびり話をするということもないようだ。

殺したのか殺してないのか。モンタナに聞けばそれははっきりするのかもしれないけれど、三人ともわざわざ聞くことはしなかった。

冒険者ギルドを通さない契約というのは、個人と個人の約束に過ぎない。もし依頼であれば、間に冒険者ギルドが入ってとりなしてくれることもあるかもしれないけれど、今回の場合はゴンザブローを止めるものなど誰もいない。

手数料がかかったとしても人々が冒険者ギルドを利用するのは、いざというときの保険のようなものだ。組織に属している人間の方が、積み重ねてきた経歴がある分少しは信用することができる。

わざわざ山の上に商人の死を確認しに行くものがいない以上、ゴンザブローが殺人を犯したという証拠はどこにもない。

街の外での生死は、訴え出るものがいなければなかったも同じである。

「あの商人さー、お金もないのにあんなにたくさん人を連れてって、何をするつもりだったんだろうね」

コリンの疑問ももっともだ。

ただ、すでにその答えを知っているものはどこにもいない。

「もしかしたら本当に、ただ神鉄とかを探しに行っただけだったのかもしれませんよ。やり方が良くなかっただけで」

「いやー、でもさ、他所から来たってことはここまで旅をしてきたってことでしょ。そんな勝算の薄い挑戦するかなぁ」

「手持ちがなくなって、一発逆転狙ったんじゃないです?」

「ああ、それかも。ってことは若者たちは元からおとりとかのつもりで連れていったのかなぁ」

ハルカたちは焚火の後始末をしながら話を続ける。

今日は街へ入って昨日の話の後始末をする予定だ。

「……さすがに胡散臭すぎて騙されねぇと思うけど」

「どうやって若手たちを説得したんでしょう。鍛冶師が街の外へ出て山に登ろうって思うなんて、よっぽど言葉巧みに誘わないと難しいでしょう?」

街に住む人の中には、生涯街からほとんど出ない者もいる。

職人なんかはその典型だ。よほど腕が良ければ他所の街に呼ばれることもあるのだが、基本的には物資の調達を人に任せて、自分は街の中で腕を振るい続けるものだ。

ところがハルカたちが昨日連れ帰った若者の中には、鍛冶師が五人も混じっていた。それがどうも解せない。

「考えるより聞いたほうが早いです」

「そだよねー。どうせ今日は街にいるわけだし、見かけたら問い詰めてみようか」

「さすがに疲れて休んでるんじゃないかと思いますけどね……」

誰もがハルカたちのように毎日元気に全力で活動できるわけではない。

若者たちと言っても下が二十前後で、上は三十を超しているようなものもいた。きっと今日はベッドでぐっすり休んでいることだろう。

「いやー、昨日は早く帰ったし、今日は冒険者ギルドに行くよう言ってるから起きてるでしょ。起きてないのがいたら家まで行ってたたき起こすし」

体の疲れが取れない毎日を知っているハルカの反論は、元気な若者であるコリンに一蹴されてしまった。

普段のコリンならここまで厳しいことは、おそらく言わないけれど、彼らに関しては態度が悪かったので結構厳しく接することにしているようだ。

門番に挨拶をしながら街の中へ入り、まだ人通りの少ないメインストリートをプラプラと歩く。

とりあえずモンタナはマルトー工房に報告し、親方衆へ連絡してもらう。

ハルカたちは冒険者ギルドへ行って、今日工面できるだけのお金を受け取るつもりでいる。

まだ状況をしっかり呑み込めていないパッソアへ、これからのことを詳しく説明する必要もある。ついでにオルメカ伯爵にも声をかけてもらっているから、面倒な用事は今日一日で全て片付く予定だ。

工房の近くでモンタナと別れギルドにたどり着いた一行は、入るや否や入り口付近で待機していた受付嬢に支部長室まで案内をされた。

いつ来るかわからないのに、一人は必ず入り口に待機させていたとするならば超VIP待遇である。

支部長室へ入ると、中には昨日ハルカが最初に治療を施した男たちが立ったまま待機していた。

今まで何かを話していたのだろうけれど、パッソアは男たちを無視して立ち上がり挨拶をする。

「思っていたより早くいらっしゃいましたね。うちの冒険者たちと、この街の鍛冶師の一部があなた方に迷惑をかけたとか? 本来個々人のもめ事にギルドは介入しないのですが、特級や一級の冒険者の方々が相手となると、そういうわけにはいかないでしょうね。事情は軽く聞いてますので、まずはそちらにおかけください」

あくまでギルドは話をよく知りませんよというスタンスだ。

最初からの予定通りではあるが、ハルカからみるとずいぶんと白々しく見える。

「何者かにそそのかされてギルドを通さない依頼を受け、身の程もわきまえずに巨釜山に登り、魔物に襲われていたところを皆さんに助けられた。一部の怪我をしていたものは治癒魔法を施され、帰りは完全に護衛されて帰ってきた。これで間違いありませんか?」

「間違いないでーす。適切な額を請求したつもりですけど、そちらから見てどうですか?」

「事が事実ならば問題がないでしょうね。書面によれば支払いは長期にわたって行われるようですが……」

と、昨日示し合わせた通りに滞りなく話は進んでいく。

支払額の了承。〈グリヴォイ〉の冒険者が迷惑をかけたので、その監視をギルドで行うという約束やらなんやら。

アルベルトとハルカは置物のまま話が進んでいく。

いかにもいま決まりましたみたいなやり取りに混ざれるほど二人は器用ではない。

話がまとまった風な演技が終わると、コリンはパッソアに尋ねる。

「それにしても胡散臭い商人が持ってきた美味しい話なんて、疑ってかかりそうなもんだけどなー。ここの街の冒険者さんって騙されやすいんですか?」

ちょっと機嫌が悪いですよー、みたいなコリンの演技にのったパッソアは、申し訳なさげな表情を浮かべて答える。

「いやぁ、それが変な話でしてね。割と堅実にやってきた冒険者も混ざってるんですよ。私も変だとは思っていたんですけどね」

パッソアは肩をすくめて、部屋の隅に立っている冒険者たちの方を見る。

アドリブでこれだけ演技ができるのは、流石支部長といったところだろうか。

おそらくオランズの街の支部長も、北方大陸のギルド長もこんな演技はできないだろうけれども。