軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

小鬼の習性

「さてミアーだったか? 今回なんでうちに攻めてきやがった」

「食べるものなかッタから」

「冬は越せたのにか?」

「食糧庫の中身、誰かが全部持ッテッタ。なくなッテ困ッテ、 小鬼(ゴブリン) に貰ッタ。 小鬼(ゴブリン) がお前タチのこトも教えテくれタ。人族に負けテ、弱くなッタッテ言ッテタ。ご飯奪うの簡単なはずダッタ」

「なるほど、そういうことでしたか。さては 小鬼(ゴブリン) 共に騙されましたね」

「騙されテない! ちびデ、意地悪ダけド、今はご飯分けテくれタいい奴ら!」

ミアーは心外だと言わんばかりに、鼻息荒く怒っているが、ドルはやれやれと首を振った。

ハルカはなんとなくこのハーピーと他種族の関係がわかってきたが、確認のためドルに尋ねてみる。

「つまり、全体としてはどんな話ですか?」

「…… 小鬼(ゴブリン) がハーピーたちをそそのかして我々にぶつけてきたんですよ。きっとハーピーたちの食糧庫を空にしたのも奴らでしょうね。ずるがしこい奴らなんですよ」

「 小鬼(ゴブリン) ですか。どんな種族なんですか?」

「そうですね……、ずるがしこくて自分たちで働くことをあまりしません。その割には貪欲で好戦的です。自分たちで作ることよりも奪うことばかり考えるどうしようもない奴らです。最低限狩りをして暮らしているようですが、うまくいかないと他種族を食らったりします。それも無理なら同じ種族の別部族を、さらに進むと同じ部族の者同士でも食らい合います」

「……なかなか、仲良くなりにくそうな情報で」

「味方にしてもいいことはありませんね。まだこのお馬鹿なハーピーたちの方がましです」

「馬鹿ッテ言ッタやツが馬鹿ダ! ミアーは賢いぞ、アタシ達の中で一番賢い!」

「はい、わかりました」

「わかればいい」

ドルに適当に話を流されてもミアーは満足そうだ。まあそれくらいには賢くないということだ。実にわかりやすい実演である。

「それからもう一つ大事な情報として、 小鬼(ゴブリン) は繁殖力が高い。もし奴らがまともに働いたとしても、増えるのが早すぎてきっと農作物は足りなくなるでしょう。他者を食らい仲間を食らうのは、奴らにとって自然なことなんです」

「……ということは、まずいのでは」

「ええ、まずいです」

「何がうまくないんダ?」

なんとなく 小鬼(ゴブリン) という種族への理解が深まったハルカは、嫌な想像をしてしまった。まずいとはすなわち、ハーピーたちの住処が、今まさに 小鬼(ゴブリン) たちに襲われているのではないかということだ。

当事者であるミアーは食べ物の話をしていると思っているらしいが、そんな呑気な質問には誰も答えない。

と思いきや、ニルが唸ってから返事をした。

「お前らのとこのデブ雄共と子供たちが、 小鬼(ゴブリン) 共の飯にされてるかもしれないって話だ」

「なんデダ? あいつら、お前らタおすの手伝ッテくれるッテ言ッテタぞ。皆で助けに来るッテ。今頃ミアー達の家に来テるぞ」

「そりゃあもう間違いないな。つまりお前らは飢えたネズミ共を自分の家に招き入れた」

「…………帰る!」

ニルの言葉をじっくりと考えたのか、しばらくして座っていたミアーは慌てて立ち上がり、じたばたと地面を踏み鳴らした。

「縄! はずせ! 帰る、ミアー達皆帰る!」

「いや、お前ら捕虜だろうに。勝手なこと言うもんだ」

「嫌ダ嫌ダ嫌ダ! ハニート子供が食べられちゃう! 帰る! 帰る!」

「ミアードうしタ?」

「ハニート子供、誰食べる?」

「 小鬼(ゴブリン) ! 今食べてる!」

ミアーの大きな声を聴いた五十人ほどいるハーピーの捕虜たちが、ざわめき、立ち上がり、一斉に声を上げがしゃがしゃと檻を壊そうとし始める。

あまりの騒々しさにその場にいる全員が顔をしかめたが、ハーピー達も必死の様子だ。

「帰しテ! 縄ほドいテ! ミアー帰る! もう来ない、戦わない! 約束しタ!」

一方的に約束したことにしたらしいミアーは、相変わらずその場で飛び跳ねて抗議を続けている。

「こいつら馬鹿だからなぁ。約束を本当に守るかはわからないぞ」

「どうしますか、陛下?」

ニルがぼやき、ドルが決断を迫ってくる。

不安はあったが、ハルカの中での選択肢は一つだけだった。

「犠牲が出ているのは重々承知していますが、彼女たちを解放してあげてください! 私も彼女たちと一緒に現場へ向かい、状況によっては手助けしてきます」

多少の非難を浴びる覚悟はあった。

仲間を一人失ってまで捕まえてきた捕虜たちを、捕虜たちの都合で解放しようというのだから当然だ。

しかし、リザードマンたちはハルカの指示を聞くと、誰一人として文句を言うことなく檻の縄をほどきにかかった。

「陛下が言うならその通り、だ。儂らは誇り高い戦士だからな」

ニルが愛用の槍を軽い仕草で一振りすると、ミアーを捕らえていた縄がはらりと地面に落ちる。ミアーは仲間を待つことなくすぐさま空に飛びあがると、振り返りながら短い言葉をいくつも紡ぐ。

「約束! ヘイカ! ありがト! 友達! 戦わない! 小鬼(ゴブリン) 倒してくる!」

「私も追いかけます、皆さんは?」

「儂は残る。 小鬼(ゴブリン) 共がこっちにも来てることも考えられるからな。今からでも各里へ兵士を戻す。陛下、そっちは任せた」

「わかりました! ……行きますよ」

話している間に背中に引っ付いてきていたレジーナに声をかけて、ハルカはすぐにミアーの後を追いかけて空へ飛び立った。