軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

上下関係の成立

「ああ……、うーん……」

ハルカは話の次第を聞いて曖昧な反応を返した。

ただ、そのあとすぐに顔を上げてレジーナを見た。

「うーん、よく我慢した方だと思います。事情は理解できました」

どよめくリザードマンと、絶望の表情を浮かべるハーピーにハルカは苦笑する。でもそこよりもまず大事にしなければいけないのは、仲間であるレジーナの感情だ。

相対的に見ればそうではないのだけれど、レジーナという人間を見ていれば話は別になる。

「でも私は、言葉の通じる相手を食べたいとは思えませんね。反省しているようですし……許してあげませんか?」

「アタシ達、食べない! 反省しテる!」

「ごめんなさいしタ! ミアーも反省しタ! いタいいタいしテる!」

ハルカの後ろから歩いてきたニルが、騒ぐハーピーたちを白けた目で見ながらレジーナに話しかける。

「こいつらは鳥頭だからまともに取り合うと馬鹿を見るぞ。でもしっかり恐ろしさを叩き込んでおけば、しばらくは言うことを聞く。いい薬になったんじゃないのか?」

「いい薬になッタ! 言うこトきく!」

「ゴブリン嘘つき、オークバカ! お前タちの方が強くテ賢い!」

「アタシ達みかタ! タべないから、タべないデ!」

「……どうしますか、レジーナ」

「……いうこと聞くんだな?」

レジーナが腕を組んで尋ねると、ハーピーたちは激しく首を縦に振る。しかしその後ろの方ではこそこそと内緒話をしている者もいるようだ。

「こいツら、ダませるかも」

「もしかしテ、バカかも」

「ぶっ殺す」

レジーナがずんずんと歩いて内緒話をしているハーピーたちの下へ向かうと、中にいるハーピーたちは慌てて檻の中を逃げ回る。しばらくそれを繰り返したレジーナはやがて我慢できなくなったのか、檻を破壊して中へ乗り込んだ。

そしてよく似ていて区別の難しいハーピーの中から、違うことなく内緒話をしていた二人を捕まえた。

「ハルカ、こいつらは食う」

「いやぁ……」

「噓! 噓! 反省! 食べないデ!」

「言うこトきく! いい子! 悪いこトない!」

そのまま引きずって檻の外へ出てこようとしたレジーナの行く先を、地面を這ってきたミアーがふさいだ。

「言うこトきく。アタシがちゃんと言うこトきかせる、食べないデ」

「ミアー! 食べられちゃう! 助けテ! 助けテ!」

「ごめんなさいしろ!」

「ごめんなさいしタ! ごめんなさい!」

とにかくハーピーは一人が騒ぎ始めると周りも一斉に騒ぎ始める。檻の中で騒音に囲まれたレジーナは不愉快そうに顔をゆがめてしゃがんだ。

「言うこと聞かなかったら、てめぇから食うからな」

「わかッタ、ミアー約束守る。レジーナ強い」

ムスッとした表情のレジーナが檻から出てきて、ハルカの前までくると腕を組んで宣言する。

「今のところ食うのやめた」

「はい、わかりました」

「やるなぁ、レジーナ。ミアーってやつはハーピーたちの頭だぞ。こりゃ話が早くなりそうだ」

「知らねぇよ。でも嘘ついたら食う」

「はいはい、わかりました。彼女のことを治してきますね」

レジーナが止めることなくハルカを見送る。

近づいてくるハルカをミアーは睨んでいたが、レジーナの方をちらりと窺って、そこから動くことをやめた。

「怪我を治すだけです、心配しないでください」

ハルカが手をかざすと、ミアーの怪我が見る間に治っていく。

「治っタ!? すごい!」

恐る恐る足を動かしたミアーは、痛みがないことを確認するとぴょんと飛んで体を起こした。「治っタ治っタ」と連呼すると、周りのハーピーたちもぴゃーぴゃーと声を上げる。

こんな調子のハーピーたちが、リザードマン達と戦い被害を出しているのだというから恐ろしい。

どうやらこの中ではミアーがまだ賢いようだ。

ハーピーたちもミアーの言うことは素直に聞くし、慕われていそうな雰囲気もあった。

「火山は食うもんが少なくてな。それでこっちの食料を奪いにやってくる。手が翼になっているから、奴ら農耕がうまくいかんのだ。これからは森の中に動物も増えるだろうし、ここらでやり込めておけばうまく飼いならせるんでないかという狙いもあってな」

「こんな奴ら仲良くしてどうすんだよ」

「空を飛べるんだぞ、得られる情報が段違いだ。 小鬼(ゴブリン) 共とオーク共は山を越えねばこっちにはこれん。情報によっては侵攻することもできる。強き王を頂いた以上は野心を持つものだろう?」

「知らね」

戦争や政治自体に興味があるわけではないレジーナの反応は芳しくない。

ニルが「わからんかぁ」と言ってがりがりと頭をかいた。

「陛下がそれを喜ぶとは私は思いませんけれどね」

「ドルよ、お前もか。しかし今回の作戦は成功だろうが。今後山からの脅威は格段に減るぞ」

「……それは否めませんが。とりあえず、そこのミアーというのだけ連れて話でもしましょうか。どうやらハーピーたちはレジーナ殿の言うことは聞くそうですし」

「中へ戻るのも面倒だし、もうここで話せばいいだろう。おい、陛下にミアーよう、こっちへ来て座れ!」

どっかりとその場に座り込んだニルに続き、ドルもため息をついて腰を下ろす。

檻から戻ってきたハルカの後には、ちょいちょいレジーナの顔色を窺うミアーがついてきている。

リザードマン・ハーピー・推定ダークエルフとその後ろに仁王立ちのレジーナ。一応四種族合同の話し合いが始まろうとしていた。