軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あの場所

その丘は、ハルカたちが初めて旅に出たとき、コーディたちと立ち止まったのと同じ場所だった。

ちょうど時間も同じくらい。

村があった場所には確かに明かりが灯り、いくつかの白い煙が上がっている。

人がいるのは間違いなさそうだ。

あれから二年と数か月。

新しく村民が入植したのか、あるいは、賊が利用しているのか微妙なところだ。

「私たちは、今あそこに村があるという情報は持っていません。今夜は廃村で野宿のつもりでした」

「……じゃああれは?」

「わかりません。先に行って確認しますので、このまま待っていてください」

「いや、ゆっくり進んでみようぜ、待ってるのもめんどくせぇし」

「まぁ、別にいいですけど……」

ナギの上で待機している分には何かあっても安全だ。

空を飛べるハルカなら、確認して戻ってくることもたやすい。

「ええと……、コリン、一緒に来てもらえますか?」

「いいよー、はい」

口のまわる交渉役としてハルカがお願いすると、コリンは近づいてきてハルカに両手を伸ばす。

「……それは?」

「お姫様抱っこがいいかなって」

「普通に足場を出しますよ……?」

ロマンチストなのか、ハルカが困惑するのを楽しんでいるのか、コリンはたまに変な要求をしてくることがある。

「いいからはい、出発」

首に抱き着かれたハルカは、どうしたものかと少し迷ってから、膝裏に腕を入れてコリンを抱き上げた。

「はい、じゃあ、いってきますね」

「いってらっしゃいです」

「よーし、ナギも歩いてくぞ。ゆっくりでいいからな」

仲間たちは気楽なもので、危険があるとは露ほども思っていないようだった。

返事をしたナギが立ち上がるのに合わせて、ハルカも空へ飛び立つ。

賊がいるかもしれないという懸念は確かにあるのだが、ハルカが行って大ピンチになるような気もしないというのが仲間たちの考えだ。

油断と言えば油断だが、もし相手が手練れだとしても空への攻撃は限られているので、やはりハルカが行くのが正しい。

村の近くまできてから振り返ってみると、後ろにはナギが歩いてきてるのが小さく見える。もし見張りがいるとすれば丘に降りた時点で見られているだろうから、歩こうが何をしようが村人の反応に大差はないだろう。

村の様子自体は、以前とあまり変わらなかった。

補修された柵や家、そこここにある耕された畑から、ここに住んでいる者がいることがわかる。昨日今日来てたまたま立ち寄ったということではなさそうだ。

「あのー、すみませーん」

村の入り口付近へ来ると、一応開閉できるようになっている柵があり、その近くに人が歩いているのが見えた。

ぷらぷらと退屈そうに歩いているが、武器を携えているところを見ると、きっと歩哨なのだろう。

「ん、お、なんだ、旅人か! どっから来たんだ?」

「東の方から来ました」

正しくは南からだけれど、出身がオランズであることを思えば、あながち間違いではない。

話がややこしくなるのを避けるための方便だ。

「ってことは、アシュドゥルで村ができたって噂でも聞いたのか?」

「うーん、ちょっと違うんですけど……、ここって前廃村になってましたよね? いつからできたんですか?」

「あー……、当時のことを知ってるのか。いやな、俺たちは半年くらい前から移り住んできたんだよ。んなことより、その場所でいいからなんか身分証明とかないのか? 寄ってくんだろ?」

「あ、はーい、これ冒険者のタグ。一級冒険者のコリン=ハンでーす」

「い、一級!? な、なんもねぇ、ですよ? この村?」

「いやー、前の村に縁があったんで、今どうなってるかなーって寄り道しただけなんです。仲間もいるんですけど、村に入ってもいいですか? 別に野宿でいいので」

「あ、ああ、いいけど。何人いるんだ、ですか?」

「ええっと、私たちいれて八人と一匹……トーチも入れたら二匹か。内訳は護衛対象が二人と冒険者が六人ね」

「そりゃあずいぶん厳重な護衛だなぁ……。匹ってのは?」

「ほら、冒険に馬とか竜とか連れてる人いるでしょ」

「ああ、まぁいいか。村の奴らに言ってくるから、あんたらも仲間に伝えに行ってくれ、さい」

絶妙に噓にはならない程度に話をごまかしてる。

ハルカはよくそんなに頭が回るなぁと、コリンの方ばかり見ていた。

身分で一級冒険者と示してみせたが、女性二人に親しみを持ちやすい気安い話し方。やはりコリンは交渉上手だ。

村へ戻っていく男を見送って、振り返ったコリンはいたずらっぽく笑う。

「よーし、これで大丈夫、言質は取った」

「すごいですねぇ、コリンは」

「任せてよ、戦闘じゃ頼りにしてること多いからね。たまには役に立っておかないと」

「たまにって、コリンがいないとお金の管理とかできないですよ?」

「ハルカならできるでしょ」

「管理だけなら、まぁ……。でもコリンみたいに必要なところでちゃんと使うのとかは苦手です。どうしてもため込んでしまって、必要なものにもお金を惜しんでしまう気がします」

「あー、確かにそういうとこあるよねー」

喋りながら途中で仲間たちと合流したハルカたちは、反転しそのまま村へ向かう。

結局村人たちはナギを見て腰を抜かすことになったので、果たして先に話をした意味があったのかどうか、微妙なところである。