軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ナギの別荘

全員で南方大陸の情報をおさらいしたり、たわいもない雑談をしているうちに、〈プレイヌ〉の街へ到着した。

朝の忙しい時間だと、待機列の邪魔になるだろうと、昼過ぎに到着したのだが、わずかに並んでいる人たちが慌てて列から離れていくのが見えた。

門から一人の門番、おそらく冒険者が走ってくるのが見えて、ハルカたちは歩みを止める。向かってくるということは、おそらくハルカたちが何者であるか知っているということだ。

男は少し手前で一度足を止めてナギを見上げる。わかっていても怖いのだろう。そちらから目を離さずにそろりそろりと近づいてきて、声が届くところまでくると手に持った紙を確認しながら口を開く。

「そちらのダークエルフの方は特級冒険者のハルカ殿、この大型飛竜はナギ……ちゃん? で間違いありませんか!?」

「はーい、そうですよー」

コリンが手を振りながら愛想よく答えると、男はほっとした顔をした。

「では、ドラグナム商会へ連絡いたしますので、そのまま道を空けてお待ちください。連絡がつきましたらお知らせしますので、そのまま空からドラグナム商会の牧場へ向かうようお願いします」

「えーっと、確認とか、いいんですか?」

「はい! 大型飛竜を連れて歩く冒険者は、あなた以外におりませんので! では、よろしくお願いします!」

受け取り方によっては失礼な物言いではあったが、ハルカはそういうものかと納得してしまっていた。実際街に入る人々に迷惑をかけているので、嫌味の一つくらい言われてもいいのだが、言った方も、言われた方もそんな意識はなさそうだ。

道から避けて時間を潰していると、やがて同じ男性が頑なに距離を縮めずに、少し離れた場所から声をかけてきて、ハルカたちは上空から〈プレイヌ〉の街へ入ることになった。

以前ナギが降りたエリアに中型飛竜の姿はなく、代わりに小太りの男性、ドラグナム商会の商会長であるスコット=ドラグナムが、帽子を振って待っていた。

冬の澄んだ空気を通ってきた日の光を頭部が反射していて、灯台のようによく目立っている。

ナギが着地点を荒らさないようにふわりと地面に降りると、ハルカたちが降りる前にスコットが駆け寄ってくる。

歓迎は嬉しいが、待たせるのは悪いと、ハルカは慌ててナギの背から駆け降りた。

「お久しぶりです! いらした時はこちらを使っていただこうと、勝手に街のものに話を通しておいたのですが、ご迷惑ではなかったでしょうか?」

「いえ、助かりました。そうですか、スコットさんからお話しいただいていたんですね」

「えぇえぇ。今回は用事があってこちらに滞在していたおかげでお会いすることができました。これも何かの巡り合わせかもしれません。そちらはどんなご用事で?」

「はい、ちょっと……知人がこの街に来ると聞いたので」

エリザヴェータのことをなんと表現するかで一瞬迷ったハルカである。姉弟子と言っても分かりにくいし、友人というには公に問題がありそうだ。今は依頼人ではないので、ひとまず知人と言っておく。

「おや、その方はもしや王国の関係者では? あ、いや、探るわけではないのです。実は近い会談で、私が評議会の代表を務めることになりまして。ここだけの話、その会談は【ディセント王国】のエリザヴェータ陛下がいらっしゃるのですよ。ですから、その関係ではと推測したところなのですが」

なんと答えようか迷っているうちに、スコットは次々と情報を吐き出していく。果たしてそんなこと言っていいのだろうかというような内容だ。しかし、部外者であるはずのハルカに話す以上、ここだけの話と言いつつも公然の事実ではあるのだろう。

商人とは些細な情報を漏らすときも勿体ぶるものである。

「おやぁ、そちらが現ドラグナム商会長ですかぁ?」

のんびりと降りてきたノクトが、横から顔を出すと、スコットは目を見開いて視線をその尻尾の辺りに彷徨わせる。

「……立派な竜の尻尾、もしやあなたはノクト=メイトランド様では?」

「あ、立派ですか? はい、ありがとうございます、確かに僕がそのノクトです」

幾分か嬉しそうにノクトはそう答える。尻尾を褒められたのが嬉しかったらしい。

「曽祖父から聞いております。竜の獣人のノクト様には世話になったと。ハルカ様とはどのようなご関係で?」

「あ、私の師匠です」

「ほぉ! いやぁ、お会いできて光栄です」

差し出された手をノクトがとると、スコットは空いた手でその手を包み込んで振る。随分な大歓迎だ。

ハルカを迎えた時よりも熱が入っているように見える。

降りてきた仲間たちやハルカが見ているのに気がついたスコットは、はっと手を離し照れ笑いする。

「いやぁ、小さな頃に聞いていた人物に会えたと思ったら、年甲斐もなく興奮してしまいました。お見苦しいところを……」

「や、ま、わかるぜ。相手がこの爺さんなのはともかくとして」

「アル君は僕に辛辣すぎますねぇ、クダンさんには借りてきた猫のような態度だったと聞きますのにぃ」

「うっせ」

「いやいや、なんとも仲のよろしいことで。せっかくお会いできましたので、前回のお話の続きなどさせていただけましたらと思うのですが、いかがでしょう?」

スコットがうまいこと話をまとめて、話題を次に繋げる。

続きというと、ハルカたちの拠点に商会を置きたいという話だろう。現状だと知られたくない話がいくつかあるので、ハルカは少し悩んでしまう。

とはいえ、一度引き受けた話だ。どうしたものかなとコリンを見ると、パチっとウィンクを返された。

「はーい、じゃあちょっと落ち着いたらその話しましょ」

何やら考えがあるらしい。

ハルカはコリンを信じて、「そうですね」と同意の言葉を投げた。