軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

肩入れするときは気をつけようね

サラの両親は、想定していたよりも早く帰ってきた。

食卓に座るのは四人。

父親、母親、サラ、そしてハルカだった。ハルカは緊張して完全に表情筋を硬直させていた。

大勢で居座っても脅迫をするようでよくないという話までは賛成したのだが、ハルカ一人だけを残して行くことがあれよあれよと決まり、反対意見を出せぬまま、家の中にサラと二人残ることになった。

近所で待機しているとは言っているが、話し合いの場にいない限り頼りになどならない。

大人っぽい見た目のイーストンは性別が違うので印象が良くない。それでいくとアルベルトもアウト。そもそも喧嘩をするので任せられないけれど。モンタナは見た目はあまり気にならないが、子供にしか見えない。コリンがやると言いくるめて連れてきてしまいそうなのでダメ。

言い分はわかるけれど、ハルカは心細かった。しかも覚悟が完全に決まる前にまず父親が帰ってきてしまい、三人で無言。食べ物を温め直している間に母親も帰ってきて、今の状態だ。

三人が食事の前に祈りのようなものを捧げる中、ハルカだけ両手を合わせて、目を泳がせながらいただきます待ちだった。

「……おいしいわね。手伝ってもらったの?」

「コリンさんに。もう一人いた、女の人」

「そう、お料理が上手なのね。私も教えてあげないといけなかったわ。背も伸びて、台所に立ってもおかしくない歳だものね」

「……うん」

ハルカにはこの緊張の中で料理の味なんかわからない。せっかくコリンが作ってくれたのに申し訳ないと思いつつも、ゆっくりと機械的に食事を口に運ぶ。

悪くない雰囲気なのだ。

てっきり二人とも深夜になるまで帰ってこないと思っていたのに、日が落ちる前に帰ってきたし、なんならどちらも女の子の好きそうな甘い土産まで買って帰ってきている。

「……学園はどうなんだ」

「知らないことがたくさんあって、本もいっぱいで楽しいです」

「友達はできたか?」

「あんまり。みんな年上だから少し難しくて」

「そうか。……少し痩せたな。ちゃんと食事をしなさい。私もできるだけ早く帰ってきて一緒に食べるようにする」

ハルカは早くこの場から立ち去りたかった。あまりにも肩身が狭い。勝手に自分と重ねてことを深刻に見て、家に迷惑をかけたのではないのか。罪悪感たっぷりで目を伏せた。

「……そちらの冒険者さんも、娘が迷惑をかけたようですまなかった。朝は突然だったから、娘が悪い遊びでも覚えたのかと思ったんだ。……あなた達の見目が良かったからな」

「そうね。特にあの線の細い男性なんて、どこに行っても女性が寄ってきそうだったもの」

サラの父は妻の言葉に眉を顰めて咳払いをする。

「……しかし、もしそうだったら、あの態度は逆に良くなかったのではないかと、慌てて仕事を切り上げて帰ってきた。……余計な心配だったようだが」

「そうね、私も同じよ。たまには食事をちゃんと用意して、三人で話そうと思っていたの。あなたが先に帰ってきていたのが一番驚きだったけれど。忙しかったんじゃなかったの?」

「約束を破るわけにはいかないが、断りさえ入れればどうにでもなる」

「ほんと、あなたは昔から生真面目よね」

「うるさい。どうせ私は面白味のない男だ」

「そこが良いところだと思うわ。この子もあなたに似て、妙に頑固で真面目なところが困り物ね。一度決めたことを曲げようとしないんだから」

サラは両親の顔を交互に見て、そっと尋ねる。

「お父さんとお母さんって、喧嘩してたんじゃないの……?」

「……喧嘩? なぜだ?」

「最近家で一緒にいても、あまり話してないから……」

「サラが毎日頑張って勉強してるから、静かにしていただけよ。お父さんとはいつもお昼を一緒に食べて話をしているわ」

「そっか……、そうだったんだ」

「この人、年頃の娘に構いすぎると嫌われるらしいって言われて、それを信じきってたのよ。何度も構ってやるように言ったのに」

ムスッとした父の表情を見ながら母が笑う。なんてことない家庭の一シーンだった。

「じゃあ……、私が冒険者になるのも認めてくれる?」

爆弾を投下したのはサラだった。暖まったはずの空気が急速に冷えつつあるのをハルカは感じていた。

「……それとこれとは話が別だと、何度も言っているはずだが?」

何度もと聞いてハルカは首を傾げる。サラから聞いた話では、一度相談した時に頬を張られたということだったはずだ。

「あのね、私もそれには反対だわ。冒険者っていうのはあなたが思うような簡単な仕事じゃないの。それに街の乱暴者だって冒険者だったりするのよ? 憧れだけじゃ生きていけない世界なの」

「でもハルカさん達は違うもの……」

「確かに粗暴なだけの人達ではない事はわかったが、それだけだ。安定した仕事ではないし、お前の力を活かせば、より多くの人を幸せにすることができるかもしれない。なにより私は、お前に危険な場所へ行ってほしくないんだ。竜と対峙する? 馬鹿を言うな。森の中で出会うのならば、森へいかなければそんな危険な目に遭わなくて済むんだろう? だったらダメだ。絶対に認めん」

「でも! 予知夢では私はそこにいて!」

「それが予知夢だと言うのなら、余計に行かせんと言っているのがなぜわからない!」

「お父さんのわからずや! 飛び級して学園に入ったら考えるって言ってくれたじゃない!」

「なんだと!? 考えるとは言ったが許可するとは言っていない!」

「……あなた、それじゃあ前と一緒よ。もう何十回もその話はしてるでしょう。いちいち興奮しないで」

「しかしなぁ……!」

テーブルを叩いて立ち上がる父親を、母が宥める。

雲行きが怪しい。もしかしてこれは何か大きな勘違いをしているのではないかと、ハルカは顔を伏せたまま、上目遣いで三人の様子を観察し始めた。