軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

友達の友達の

ギルドの外に出ると、全員が並んでぼーっと街の大通りを眺めていた。誰一人として喋り出すわけでもなく、かといって気まずい雰囲気というわけでもない。

アルベルトなんかは割と勝手に話しかけるタイプだが、どちらかと言うとそれは同性に対してだけだ。レジーナは腕を組んでいて、会話拒否モードだし、ユーリはナギに寄りかかってうとうとしだしていた。体は少し大きくなったが、少し動くと眠くなってしまうのは、まだまだ小さな子供だ。

抱き上げてベッドに寝かしてやりながら、ハルカはふと思い出す。

「コリン、アル、せっかく街に戻ったのですから、親に顔を見せたほうが良いのでは?」

「あー、でも依頼とか控えてるし、その後でもいいかなーって」

ユーリやレジーナ、それにハルカはもう自分の親に会うことはできない。それを考えると、自分達だけ気軽に会いに行くのは気が引けるのだ。

しかし、当の本人であるハルカは、もう両親と死に別れているから、何を遠慮しているのかが分からない。首を傾げたまま、もう一度勧める。

「そうは言っても、今日明日はやることありませんよ? 旅に出ることも多いですから、こういう機会には会ってきたほうがいいと思います」

「んー……、じゃ、行っとこうかな。パパも街にいるみたいだし。アルー、いったん家に帰るわよー」

「よし、久々に親父と訓練するか。あと二級になったの報告しねぇとな」

「今日中には森まで戻るつもりだけど、しつこく引き留められたら泊まってくかも! 今晩戻らなくても心配しないでね」

「わかりました。……コリンがいないのなら、ご飯、買っていきましょうかね」

一度決めてしまえば行動の早い二人を見送って、ハルカは小さな声で呟いた。料理ができないわけではないが、コリンのように、あるものを使って美味しいものを作れるかというと、自信はない。

せっかく街に来ているのだから、冷めても美味しいものを買って食べるのが正しいだろう。

街中をぶらりと歩きながら、必要な物を買っていく。このメンバーだと、やっぱり積極的に会話するものは少ない。

「あ、ハルカ! 久しぶり、いつ帰ったの?」

離れた所からエリが手を振って駆け寄ってきて、途中で足を止めた。後ろからはアルビナがガンをつけるようにガラ悪くついてきている。ハルカに出会うといつもこんな感じなので、敵意を向けられるのに慣れてきていた。妙なことをするとヴィーチェに怒られるので、基本的に害はない。

そのはずなのだけれど、何故か途中から慌てて走ってきてエリの隣に並んで、拳を構えた。エリもギュっと杖を握って難しい顔をしている。

その視線はハルカを越えて、その後ろを見ていた。

「……レジーナさん、怖い顔するのやめましょうか」

「あ? 冒険者は舐められたら終わりだぜ? それにそいつ、ハルカに喧嘩売ってんだろ」

ハルカが後ろを向くと、片手に金棒をもって手首だけでぐるぐると回しているレジーナがいた。顎を上げて、目つき悪く相手を見下している。

「いえ、あれ、いつものことなので。それにエリは友達です。やめましょう」

「……エリってのは、その魔法使いだろ。じゃあ、あっちのチビは一発ぶん殴ってからでもいいんじゃねぇのか?」

「アルビナさんです。チビとか言うのはやめましょう」

「お前もチビだろ! やんのかよ」

「アルビナお願いやめて」

アルビナが悪口に反応して言い返すと、エリが即座に反応して杖でアルビナの頭を小突いた。

「何すんだよ、あいつから喧嘩売ってきたんだぞ!」

「ハルカにいつも喧嘩売ってるのはあんたでしょ! いい加減にして。マスターに言いつけるわよ」

「やだやだやだ、それはやめろ、先輩には言わないでごめんなさい」

途端に弱気になったアルビナは、エリの腰に縋り付いて足を震わせた。よっぽど酷い目にあっているのだろう。いくら悪態をついてくる相手と言えども、そんな姿を見てしまうと同情する気持ちがわいてくる。

「えーっと、私はエリよ。エリ=ヒットスタン。あなたがハルカの友達だっていうのなら、喧嘩する気はないわ。仲良くしましょう?」

どうみても今にも噛みつきそうな猛獣に見えるレジーナに対して、エリは勇敢にも手を差し出して挨拶をした。ハルカのことを信用してくれているからこその行動なのだろうけど、ハルカ自身は不安でいっぱいだ。

レジーナは金棒を地面に突き立てて、腕を組んで鼻を鳴らす。そのまま無視するのかと思ってみていたら、ぐるっと首を動かしてハルカの方を見た。

「……できれば、挨拶を。来る時にお話しした通りです。こうして、いきなり殴りかかったりしなければ、仲良くしてくれる相手もいます」

「待って待ってハルカ、いきなり殴りかかるって何?」

「エリ、大丈夫です。多分もう大丈夫ですから」

手を引っ込めて体を引いたエリに対して、ハルカは曖昧な保証を繰り返す。多分とか言われると余計に不安になるのだけれど、ハルカにも自信がないので仕方がない。

レジーナはしばらく考えたあと、腕組みを解いて、アルビナを指さした。

「レジーナだ。そいつが近づいてきたらぶん殴る。お前は殴らないでやる」

「あ、ありがとう……? レジーナに修道服と金棒って、もしかして【鉄砕聖女】さんかしら?」

「有名なんですか?」

「耳にしたことがある、くらいだけど。でも、ハルカの友達なんでしょ?」

友達なんだろうかと思いつつ、レジーナの方を見ると、フンと顔をそらされた。まぁ、昨日今日だけで、彼女に対する印象はだいぶ変わっているし、今は可愛らしいという気持ちも湧いてきている。

「そうですね、まぁ、友達です」

「じゃ、別にいいわ。アルビナには近づかないようによく言い聞かせておくし」

「おい、なんでだよ! あたしなんも悪いことしてないだろ!」

「悪いことしてないって思うなら、近づけばいいじゃない。殴られても私はあなたのこと庇わないからね。じゃ、私たち急ぎでギルドに呼ばれてるらしいから、もう行くわね。そこで寝てる子のこととか、そっちの竜のこととか、あとで聞かせてちょうだい!」

「はい、私は〈斜陽の森〉の外に寝泊まりしてるので、なにかあればそちらに」

「なんで街にいないのよ……。ま、いいわ。レジーナさんもこの街で何か困ったことがあったら、 冒険者宿(クラン) 【金色の翼】まで来てくれたら相談に乗るわ。私に直接でも良いから、それじゃあね」

言うだけ言って、エリは駆け足でギルドへ向かっていく。本当に急いでいたのに、ハルカのことを見つけたからわざわざ声をかけに来たのだろう。友達だと思って気にしてくれていることに、ハルカは内心嬉しく思っていた。

一方レジーナは、挨拶をして殴らなかっただけで、いつもと違う反応が返ってきたことに、目を白黒させていた。一人は間違いなく敵だったが、もう一人の扱いを決めかねて、珍しくすっかり考え込んでしまっていた。