軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

作戦開始(下部に地図あり)

コリンとアルベルトは、その日の夜には帰ってこなかった。

アルベルトは父と訓練をしたそうだが「もうお前とは訓練しない」と言われたそうだ。どういうことなのか詳しく聞いてみれば、全力でやったら訓練で勝ってしまったから「負けるのが嫌だからもうやらない」という話だったらしい。アルベルトの父親らしいと言えばらしいような気がする。

ただ、ずっと目標にしていた父に勝ってしまったアルベルトは、複雑な表情をしていた。

レジーナはあの後、仲間全員に挨拶をした。

挨拶をした順番は、モンタナ、コリン、アルベルトだ。挨拶をしたからと言って、そのあと積極的に話すわけではなかったが、ユーリが動くのを目で追うことは増えた。

また、毎日夜になると、訓練に付き合うようになる。

アルベルトだけでなく、モンタナやコリンとも対峙するのだが、怪我をした後も変わらない態度で接してくるのに驚いている節があった。今更骨の数本折れたところで、いつもの訓練と変わらない。ハルカに治してもらえばそれで済む話なのだ。

加減が下手なハルカとの訓練が、変なところで功を奏した形になる。今のところハルカと訓練することはないのだが、ハルカと仲間たちの訓練を見て目を丸くしていたのは見ものだった。

攻撃をいくら受けてもダメージを受けた様子もなくやり返すハルカの姿は、レジーナをしても不気味だったらしい。訓練を見た後しばらくの間は、ハルカを少し遠巻きに見ていた。

それに気づいたハルカは、少し落ち込んでいたのだが、次の日の朝にはいつもの通りになっていたのでほっとしたものである。実は夜の間にユーリとレジーナがこっそり二人だけで話をしたことを、ハルカは知らない。

そうして期日通り、アンデッド討伐の当日が訪れる。

なぜか集合場所にされていたハルカ達のキャンプ地に、続々と人が集まってくる中、ハルカは天を仰いで何をどうしたものか考えていた。

後ろにレジーナ、正面にヴィーチェがいる。

「その方が以前ハルカさんがおっしゃっていた、レジーナさんですわね」

からスタートした会話は、決して良好なものではなかった。レジーナからは妙な奴に情報を売ったと勘繰られ、ヴィーチェは隙あらばレジーナと一対一で会話をしたがる。誤解を解くためにそれを阻止していたら、結局腰の所にヴィーチェを張り付かせたまま会話をすることになった。

「―――ですから、強い女性と聞かれてあなたのお名前を伝えただけで、それ以上のことは本当に何も話してません。ヴィーチェさんも、レジーナさんに変な風に話しかけるのやめてください。難しいお年頃なんですから」

「お願いなら仕方ないですわね。せっかくクランにお誘いしようと思いましたのに」

「ハルカ、そいつ、アタシに近づけるな。なんかきめぇ」

「あら失礼しちゃいますわ」

一先ずレジーナのことを売っていないと理解してもらえたようで、ハルカはホッと胸をなでおろした。いつまでもしがみついているヴィーチェを腰から引きはがす。

「エリ、ヴィーチェさんを回収してください。今日は仕事ですから、おふざけはここまでにしましょう」

「ごめんね、ハルカ。うちのマスターがべたべた触って」

「エリさん? 合意の上ですわよ?」

「どうみたって嫌がってるじゃないですか。私に同じことしてきたら、クランやめますからね」

「エリさんは厳しいですわね」

回収されるヴィーチェを見ながら、ハルカは上手い扱いをしているなと感心する。ああやって対応すればいいのだとわかっても、相手に悲しそうな顔一つでもされたら甘くなってしまうだろうことは、自分のことなので容易に想像がついた。

その場にパンと手を叩く音が響いて、注目が集められる。

「一応それぞれに説明をしていますが、今日のおさらいをします。目的はアンデッドの進行状態の調査、場合によっては排除。範囲は〈斜陽の森〉内。六体以上のアンデッド集団を発見した場合はすぐに撤退してください。それより大きな集団が形成されている可能性もありますので、集まってから討伐に向かいます。俺の予想だと、かなりの高確率でアンデッドが大量に発生しています。下手に刺激して街まで来てしまうと困ります。倒す自信があっても、ルールは絶対に守ってください。では、割り振りはそれぞれに話した通り。ルートを書いた地図を渡すので、それに沿って進んでください。アンデッドに遭遇したら、その地図に書き込みを。何往復かする形になるので、何か変わったことがあれば一度ここで報告してください。以上です、質問はありますか?」

事前に説明をして回っていたためか、質問は誰もしなかった。早く出発したくてうずうずしている者たちばかりにみえる。ラルフはこういったまとめ役をするのに向いているのだろう。その能力は冒険者の界隈では貴重なもので、評価するべきものだった。

それぞれ個別に地図を配って回り、最後にハルカ達の方へやってきて、ラルフは尋ねる。

「一つ確認しておきたいことがあるんですが、レジーナさんは、俺と一緒よりソロの方がよかったりしますか?」

「おう」

「……あれから少し悩んだんですが、やっぱり俺はここに残ろうかと思うんですよ。一緒に行っても足を引っ張りそうですし、戻ってきた冒険者に臨機応変に指示を出したいので。ハルカさんはどう思います?」

「そうですね……、レジーナさん、地図は読めますか?」

「馬鹿にしてんのかてめぇ。地図よめねぇ冒険者なんているわけねぇだろ」

いるから聞いたのだ、とは言えない。どうやらレジーナは、前の夜にハルカ達が話していたことは聞いていなかったようだ。アルベルトとコリンがすっと目をそらした。

「……一人でもだいじょうぶだと思います」

「ではそうしましょう。ところで……、ハルカさんはその……、ナギとユーリ君を連れていくんですか?」

「……? 連れていきますけど……?」

「あ、そうですか。では三枚地図をお渡しします。どのルートを行くかは、チームの中で選んで結構ですから」

話を終えると、ラルフは元の位置に戻って大きな地図を広げ、冒険者ギルドから派遣されてきた職員と相談を始めた。

「えーっと、メインの道と、その左右を探索する形ですね」

「あたしはここだ」

さっと一枚の地図を取って、レジーナが歩きだす。彼女の実力なら特に心配することもないはずだ。

「じゃあ、私とアルがこっち、コリンとモンタナはそっちで」

レジーナを真ん中にはさんで、ハルカが南、コリンたちが北側のルートと定めて、それぞれが地図をもって出発する。当然持っているのはハルカとモンタナだ。

「では、お互い気を付けて行きましょう」

「うん、アンデッドは苦手だけど頑張る!」

久しぶりにしっかり手甲をはめたコリンが気合を入れて歩き出すと、モンタナが別の方を向いて歩き出して、声をかける。

「コリン、行くですよ」

「……行ってきます!」

「……くれぐれもはぐれないでくださいね。モンタナ、よろしくお願いします」

「はぁい……」

「わかってるです」