軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

報告と正体

しばらく時間が経って、三人が奥の部屋から出てきた。

エリザヴェータもノクトも変わった様子はない。リルとエリザヴェータが同じ服を着ているのが気になったが、恐らくいつでも入れ替われるように、エリザヴェータが同じ服を着て仕事をしていたのだろうと思う。

「トラブルはあったが作戦はうまくいったのだな。思った以上の活躍だったと聞いたぞ」

真ん中に立ったリルからそう言われて、ハルカは首を傾げた。何の悪ふざけだろうと思いエリザヴェータの方を見ると、目が合って笑われる。

「まさか本当に魔法が効いていないのか。お前の魔法も万能ではないのだな」

「は、申し訳ございません。彼女にはまるで効かないようです」

「今後は魔法が見破られる可能性も考慮して、任務に当たれ。お前を失うのは惜しい」

「ありがたきお言葉。報告はこちらでさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「いや、お前は一度下がって休め。報告はハルカたちから聞くことにする」

「承知いたしました。御前失礼させていただきます」

深く頭を下げたリルは、そのまま部屋の奥へ消えていく。おそらくそちらに外に出るための別の通路があるのだろう。ここからは本物のエリザヴェータが表に出て活動するのに、正面のドアから出ていっては不便があるのかもしれない。

「ハルカさんって、体の仕組みがよくわからないんですよねぇ。僕もリルさんの変装魔法は、普通に見ているだけだと違和感こそあっても見抜くのは難しいんですよ。どんな仕組みで見破ってるのか分かれば、闇魔法に対応しやすくなりそうですけどねぇ」

ノクトが一人ソファに腰を下ろして話す。最初はハルカだけを見ていたが、言葉を一度切ってからは、他の仲間たち全員を順にみて笑う。

「でもやっぱり上手くやりましたね。危なげもなかったと聞きましたよぉ。すっかり立派な冒険者ですねぇ」

優しい顔で目を細めるその姿は、いつもの悪戯っぽい雰囲気が鳴りを潜め若者を見つめる好々爺のようにも見えた。若く見えるノクトだが、実年齢はとっくに老人だ。ハルカたちしかいない時に、判断の難しい依頼を受けて、きちんと結果を残したことが嬉しかったようだ。

エリザヴェータもノクトの横に腰を下ろして、ハルカたちにもソファに座るよう促す。

「さて、一応話を聞かせてもらおう。報酬の話もしたいだろう?」

「はーい、報酬の話したいです! えっと、リルさんが来たところからの報告でいいですか?」

元気に返事をしたコリンが、いじわるそうに微笑んで提案すると、エリザヴェータも楽しそうに返す。

「ああ、もちろん。そこを外してもらっては困る」

コリンは女王と気が合ったようで、楽しくおしゃべりをしながら報告を続けている。その間にノクトはユーリの顔を見にいって、本人と二匹の竜を連れてソファに戻ってきた。

肩にトーチを乗せて、膝の上にユーリが乗り、ユーリがナギを抱っこしている。見ていて和むセットだった。ナギはお腹を撫でられると、小さな声を漏らして身をよじる。

三人がセットになっているのに疎外感を覚えたのか、トーチだけはぴょんと飛び降りて、モンタナのもとへ走り、素早く体をよじ登って袖の中に消えていった。久しぶりのお家に帰還である。

報酬の話までがほぼついたあたりで会話が一度途切れ、それを見計らったかのようにアルベルトがノクトに問いかけた。

「なぁ、最後に会ったユエルってやつ、知ってるだろ? どんなやつか教えてくれよ」

ほぼ確信を持った問いかけは、ノクトへの信頼の証か。身を乗り出している姿は、体が大きくなっても少年のようだった。

「あの人はねぇ、昔のクダンさんの仲間ですよ。最近は当時の仲間は皆ばらばらで活動しているみたいですけど」

「え、いたのか、仲間」

「そりゃあ、冒険者ですからねぇ。当時から一番考えが読めなくて危ない人でしたよ。危なすぎて人の口の戸にすら上がらないタイプです。リーサ、知ってるでしょう?」

「ん? いや……、特級冒険者のユエル? 聞いたことないが」

「ああ、えーっと【 致命的自己(フェイタルアクシデント) 】さんのことですよ」

「……あぁ、良く生きてたな。一応国際指名手配犯だ。危なすぎて触れようとする者なんかいないがな。本当に王族を全員殺して、小さな国を一つ滅ぼすような奴だ。しかもその理由は性格が気に喰わなかったから。圧政を敷かれていた国民は喜んだらしいがな」

「悪い人じゃないんですけどねぇ」

「良いとか悪いとかの次元の話かよ、それ」

まともな突っ込みを入れたのはアルベルトだった。

悪い人には確かに見えなかったけど、実績がとんでもない。ハルカは、彼女に投げかけられた言葉を思い出して眉を顰めた。あの時、ハルカたちが悪いと感じたら、彼女は襲ってきたのだろうか。瞬間移動のようなことをしていたから、全ての攻撃を防ぐことはかなり難しいだろう。

もしもう一度出会うようなことがあっても、絶対に敵に回すべきではない。全員が一対一でやり合えるようにならない限り、必ず被害が出る相手だ。

「師匠、あの一瞬で距離を詰める魔法は、一般的なんですか?」

「いいえ、彼女以外に使っている人は見たことありませんよ」

ハルカはほっと胸をなでおろした。あんな魔法ポンポン使われてはたまったものではない。そういう手段があるというのは頭に入れておくとしても、警戒しすぎる必要はないだろう。

と、そこまで考えて、ハルカは首を大きく傾ける。魔法で瞬間移動ができるということは、自分にもできるのではないだろうかと、疑問に思ったのだ。そのうち試してみるべきだろうか。

いやしかし、昔読んだ本によると、瞬間移動というのは一度身体を分解して、任意の地点に構成しなおす方法をとるとも聞いたことがある。つまり、新たな地点に構成されたその姿が自分であるという保証はなくて、という付け焼刃のような知識を思い出して怖くなってしまった。

移動した先で岩と一体化してしまった自分の姿を想像して、ハルカはぶるっと身体を震わせた。